コロナ禍で「サザエさん症候群」に陥る若年層が増加:「それは痛いほどの不安だ」

DIGIDAY

日曜日の午後。仕事がはじまる月曜日のことを考えると憂鬱になる。そう感じているのはあなただけではない。新型コロナウイルス禍を機に、俗にいう「日曜日の恐怖(The Sunday Scaries:日本語でいうところの、[サザエさん症候群])」を感じている人々が、米国の労働者のあいだで増えている。特に、若い世代のあいだでだ。

ジム氏(仮名)は、シリコンバレーに暮らす30歳のメディアバイヤーだ。コロナ禍のさなか、日曜日の午後になると、仕事に戻る月曜日のことが頭をよぎり、強い不安を感じるようになったという。「日曜日の恐怖を感じるのは、不本意な現実を突きつけられるからだ。生活上の『やらなければならない』部分に引き戻される。コロナ禍に見舞われ、家で過ごす時間が増えたことにより、オフィスを離れて過ごす時間がどれだけ貴重か実感させられた」。

これはジム氏に限った話ではない。調査会社のセンサスワイド(CensusWide)がリンクトイン(LinkedIn)の委託を受けて、フルタイムで働く米国の労働者約3000人を対象におこなった2021年の調査では、男性専門職者の約31%が、「コロナ禍の影響で、はじめて日曜日の恐怖を感じるようになった」と回答している。また、回答者全体の66%が「仕事に戻る月曜日がまたやってくると思うと、日曜日にストレスや不安を感じる」、同じく41%が「コロナ禍を機に、日曜日の憂鬱が悪化した」と答えている。この症状は、特にミレニアム世代とZ世代に顕著だ。どちらの年齢層でも、「日曜日はかつてのような休養と息抜きの日ではなくなった」と答えた人が4分の3以上にのぼった。

「日曜日の恐怖」に関するツイート

なかでもZ世代は、月曜日の仕事再開を特に大きな負担と感じているようだ。上述の調査でも、これら若い世代の専門職のうち、実に75%が「職場に戻る初日に不安を感じる」と回答している。

変化する仕事への向き合い方

もちろん、「日曜日の恐怖」あるいは「日曜日の憂鬱」という概念は、コロナ禍勃発のずっと以前から存在していた。しかし、コロナ禍によってリモートワークを余儀なくされた人々は、自分たちのワークライフバランスや人生の優先順位を再考するようになった。そして、このような不安をよくあることだと放置せず、むしろ、自分はいまの仕事をそれほど好きではないと自覚するようになった。

「コロナ禍の勃発以前、仕事は情熱を傾けるべきものという考え方が、何世代にもわたって受け継がれてきた」。そう語るのは、Z世代のバイオテック科学者、ジーニー氏(仮名)だ。「毎朝出勤して、夜になると帰宅する。そういう生活が否応なく定年まで続く。しかし、コロナ禍に直面して、誰もが別の情熱を見いだした。もっと柔軟に勤務時間を決められるようになり、仕事以外で探究心や充実感を満たせるようになった」。

結果的に、人々は自分の仕事により大きな喜びを見いだし、またおそらくは、生産性も向上したのではないかとジーニー氏はいう。「日曜恐怖症は、ロックダウンの解除に伴うオフィスの再開によって、さらに悪化している。誰もがバランスの良い生活を実際に体験し、それがうまくいくことを知ってしまった。なのにいま、劣悪で時代遅れのシステムに戻ることを強いられている」。

感情は伝染する

『The Empath’s Survival Guide(邦訳:LAの人気精神科医が教える共感力が高すぎて疲れてしまうことがなくなる本)』の著者で、医学博士のジュディス・オルロフ氏は、「仕事に戻ることを不安に思う症状は、日曜日に限らず、一般的にもしばしば見られる」と指摘する。ウイルスへの感染という健康上の懸念だけでなく、感情の伝染を恐れてのことだという。

職場で、あるいはZoomを使った会議の席でさえ、不安を感じる人は非常に多く、職場が不安を拡散させてしまうこともある。オルロフ氏はこう説明する。「それは痛いほどの不安だ。非常に敏感な人であれば、他人の不安を感じ取り、それが引き金となって自分も不安を感じるようになる。そしてときに、その不安は耐えがたいほどに増幅される」。このような負の影響を克服するために、オルロフ氏は「職場で気持ちを落ち着かせる方法をいくつか見つけておくべきだ」と助言する。

「雑音が多い職場、たとえば、コロナ禍や失業の不安を口にする人が多い職場では、ノイズキャンセリング機能付きのヘッドフォンを使ってみてはどうか。休憩を取る、散歩に出かける、あるいはポジティブな言葉を口にしたりすることで、気持ちを立て直せることもある」。

逆に、同僚が不安を感じていることに気付いても、あえてそっとしておくのが一番良いこともある。オルロフ氏はさらにこう助言する。「不安に悩む人の不安を、無理に解消しようとしてはいけない。問題が大きく見えて、かえって不安が悪化することもある。職場でセラピストのまねごとをするのは、あなたの仕事ではない」。

職場のウェルネスは、個人からはじまる

職場のウェルネスは、個人からはじまる。ラッシュ大学の小児科教授であるアリソン・エスカランテ氏によると、「幸福に関する研究によって、負の感情とまっすぐに向き合うと、むしろ気持ちが楽になることが分かっている」という。エスカランテ氏は、恐怖や不安といった負の感情に対処するためのマインドフルネス戦略を「SIGH(深呼吸する)、SEE(見る)、START(始める)」メソッドと命名し、強いプレッシャーのもとで効果的な行動をとるためのアプローチとして提案している。

「恐怖から抜け出すことができれば、週末をもっと楽しめるようになる。日曜日の恐怖を感じたら、まずは深呼吸をしてみよう。深く息を吸い込み、ゆっくりと息を吐き出すことで、神経系を直接落ち着かせることができる。次に、いま感じている恐怖をしっかりと見て、その恐怖が自分に何を伝えようとしているのか理解しよう。そして最後に、改善のための行動を開始する。あまりにも強烈な不安を感じる場合は、ストレスの多い、心をむしばむ職場なのかもしれない。ならば、転職もひとつの選択肢として検討すべきだろう」。

[原文:‘It’s palpable’: Why younger generations are more prone to ‘Sunday Scaries’ than ever before

NICKLAS BALBOA(翻訳:英じゅんこ、編集:村上莞)

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