CTV への投資は増加の一途も、悩みは尽きず:曖昧な効果測定を始めとした脆弱な基盤に課題

DIGIDAY

この10年間、広告主はリニアTVの――したがって、リニアTV広告の――死を予測していた。デジタルビデオレコーダーやデジタル広告、さらには台頭著しいストリーミングおよび広告付き動画などの新興勢力勢の手によって抹殺されてしまうだろうと。

デジタル動画市場は熱く燃え上がっている。ところが、それでもなお、リニアTV界は灰にはならないだろうと、エージェンシー幹部らは話す。

悩みが尽きないCTVの諸問題

デジタル動画は、ソーシャル上の動画からストリーミング(すなわちコネクテッドTV、以下CTV)まですべてを網羅し、かつてないほど耽溺(たんでき)するオーディエンスを有しているが、フラグメンテーションと曖昧な効果測定のせいで、「大半の場合、動画広告戦略を立てられるほど頑強な基盤ではない」と、エージェンシー幹部らは指摘する。

データフラグメンテーションから値付けを巡る論争に至るまで、彼らを悩ませ続けるCTV絡みの諸問題は、少なくともこの1月から争点のひとつとなっている。そして、それはこの先も続くと思われる。

「我々は、いわゆる約束の地に到達したというのに、デジタルメディア界に広がる巨大なフラグメンテーションのせいで、景色は見るからに、これまでいた所とほとんど変わらない」と、R/GAのVP兼メディア&コネクションズ部門エグゼクティブディレクターであるアンドルー・ラフォンド氏は話す。「我々は未来に到達したが、その未来は未来で、解決すべき数々の課題を抱えている」。

リニアTVからデジタル広告への移行

業界が全体として、リニアTV予算をデジタル広告予算へとますます移行させているのは間違いない。2022年第1四半期、ブランドプロフェッショナルの43%が従来のTVにはマーケティング費を一切使うつもりがないことが、米DIGIDAYリサーチで判明した。この数字は2022年第3四半期までに48%へと微増し、2023年第1四半期に再び49%に上がった。

一方で同調査によれば、TV広告に予算を費やすと回答したブランドプロフェッショナルの59%が、適度な予算をCTVに投下していると回答した。

インサイダー・インテリジェンス(Insider Intelligence)によれば、米成人のあいだで初めて、従来型TVよりもNetflixやTikTok、YouTubeを介したデジタル動画の視聴時間のほうが長くなると、予想されている。

2023年、デジタル動画の視聴時間は平均3時間11分、対する従来型TVのそれは2時間55分と言われている。もっとも、TikTokといった類もデジタル動画とされているが、これらはストリーミングおよび、Hulu、Netflix、HBOマックス(HBO Max)といったプラットフォームで配信されるプレミアムコンテンツと同類であるとも、同等の価値があるとも、見なされてはいない。

とはいえ、人々の目がある所には必ず、広告主とその資金は付いていくものであり、つまりCTV予算が2023年の広告費に占める割合は7.3%と、2022年の6.1%を上回ることが予想されるとインサイダー・インテリジェンスは報じている

事実、モンデリーズ(Mondelēz)が有するブランドであるチップス・アホイ(Chips Ahoy)は、従来型TVへの広告費の投資をほぼ完全に止め、若年オーディエンスにリーチするべく、ソーシャルおよびデジタルへのフォーカスに切り替えている。そうしたデジタル広告チャネルには、TikTok、インスタグラム、Twitter、CTVなどが含まれると、同社は発表している。

効果測定は難題

R/GAでも、一部の顧客はすでにリニアTVには一切広告を打たず、デジタル動画を利用して動画広告に進出していると、ラフォンド氏は話す。

その大きな要因は、メディアバイイングとクリエイティブ双方におけるデジタル動画の柔軟性、視聴数の急増、そして効果測定およびターゲティング能力の向上にある。ただし、3つめのものについては、いまだ欠点が多いため、改善の余地が多々あると、エージェンシー幹部らは話す――ただし、それは新たな問題というわけではない。マーケター勢がオーディエンスの目の動きに合わせて広告費の投入先を変えている。つまり、いわゆるTV放送からストリーミングに切り替えている――。

しかしながら、ストリーミング界に長らく付き物の効果測定、フリークエンシー、ターゲティング絡みの問題は今後も付きまとうと思われる。

「効果測定の部分は難題だ。自分の広告が出したいところに出てくれると、そしてどこかひとつのプラットフォームばかりに偏らないと信じることさえ難しい」と、広告エージェンシーのファロン(Fallon)でメディア&ソーシャル部門トップを務めるアンディ・ロード氏は話す。

動画広告は一般に以前から効果測定が難しいとされてきたが、CTV界にはそれに加え、興味深いリセリング(再販)の慣習と広告詐欺の恐怖が存在する。

効果測定の結果については、いってみれば「我々の言葉を信じろ」であり、成功か否かを決めるのは、コンバージョンやブランドアウェアネスの向上ではなく、インプレッション数のみ、というのが現状だと、幹部らは話す(CTVが辿る成功への奇妙な道については、こちらを参照)。

価格の問題も

さらには、CTVの極めて高額な値札問題もある。あるエージェンシー幹部が匿名を条件に米DIGIDAYに語ったところによれば、広告が表示されるコンテンツ次第で、CPMは40ドルから50ドル(約5200円から約6500円)、ときには80ドル(約1万円)にまで上がることもある、という。

また、有料ソーシャル広告は一桁台が普通であるのに対して、プレミアムCTVのCPMは30ドル(約3900円)まで上がりうると、広告エージェンシーのランドリーサービス(Laundry Service)のVPで、ペイドメディア部門トップと務めるニティン・シンハ氏は話す。

経済の先行きを不安視する声が高まる現状においてもなお、CTVには単純にそれだけの価値があり、その理由はオーディエンスが付いている点、そしてメディアバイがリニアよりもはるかに柔軟にできる点にあると、エージェンシー幹部らは指摘する(幹部らは、TVのCPMの具体的な数字は開示しなかった)。

「CPMがあまりに高いからといって、手を出しづらくなる、という事態にはならないだろう。むしろ、高いからこそ、CTVへの投資レベルを常に再評価する、ということになると思う」とシンハ氏は話す。

リニアTVの価値は失われてはいない

同氏によれば、ほんの数年前、広告主勢はリニアTV広告費を基本とし、リーチを伸ばすための補足としてデジタル動画を利用していた。だがいまや、状況は完全に逆転しており、進歩的な広告主勢はデジタル動画を優先し、スポーツや授賞式番組といったいわゆるテントポールものに関してだけ、TVで補っているという(TVおよびストリーミング広告予算の具体額については、エージェンシー幹部らは明かさなかった)。

とはいえ、リニアTV広告には依然として価値があり、デジタル動画台頭の煽りを受けてマーケター勢の投資額が減少しているだけであり、完全に消滅したわけではない。

「消費者が依然、多くの時間をリニアTVに費やしている以上、リニアTVが我々にとって投資を続けるべき極めて重要なチャネルであることは明らかだ」と、22スクエアード(22squared)のEVP兼メディア部門エグゼクティブディレクターであるジェイミー・ルービン氏は話す。リニアTVは「我々のクライアントのメディアミックスにおいて、依然として非常に重要な役を担っており、リニアTVの重要性がこの先すぐに失われるとは思わない」。

[原文:Why advertisers are still waiting on the CTV promised land

Kimeko McCoy(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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