1〜2Qで広告収益を逃さないための パブリッシャー の新戦術

DIGIDAY

第1四半期のさなか、一部のマーケターでは、凍結されていた広告予算に動きが見え始めた。広告主が2023年のマーケティングプランに関してパブリッシャーと交渉の準備に着手したのだ。しかし、だからといって、こうした予算がすぐにでも使われるとパブリッシャーが期待できるわけではない。

第2四半期が始まり、わずか数週間だが、パブリッシャーやメディアバイヤーの話によると、いったん第2四半期中の消化が決まった取引が、2023年後半へと先送りされたという。まるで、車の玉突きの「バンパーカー効果」のようだ。

とはいえ、第2四半期もまた悲惨な状況に陥らないようにするため、パブリッシャーでは営業チームが躍起になり、広告主を説得する方法を見極めようとしている。たとえば、「その気のないクライアントには餌をまかない」「タイミングよくイベントを準備して取引を逃さない」「すぐに使えるターンキーソリューションを用意する」のもその一部だ。

それでは、一部のメディアが今四半期の取引をいかに確保しようとしているのか、具体的に見ていこう。

主なポイント

  • 散々だった第1四半期。第2四半期では、パブリッシャーは広告予算の取りこぼしゼロをめざす
  • そのために注目すべきは、勝算が確実な提案依頼書
  • イベントスポンサーも、キャンペーンの規模拡大で第2四半期内アップセルの対象に

企業を絞る

まずは、予算消化がより確実な顧客に対して、リスクヘッジをかける方法が考えられる。

インデペンデント(The Independent)の米国担当シニアバイスプレジデントであるブレア・タッパー氏の場合、どの提案依頼書(RFP)が顧客との交渉につながる可能性が高いのかを見極めることから着手するという。

手元のRFPのなかには、明らかに500社以上のパブリッシャーに送られているものがある一方で、依頼先はおそらくインデペンデントも含めて見込みのある3社だけと思われるものもある。チームの勝率が500分の1であれば、RFPの優先順位は極めて低くなると同氏は話す。

「回答する提案書に関して、これまでよりも慎重に対応することにした」とタッパー氏。目標は、チームのキャンペーンの勝率を平均30%で維持することにあり、今四半期はこの数字を保っているという。

さらに同氏は、「メールの墓場」の存在も指摘した。これは、チームでピッチを練りあげて見込み客に送ったものの、最終的に何の回答も得られなかったメールの山を指す。「まさに、時間の無駄だ」と話す同氏は、量重視の戦略から、どれだけ顧客と活発な対話ができているのかを評価する方法へと戦略を変更している。

苦しい展開が続いた第1四半期

一方、中規模デジタルメディア企業のある幹部が匿名を条件に話してくれたことを紹介しよう。新しい広告主と関係を構築するのは一筋縄ではいかないため、その幹部のチームでは、第2四半期は広告収益の中心を占める顧客層から「目を離さない」ことにしているという。同社の広告収益は、50社ほどで全体の75%を占める。

2023年第1四半期は「上手くいかなかった」と前出のメディア幹部は話し、同社顧客関係管理(CRM)で30件の取引が、同期中に「推奨ランク」(つまり、キャンペーンの勝機あり)から「失敗」に引き下げられたことを明かした。同氏によると、2022年に「推奨」から「失敗」に引き下げられたのは、年間全体で25件だけだったという。なお、2023年第2四半期のこれまでの取引総数は明かされていない。

2023年4月、第2四半期で「推奨」から「失敗」に変わった取引は「5本の指」よりも少なく、同氏いわく、第1四半期終盤に駆け込みで始まったキャンペーンが計画通り第2四半期で動き始まりそうだという。その一方で、「現時点では何の保証もないが」と加えるのを忘れなかった。

第2四半期は上昇基調か

前出の幹部は、今四半期、イベントビジネスがアップセルに役立っているとも話した。同社の第1四半期は、前年同期比で約23%減少しており、コロナ禍で最悪の四半期となったが、第2四半期は前年同期とほぼ同じ、もしくは5%増になりそうだという。

同社が今月4月に開催したあるイベントでは、アクティベーションとしてスポンサーへの請求額が50万ドル(約6750万円)を超え、当該イベント以外のコンテンツに関しても追加で100万ドル(約1億3500万円)の取引を勝ち取っている。

一方、インデペンデントでは現在のところ、世界規模の重要(かつ予定が明らかな)イベントを活用し、第2四半期の収益を確実につかもうと取り組んでいる。その例が5月に開催される英国チャールズ国王戴冠式だ。タッパー氏によれば、この戴冠式は概ね好意的に受け止められているという。というのも、そのおかげで広告主の積極的な期内予算消化が促されるからだ。なお、同氏は戴冠式報道のスポンサーに関してブランド名を公言していない。

ターンキーソリューションのテンプレートを用意する

前出のメディア幹部は、予定されているタイムリーな大イベントはすでにわかっているため、母の日や父の日のような特別な日やLGBTQ+のプライド月間に結びつけたターンキーソリューションが準備できるという。金額ベースでは10万ドル(約1350万円)から25万ドル(約3380万円)で、たとえばエディトリアルパッケージやニュースレター、社会的資産に関するスポンサーシップなど、30日から45日の短めなサイクルで販売・実施できるものが含まれる。

「今期のビジネスチャンスでは、顧客の焦燥感を駆り立てるためにできる取り組みは、すべて何でもやっている」とメディア幹部は言う。また、「規模の大きなキャンペーンよりも小回りが利き、比較的安価な取り組みなため、成約は間違いないはずだ」とも話した。

匿名が条件で話してくれた別のメディア幹部は、2023年は怒涛のようにRFPが送られてくるため、顧客向けにテンプレートを使用した提案書を例年よりも多く作ることになったと話した。テンプレートは、営業チームの負荷を軽減する手段であり、25万ドル(約3380万円)以下の取引を増やす手段でもある。こうした小口の取引は大きな伸びは必要とされていないものの、着実に数字を残してくれる。

これはつまり、プログラマティックキャンペーン同様、手を出しやすい取引であればあるほど、第3四半期以降に繰り越されず、広告主に受け入れられる可能性が高くなることにほかならない。

[原文:Media Briefing: Publishers test new tactics for keeping ad dollars in-quarter

Kayleigh Barber(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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