アテンション とコンテクストの「融合」を目指すドミノピザ。CTRは40%上昇

DIGIDAY

アテンションベースの広告バイイングは根気と無関心とのせめぎ合いという、昔ながらの構図になりつつある。それゆえ、進歩の兆しが少しでも見えようものなら、マーケターは概してすかさず目を付ける。大手ピザチェーンであるドミノ(Domino’s)の場合も然りだ。

同社はアドテクとコンテクスチュアルターゲティングの合わせ技を用い、自社広告の掲載場所として最も注目度の高いウェブページの特定に努めている。

直感とビューアビリティに頼らない

ドミノはアテンションタイム測定プラットフォームであるプレイグラウンドxyz(Playground xyz)のテクノロジーを利用し、ウェブページに登場するすべての自社広告について毎回の注目度を算定する。それら広告の掲載場所は、ウェブページのコンテクストをセマンティクスやイメージなどさまざまな因子から理解するGumGum(ガムガム)のコンテクスチャルターゲティングテクノロジーに決定させる。

この両テクノロジーを併用することで、ドミノのマーケターは仕事の精度をさらに高め、最高の結果に向けた広告の最適化を可能にしている。これまで、この手のアプローチは勘(つまり、各々の広告に相応しいコンテクストを嗅ぎ分けるマーケターの「直感」)とビューアビリティという指標に基づいていた。だがいまや、マーケター勢はアドテクおよびデータを積極的に活用している。さらにはそれゆえ、人々に広告を確実に見せることだけにフォーカスするのではなく、人々が読んでいる、あるいは観ているコンテンツと広告を関連づけることで、彼らとのエンゲージも目指している。

そして、このスタンスの変化がもたらした結果が、マーケターの背中を強く押している。

注目度を適正化した広告と直感およびビューアビリティに基づく従来型のそれを比較したところ、前者はアテンションで3000時間上回り、CTRは実に40%も高かった。加えて、キャンペーンは売上にも有意な影響を及ぼし、ROAS(費用対売上)率は広告によって変わるが、135%から398%だった。

より深いオーディエンス理解を実現する方法となるか

実際、この広告手法にはマーケターの成功測定法を改革するだけの潜在力があり、理想の結果が真に反映される有意義な指標をマーケターに提供しうる。ただし、これはまだ初期の検証段階にあり、ドミノもフォローアップキャンペーンの計画を仕上げられずにいる点は、忘れてはならない。だが、表面レベルのメ指標と離別でき、広告とオーディエンスの繋がりのより深い理解が手に入る可能性が、ドミノとその広告エージェンシー、ハバス(Havas)の関心を強く引き付けている。

「私に言わせれば、アテンションに基づくこの方法は、クリックスルー率と可視性からの自然な進歩だと思う。どちらも突き詰めれば、アテンションの基本的測定法だからだ」と、ドミノ・ピザ・グループ(Domino’s Pizza Group)のシニアメディアマネージャー、ケリー・モロウ氏は話す。「ただし、クリックはおそらくアテンションの最高の測定法ではない。一方、人々が自分の広告に少なくともフォーカスしていると理解できることは、注目を得られていることの紛れもない証だ」。

この種のターゲティングは、サードパーティCookieやモバイル識別子と同レベルのインディビジュアルターゲティングではないものの、プライバシーを尊重する多くの代替手段の一つであると、マーケター勢は見ている。これならば、コンテンツのコンテクストとそこに掲載される広告が浴びる注目度に基づき、より関連度の高いターゲティング広告の提供を促進できる。

「サードパーティデータのない世界が来るのはわかっているし、そこではコンテクストが鍵を握ることになる」とモロウ氏は話す。「我々の顧客がいる場所を示すデータは継続的に送られてくるが、我々のカスタマーベースは非常に広範囲であり、それゆえどんなコンテクストが鍵を握るのかの理解には、パートナーたちとの協力が不可欠となる」。

広告枠の買い方を変える必要も

近い将来、注目の奪取を目的とするドミノのさらなるキャンペーンが登場するのは間違いない。実際、それは「必然」だと、モロウ氏は断言する。

「若年層は他に目を向けずにいるのが非常に容易な(各々のソーシャルフィードという)世界で自足しており、興味のないものに目を向けないのが当たり前になっている」とモロウ氏は続ける。「我々はマクドナルド(McDonald’s)やKFC、さらにはジャスト・イート(Just Eat)やデリバルー(Deliveroo)などと競合するブランドであり、だからこそ人々の注目を集め、その結果として会話を促せることは非常に重要だ」。

ただ、アテンションベースの広告には変革を起こせる潜在力はあるが、広範にわたる採択に向けたその旅路は漸進的であり、まだ始まったばかりだ。その数ある長所を余すところなく発揮させるには、業界全体の協力、教育、そして標準的利用法の確立が欠かせない。

そして、そのいずれについても実現するには、まずはマーケターが広告枠の買い方を変えねばならない。インプレッションやクリックといった従来の指標は量を優先するものであり、広告の露出度が高ければ、それだけビジネス的成果も大きいだろう、と考える。

しかし、実際には必ずしもそうではない――いわゆる規模の経済のおかげで、たんにコストの低い選択肢という場合もある。アテンションベース広告はその発想を逆転し、エンゲージメントの質を強調する。すなわち、熱心なオーディエンスを魅了する高品質なメディアプレースメントを広告主に促す。究極的な問題は、このアプローチの価値および効果が関連コストを上回るか否かだ。

「ファーストパーティデータとはすなわち個人のことであり、その人物がブランドにとって非常に有益であるのなら、我々は質の高いインベントリへの支出を増やすべきだ」と、メディアエージェンシーPHDのメディアエクスペリエンス部門共同トップ、ソフィ・ストロング氏は5月、ロンドンで開催のイベント、プログラマティックパイオニア(Programmatic Pioneers)で話した。「我々は価格ばかりを追い求め、そのために質の妥協が起き、そこに低レベルのユーザーエクスペリエンスが伴い、結果的に人々は必ずしも我々にデータを提供したがらないという、極めて危険な領域に入ってしまっている。いまこそマーケターは行動を起こし、各々の調達チームの意欲を掻き立てるべきだ。というのも、この状態はこの先、非常に有害な影響をもたらしかねないからだ」。

[原文:‘Its inevitable’: Domino’s hungers for attention and context

Seb Joseph(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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