ヤフーが目指す、これからの プラットフォーマー とは:ユーザー、クライアントと作り上げるマーケティングソリューションの全貌

DIGIDAY

膨大なデータを保有するプラットフォーマーの「振る舞い」は、国内外でクライアントやユーザーに注目されている。

年間約8000万人がログインするというYahoo! JAPAN(ヤフー)は、日本を代表するプラットフォーマーだろう。LINEやPayPayなどZホールディングスグループの他サービスも加えたユーザー数とそのデータ量は、国内最大規模と言える。そんなヤフーがこれから保有するデータをどのように活用し、ユーザーへの価値提供やマーケティング・広告領域でのソリューションを生み出していくのか。そのエコシステムの広さを考えれば、誰もが「当事者」として関わることになる。

2021年10月8日に開催されたヤフーのデジタルマーケター向けオンラインイベント、「Yahoo! JAPAN MARKETING CONFERENCE 2021」では、取締役専務執行役員CSOでMS統括本部長を務める久木田修一氏、執行役員でメディア統括本部長の片岡裕氏、MS統括本部テクノロジーサービス本部長の鍵山仁氏らが登壇。前述の疑問に対し、「マーケティングソリューション戦略」「メディアサービスの方針と取り組み」「-No Data, No Future.- ヤフーにしかできないデータマーケティング」という3セッションを通して、ヤフーが見据えるデータマーケティングエコシステムのあり方について語っている。

「顧客理解を深め、未来を可視化」

新型コロナウイルスの感染拡大は社会や生活環境に大きな影響を与え、消費行動の観点からすれば、もはや一変したと言っても過言ではない。こうしたなか、ヤフーはデータマーケティングにおいてどのようにプレゼンスを発揮していくのか。「マーケティングソリューション戦略」に登壇した久木田修一氏が挙げたのが、「デジタルシフトの高速化・DX化」「パーソナライズ」「プライバシー」という3つのポイントだ。「これら3点を踏まえ、ヤフーはユーザーをもっとも理解する国産プラットフォーマーを目指す」とし、Zホールディングスという国内屈指の規模を誇るデータホルダーの一員として、安心安全に注力し、ブランドを確立していくという。

実際、ヤフーを含めたZホールディングスのユーザー基盤は巨大だ。ヤフーは年間約8000万人がログインし、LINEの利用者は月間約8900万人、PayPayの登録ユーザー数は約4200万人に達する(2021年12月時点)。久木田氏は「これだけの規模のデータを持つZホールディングスグループだからこそ、消費者にとって価値ある提案を行えるデータマーケティングに取り組む。ヤフー、LINE、PayPayと異なるタッチポイントで活用できるサービスを駆使することで、オンラインとオフラインを掛け合わせた一気通貫マーケティングを提供していく」と語った。

規模だけでなく、データの多様性もヤフーの強みだと久木田氏は語る。たとえば、ヤフーのニューステーマは23000、ユニーク検索数は年間90億回。EC取扱額は年間3.2兆円、PayPayの加盟店は330万店舗と、さまざまなデータを有している。「豊富なデータを駆使してクライアントの売上・利益に貢献し、事業成長につなげる価値を提供するのはもちろん、ユーザーの方々の利便性もさらに高めていきたい。もちろん、プライバシーとセキュリティの強化も並行して実施する。データ取得におけるユーザー同意はもちろん、国際基準に準拠したデータ保護に取り組み、安心安全なメディア、検索を実現する」。

「ヤフーのマーケティングソリューションはまだまだ発展途上にある。データとAIを徹底的に活用し、運用効率最大化と利便性を追求していく。顧客理解を深め、未来を可視化していきたい」。

「データの力でユーザー理解を」

「メディアサービスの方針と取り組み」において、Yahoo!ニュースをはじめとするメディアにおけるデータ活用のあり方を語ったのが片岡裕氏だ。同氏は、ユーザーの日常生活をより豊かに、より便利にすべく、メディアサービスが目指すのは「行動につながるメディア」とする。「ただ情報を消費するだけの場ではなく、ユーザーの次の行動を生み出す存在になれるか。メディアの価値が問われている」。

個々のユーザー理解を深め、ユーザーの意思決定や行動につながるような良質な体験を提供し、価値あるメディアを目指していくとし、片岡氏は続ける。「良質な体験は習慣化を生み、利用想起へとつながり、さらなるセッション数の成長も実現できる。そのために、これまで以上にユーザーのニーズに応えていくことも重要だ」。実際にユーザーにどのような価値提供をしていくのか、片岡氏は5つの具体的なアクションも紹介している。

まずは、災害や新型コロナウイルスの感染状況、オリンピックなどのイベントで求められるコンテンツである「有事・国民イベント対応」。次に、ユーザーの置かれている状況に即したコンテンツを提供する「ローカル領域強化」。メディアのインタラクション性を強化すべく、よりユーザーの力を活用していく「+1強化」。メディアを媒介としてコマースや広告など次の行動へとつなげる「メディアtoアクション」。最後に、ユーザー理解を深めるための「レコメンド・パーソナライズ強化」だ。

「ヤフーには検索という非常に強いサービスがある。データの力でユーザーを理解し、体験を向上させ、ニーズに応えていくことで、ヤフーのメディア群の価値を高めていく」。

ヤフーのデータを活用するソリューション群

クライアントに対してソリューションを提供していくプラットフォーマーとして、ヤフーはどのような価値を提供していくのか。その具体的な内容に踏み込んだのが鍵山仁氏のセッション、「-No Data, No Future.- ヤフーにしかできないデータマーケティング」だ。プライバシー規制強化が進み、ターゲティングやこれまでできていた精緻な計測ができなくなるという懸念があるなか、鍵山氏は「多くのデータを持つ企業が生き残るというが、データだけあってもパフォーマンスを維持するのは難しい。データに加えて技術力を持ち、データを活かせるかどうかが問われている」と話す。「ヤフーはデータとAIテックを活用し、プライバシーセーフな世の中においても価値あるソリューションを提供できると確信している」。

2022年4月には改正個人情報保護法も施行され、事業者はユーザーの同意を取りつつ、オンラインで適切なタッチポイントを持ち、体験を提供できるかが問われることになる。「それができなければ、競合に一気に顧客を奪われる可能性すらある様な速度で変化が起きている」とし、鍵山氏は続ける。「ヤフーにはLINEやPayPay、トレジャーデータと、ユーザーと多くのタッチポイントを持つ仲間がいる。各サービスと連携し、これからの世界を生き残れるソリューションを提供していく」。そのなかでヤフーが提供するのがデータマーケティングソリューション(DMS)という、同社の数多くのサービスにおける膨大な行動データに基づいて提供されるソリューション群だ。マーケティングファネルの構築とPDCAサイクルの高速化を目的として、多数のプロダクトが展開されているが、ここではセッション内で紹介されたプロダクトの一部を取り上げる。

まずは、キャンペーン単位のサポートで終わるのではなく、継続的なサポートを実現するために提供されている「Yahoo! JAPAN予測ファネル(以下、予測ファネル)」だ。クライアントが有する過去のコンバージョンデータからファネルを自動で構築し、どのユーザーがどの階層にどれくらいいるのかを分析できるという。コンバージョンへの近さによってユーザー群には0から1.0までのスコアを付与し、階層化したファネルでコンバージョンの近さを把握できる。ファネルのKGIやKPIはコンバージョンや指名検索増加、コマースの購入者増加、LTVの高いLINEの友だち増加など自由に設定可能になっている。「ファネルは需要の変動に比例して動くもの。しかし、需要を正確にキャッチし、構築したファネルに当てはめるのは難しい。予測ファネルはその変動を、スコアによって正確に把握することができる」と鍵山氏は語る。

鍵山氏は、ユーザーの実態を踏まえたファネルを構築できれば、各階層に合わせて適切な広告訴求を行うことで、競合より先にアクションを起こすことができると指摘する。「0.5というスコアだったユーザーが広告によってどのようにシフトしているのか、といったデータも時系列でも把握でき、広告を実行したあとの効果測定も可能になっている」。

「ヤフーとともにチャレンジを」

さらにDMSでは、ネクストアクションへとつなげるためのデータ、つまり広告接触したユーザーのインサイトを把握できる分析ツール、「DS.LIBRARY」を提供する。あらかじめ用意されている約150種類の分析テンプレートから必要なデータを得るためのものを選択し、情報を入力するだけで統計化されたレポートを得ることができる。鍵山氏によると、「先行してβ版をヤフー社内で利用していたが、半年間の運用でDMSの利用者数を約110社から約2000社にまでスケールアップすることができた」という。

消費行動におけるユーザーの思考を把握できるツール、「DS.Insight Persona」も2022年夏にリリース予定だ。鍵山氏が例に挙げたのはYahoo!ショッピングにおけるユーザーの購買あり方だ。特定の商品を購入しているユーザー群を抽出し、当該ユーザー群が全ユーザー数に占める割合、デモグラフィックや興味関心などを可視化できるという。「ヤフーの強みである検索に基づいたキーワードマップから、ユーザーの購入に至るまでの思考も把握できる」。

一方で鍵山氏は、これまでヤフーはオンラインを主軸とするクライアントに対しては多様なサポートを提案できていたものの、オフラインを主軸とするクライアントに対しては有効な活用手法を提供できていなかったとと振り返る。「これからは決済データなども活用し、オフラインのクライアントにもソリューションを提供していく。たとえば、決済データとオンラインで得られる興味関心データを組み合わせて店舗ごとの商品構成やクリエイティブに関するインサイトを提供していきたい。ヤフーのデータを使えば店舗ごとの商圏分析や優良顧客の可視化も可能になる。 オフライン主体の事業者に対しても、計測ができない手法ではなく、ユーザーにしっかりリーチする提案を行っていく」。

DMSのソリューション、プロダクト数は膨大だが、どんな課題にもフィットする提案を必ず行うことができると鍵山氏は自負する。「いままでヤフー広告だけを使ってPDCAを回していたお客さまに対し、予測ファネルをはじめとするDMSの各ソリューションをぜひ利用してもらいたい。ヤフーとともにチャレンジしていただけるお客さまとともに、インパクトのある事例を作り上げていきたい」。

Written by 分島 翔平

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