日本の五輪報道は「ありえない」 – 小林恭子

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8月8日に閉幕した東京オリンピック。参加選手の男女比率はほぼ半数(男性51%、女性49%)で、オリンピック史上、最も「ジェンダー・バランスが取れた」大会となった。トランスジェンダーの選手が初めて参加し、一つの節目を作ったと言えよう。

しかし、国内外の報道では、五輪大会は「性差別が未だに残っている」と指摘された。問題点を拾ってみた。

開催前から女性蔑視言動が目立った東京五輪

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開催までの数か月の間に、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(当時)が女性について「不適切」と本人も認めた発言後、辞任。開閉会式の演出統括者佐々木宏氏が女性タレントの容姿をあざけるような演出案を出していたことが発覚して、辞任している。

直前の7月、国際オリンピック委員会(IOC)のジョン・コーツ副会長がオーストラリア・クイーンズランド州の女性首相アナスタシア・パラシェ氏に対し、記者会見場で同氏が開会式について知識がないと指摘した後、東京五輪の開会式に出るべきと指図。女性が無知と決めつけ、男性の優位を見せるような行為として批判された。

現在、IOCの理事の中で女性は約33%。選手の男女比は半々をほぼ達成しても、意思決定の地位に男性が多い。これが女性を軽んじる言動につながっている可能性もあるだろう。

女性の参加は「下品だ」とされた近代オリンピックの始まり

近代オリンピックの元をたどると、女性が差別的に扱われてきた歴史があった。

第1回の大会が開催されたのは1896年。この時、女性選手の参加は禁止されていた。開催提案者のピエール・ド・クーベルタン男爵は女性が参加するオリンピックは「実用的ではない、つまらない、美しくない、下品だ」と言ったそうである。

女性が参加できたのは1900年から。22人の女性選手が芝生の上で行う「クロケット」など、5つの「淑女のスポーツ競技」に参加した。

1950年代初頭まで、女性選手の割合は10%ほどだったが、その後、参加可能の競技の幅は広がった。男女の選手がほぼ同数の競技に参加できるようになったのは、2012年のロンドン五輪からで、比較的最近だ。2014年から、IOCは男女選手の比率が50%ずつになる目標を明記するようになった。

女性選手の参加を男性ホルモン量で規制するのは間違い?

女性選手の参加をめぐる課題は今なお多い。

生まれつきテストステロン(男性ホルモン)が高すぎる女性も、大会参加を阻まれるのが現実だ。

IOCは世界陸連の規則に倣い、女性陸上選手が400メートルから1500メートル競走に参加する場合、テストステロンの血中濃度が1リットル当たり5ナノモル未満であることを条件にしている。これ以上の場合は、ホルモン抑制剤を摂取しての参加となる。

この規則によって、ナミビア代表の2人の女性選手が東京五輪の400メートルの参加を断念している。

また、2016年のリオデジャネイロ五輪の陸上競技のメダリストである南アフリカのカスター・セメンヤ選手、ブルンディのフランシーン・ニヨンサバ選手、ケニアのマーガレット選手は、テストステロン値が高いため、東京五輪への参加をあきらめなければならなかった。

こういった規制に対し、米ノートルダム大学のカラ・オコボック助教授は、「テストステロンのみがスポーツの結果を向上させるという定説は正しくない」と反論(アルジャジーラサイト、8月8日付)。

11の陸上競技を対象とした世界陸連が行った調査では、テストステロンの量が競技の成績向上につながったのは3競技のみだったという結果になったことなどをあげ、「まだ確固とした判断ができるほどの材料がない。正確な判定が出るまで、テストステロンが高い女性選手にも参加を許すべきだ」と主張している。

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