カブール空港で混乱 必死の市民 – BBCニュース

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離陸する便によじ登って脱出しようとする人たち(16日、カブール国際空港)

アフガニスタン反政府勢力タリバンが制圧した首都カブールから大使館員などを優先的に退避させるため米軍は16日、カブール国際空港を管理下に置いた。タリバンを逃れようと必死のアフガニスタン市民が飛行機によじ登ろうとするなど、大混乱が続いている。

目撃者によると、空港での大混乱のさなかで16日、民間人が少なくとも3人死亡した。離陸する米空軍機などにしがみつこうとした人もいたという。

出発が予定されていた民間機のほとんどが運航停止となり、アフガニスタン人も外国人も大勢が空港で立ち往生している。

アメリカをはじめ諸外国は、大使館職員や支援者の避難を優先させようとしている。

外国政府や組織と結びつきのある外国人や一部のアフガニスタン人の出国避難が行われているが、査証(ビザ)がなくても出国が認められているとのうわさが広まっているという。

空港に大人数が押し寄せるなか、飛行機に無理やり乗り込もうとする人たちを阻止するため、米兵が空へ向けて発砲したとの情報もある。大勢が押し合う中で、数人が死亡したとの話も出ている。

アフガニスタンのメディアが入手した映像には、滑走を始める飛行機の脇にしがみつく人たちの姿が映っている。

別のビデオでは、すでに離陸した飛行機から複数の男性が落ちる様子が捉えられているように見える。

脱出しようとしている人権活動家のラクシャンダ・ジライ氏は、「(アメリカが)空港を管理して、条件を勝手に決めてアフガニスタン人に押し付けるとは何事か」とロイター通信に話した。

「ここは私たちの空港なのに、私たちは何も分からず不安なまま待たされる間、目の前で外交官たちが避難している」

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米政府は避難活動の支援に兵6000人を派遣した。米国務省は15日、アメリカ市民、現地採用の大使館職員と家族、さらにタリバンから迫害される危険の高いアフガニスタン人を、数日中に飛行機で脱出させる方針を示した。

ジョー・バイデン米大統領は14日に声明で、米軍のアフガニスタン撤収は正しい決定だとして、「よその国の内戦のただなかにアメリカが果てしなくい続ける」ことは正当化できないと述べていた。

バイデン大統領は、避難支援のため米兵を追加派遣するにあたり、「アメリカや同盟諸国の人員が、秩序だって安全に出国できるよう、駐留中に我々を助けてくれたアフガニスタン人や、とりわけタリバンの脅威にさらされている人たちが、秩序だって安全に避難できるよう」にするとも述べていた。

これまでに米英を含む60以上の国々が共同声明を発表し、アフガニスタンの人たちは「安全で、治安の保たれた状態で、尊厳をもって暮らす」権利があると述べ、治安と社会秩序をただちに回復するよう訴えた。

さらに各国はタリバンに対し、出国を希望する人は誰でも出国させるよう求め、そのために道路や空港や越境地点の検問所を封鎖しないよう呼びかけた。

ロイター通信によると、空港へ向かった市民は帰宅が認められるとタリバン広報官は話した。

ロシアはタリバンから安全を保障すると確約を受けたため、大使館は閉鎖しない方針を示した。

中国は、タリバンと「友好的関係」を築く用意があるとしている。

イランのエブラヒム・ライシ新大統領は、米軍の撤退はアフガニスタンに永続的な平和が実現するチャンスになるはずだと歓迎した。

タリバンは15日夜、アフガニスタンでの戦闘で「タリバンが勝利した」と宣言した。これに先立ち、アシュラフ・ガニ大統領は出国し、タリバンが首都カブールを掌握していた。ガニ政権は事実上崩壊した。

タリバンの広報官は「戦いは終わった」と、カタールの衛星テレビ局アルジャジーラに語った。

アルジャジーラは、大統領官邸内で銃を振りかざす戦闘員の映像を報じた。

アフガニスタンでは2001年の米同時多発攻撃の直後にアメリカ主導の有志連合が侵攻し、タリバンを政権から追放した。多くのアフガン人にとって、そのタリバンの支配が約20年ぶりに復活することを意味する、恐怖の日となった。

アメリカはドナルド・トランプ前政権が昨年2月の時点で、今年5月までに米軍を撤退させるとタリバンと合意していた。ジョー・バイデン大統領は今年4月、米同時多発テロから20年を迎える9月11日までにアフガニスタンの駐留米軍を完全撤退させると表明した。

こうした状況で、15日には多くの市民がカブールから脱出しようとして、交通渋滞が発生した。カブールで取材するBBC記者によると、多くの店舗や市場は閉店し、一部の政府庁舎も閉じた。持ち場を離れる兵士や警官もいたという。

パキスタンは、国境沿いの地域をタリバンが制圧したため、越境地点のトルカム検問所を閉鎖したとされる。このため、アフガニスタンからの出国ルートはカブール国際空港発の空路のみになった。

空港への道路が渋滞する中、「鍵を車内に残して空港へ歩き始めた人もいる」と、住民の1人はロイター通信に話した。住民は空港へ向かい、車を乗り捨てて徒歩で国外へ脱出しようとした。

カブール中心部のATMでは終日、現金を引き出そうとする人々の行列ができていた。