コロナ言い訳にできぬテレビ離れ – PRESIDENT Online

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「毎日テレビを見る人」は8割切る

毎日テレビを見る人は8割を切り、10代・20代の半数がテレビを見なくなった――。こんなデータが明らかになり、コロナ禍で広告収入が落ち込んでいる放送界に激震が走っている。

写真=iStock.com/RapidEye
※写真はイメージです

しばらく前から若者の「テレビ離れ」は言われてきたものの放送界はタカをくくっていた節があるが、テレビライフが激変している実態を突きつけられて、にわかにざわついてきた。

「衝撃的なデータ」を明らかにしたのは、NHK放送文化研究所の「国民生活時間調査2020」。5年ごとに実施している全国的な調査で、生活行動と関連づけながら行うため信頼度の高いメディア調査として知られる。

この中で、平日の1日に少しでもテレビを見る人の割合(行為者率)は79%と、2015年調査の85%に比べ、5年間で6ポイントも減少。1960年の調査開始以来、初めて8割を切った。

年齢別にみると、50代以下は軒並み減少。とくに、10~15歳は56%(2015年調査78%)と22ポイント減、16~19歳は47%(同71%)と24ポイント減、20代は51%(同69%)と18ポイント減、と、いずれも激減した。つまり、今や10代や20代の若者は、2人に1人がテレビを見ないということになる。

また、30代も63%(同75%、12ポイント減)、40代68%(同81%、13ポイント減)、50代83%(同90%、7ポイント減)と、いずれの世代も「テレビ離れ」が加速している。

9割以上の高水準を保っているのは、70歳以上95%、60代94%とシニア世代に限られてしまった。

2010年までは、9割の人がテレビ漬けの日々を過ごし、若者世代も8割以上が毎日テレビを見ていただけに、この5年間の「テレビ離れ」のスピードは半端ではない。

若者世代はネット動画がテレビに代わる

一方、平日にインターネットを利用する人は、全体で45%。このうち、16~19歳は80%、20代は73%で、「テレビ離れ」が激しい若者ほどネットの利用率が高くなった。

ネット動画の視聴に限ると、10代は男性48%・女性37%、20代は男性44%・女性43%と、いずれも高い利用率で、5割前後のテレビに迫っている。ユーチューブやネットフリクスなどネットの動画配信サービスが普及する中、若者世代はテレビからネットに急速に移行している現実が浮き彫りになった。

このトレンドが続けば、5年後の調査では、若者世代はテレビとネット動画の利用が逆転していることが確実視される。

60代以上でもネットの利用者は急増しているため、全体のテレビ79%対ネット45%という利用率も、限りなく拮抗しているかもしれない。

今回の調査結果について、当のNHK放送文化研究所が「衝撃的」と驚くように、若者にとってテレビは毎日見る「日常メディア」ではなくなりつつある、といえそうだ。

民放キー局は軒並み大幅減収

この数字に、もっとも衝撃を受けているのが民放各局だ。

在京民放キー局5社は、6月17日から29日にかけて相次いで株主総会を開いて新体制を整えたが、2020年度の決算は、全社とも売上高が前年を大きく割り込み、営業利益もテレビ朝日以外は大幅減となった。連結決算でみると、全社とも減益減収だった。

図表3の「民放5局の2020年度決算」を見れば一目瞭然で、見るも無残に「▲(前年比マイナス)」で埋め尽くされた。

筆者作成

こうなったのも、売り上げの大半を占める広告収入が、コロナ禍の直撃を受けて激減、軒並み2ケタの減収になったからだ。番組制作費の大幅削減などで、かろうじて赤字は免れたものの、かつてない厳しい事態に直面している。