老舗飲料メーカー V8 は、いかにリブランディングしたか?:「これはもはや、祖母のトマトジュースとは違う」

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従来型のCPGブランドは、新世代の消費者に対してイケてるブランドになろうと試みている。創設から1世紀近くの歴史があり、主にトマトジュースのブレンドとして知られているV8(ブイエイト)も、そのようなブランドのひとつだ。この5年間で、V8の商品開発は、フラグシップ飲料以外の分野に展開することで、自社のブランドを刷新しようと試みてきた。

最初のV8のトマトジュースは1930年代から販売されており、1948年にキャンベル・スープ・カンパニー(Campbell Soup Company)に買収された。それ以来、長期保存可能な同社の商品はブラッディ・マリーのカクテルや旅客機の飲料カートに欠かせないものとなった。同社は近年に、V8+プロテイン(V8 +Protein)やV8+エネルギー(V8 +Energy)などの新商品をリリースするとともに、若いブランドと協力して、健康に気をつける消費者に選ばれるブランドとして自社の位置付けを変更しようとしてきた。十分な実績があり同社の原点でもあるトマトジュースを離れて、スパークリング飲料などの新商品を展開し、最新流行の飲料メーカーと協力してきたのも、ブランド全体の戦略の一部だ。

V8のマーケティング担当バイスプレジデントであるレスリー・ウォーラー氏は、「当社は、植物の力を活かした最初の飲料メーカーと自社を位置付けており、その方向にさらに事業を展開することを望んでいる」と述べている。

ウォーラー氏は、消費者はすでにV8をほかのジュースより健康的と見なしているため、マーケティング活動をゼロからはじめる必要はないと語っている。「しかし、もうこれはおばあちゃんの飲んでいたトマトジュースとは違うものだ。当社には現在、各種の味に関するプロファイルを反映したポートフォリオが存在する」と同氏は述べている。

パンデミックにおける成長

この見直しは約10年前にはじまった。このとき、同社はV8+の商品ラインを発売した。このラインは、現在ではV8+エネルギーやV8+プロテインなどに拡大している。同ブランドの最新の植物ベースのプロテイン飲料には10グラムのプロテインと5グラムの食物繊維が含まれており、ウォルマート(Walmart)を皮切りとして昨年11月に発売された。それ以来同社は、さまざまな小売業者で販売を開始している。V8+のSKUの多くには果物や野菜のブレンドが含まれている。しかし、より現代的なフレイバーのいくつか、たとえばスパークリングのザクロブルーベリーはトマトが一切含まれていない。

これらの新しい商品は低糖とスパークリングのジュースに特化したもので、これによって新しいコラボレーションも生まれた。「当社のV8+ラインは、当社ブランドだけでなく、このカテゴリー全体に、若い顧客を引き入れつつある」とウォーラー氏は述べている。

このようにV8のポートフォリオを成長させることに重点を置く姿勢は、需要の拡大と並行して強くなった。キャンベルは、V8も含む同社の食事および飲料分野について、パンデミックのあいだに大きな成長が見られたと語っている。これは主に、アメリカ人が自宅での飲食により多くお金をかけるようになったことが原因だ。CEOを務めるマーク・クローズ氏は、12月に行われた前回の決算発表で「供給の問題にもかかわらず、前年よりも消費は1%増加し、2年前と比べると11%増加した」と述べている。同社は、V8の売上が2021年に伸び鈍った理由の一部は、アルミ缶の不足などサプライチェーンの問題だとしている。

他ブランドとのコラボレーション

パンデミックのあいだにV8は、顧客の25%が購入したV8+ドリンクをアルコール飲料と混ぜ、20%はノンアルコールのスピリッツに加えていることを発見したと、ウォーラー氏は説明している。その結果、同社はノンアルコールスピリッツのブランドであるリチュアルゼロプルーフ(Ritual Zero Proof)と提携し、共同ブランドのレシピを開発することを決定した。この提携は2021年に、リチュアルの代替品のジンとウイスキーを使用して、インフルエンサーのミクソロジストの作成したレシピにより開始された。

V8は今年1月に再度リチュアルゼロプルーフと提携し、両方のブランドのウェブサイトに加えて、ソーシャルメディアのフィードにもレシピを掲載し、ふたつのブランドの商品についてAmazon独占のバンドルを販売した。「ブランドを現代化する機会について考えた結果、モクテル(ノンアルコールカクテル)やカクテルと結び付けられるよう、新しいSKUを作り上げた」と、ウォーラー氏は述べる。

ウォーラー氏は、リチュアルのコラボレーションはクロスブランドのショッピングを促進するため役立ったと語る。特にV8スパイシーホット(V8 Spicy Hot)と、リチュアルゼロプルーフウイスキー(Ritual Zero Proof Whiskey)は人気のあるバンドルだったと同氏は話す。

リチュアルのCEOを務めるデビッド・クルーチ氏は、このコラボレーションが「広範な年齢層の顧客」を引き入れるためにも役立ったと述べている。同氏は、両ブランドが実店舗においてリチュアルとV8の各種のマーチャンダイジング戦略を来年テストする可能性を示唆した。

これらの新しいコラボレーションの一方で、V8は自社のパッケージのデザインを「今日のジュースの文化を反映して」作り直す作業にも取り組んでいると、ウォーラー氏は語る。新しいラベルには、関係する栄養価、たとえば1杯ごとのプロテインやカフェインの含有量などを目立つように表示する。切り替えプロセスは12月に開始され、この春には発売される。またV8は4月から、プロテインの商品ラインの新しいパッケージを紹介する新しいテレビキャンペーンも開始する。

V8の現代化活動は、ジュースのカテゴリーの進化が続くことを受けたものだ。

消費者の好みの変化

ジュースのカテゴリーは過去数年間に、特に食料品店の通路で大きな変動を経験した。健康に気をつかう消費者のあいだで、コールドプレスジュースのバーが人気になった。しかし、アメリカ人が一部のジュースも含めて、砂糖の多い飲料を敬遠するようになってきたことから、大手のジュースブランドは苦闘していた。このトレンドから、ペプシコ(PepsiCo)は昨年、ネイキッド(Naked)とトロピカーナ(Tropicana)のジュース事業を売却した

フィンテック企業のサークルアップ(CircleUp)のパートナーであるニナ・マッキニー氏は、V8のブランド更新戦略は、「消費者の好みの変化が従来にもまして急速になってきた」ことから有意義だと述べている。これらの習慣はソーシャルメディア、栄養成分の情報が広く利用可能になったこと、および消費者が健康に対して広範な関心を抱くようになったことによって推進されていると、マッキニー氏は説明する。

「好みの進化に対応するため、既存の企業は変革し、消費者の要求を満たせる商品を提供する必要がある」と同氏は語る。

しかし同氏は、従来のブランドが進化を試みるのは実行が難しい戦略であるとも言及している。同氏は過去数年間に製品ラインナップの拡大が成功した例として、グルテンフリーのオレオ(Gluten-Free Oreo)や、レイズ(Lay’s)のベイクトレイズ(Baked Lay’s)チップを挙げている。健康を重視したカシィ(Kashi)などのブランドも、商品ラインを拡大し、ケトやパレオなどのトレンディな食事法に対応した商品を含めることを余儀なくされた

「最終的に、そのブランドが表示や機能の内容について権威や価値があると、消費者が認めるかどうかにかかっている」とマッキニー氏は締めくくっている。

V8について言えば、ミレニアル世代やZ世代における年長者の多くが自宅での娯楽に移行していくなか、同社はこれらの世代を的確にターゲットとしてつかんでいくことができると考えていると、ウォーラー氏は語る。「当社は、この層の消費者が真っ先に選ぶ飲料となることを望んでいる」。

[原文:‘Not your grandma’s tomato drink’: How V8 is rebranding to fit changing tastes]

Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:黒田千聖)
Image via V8

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