アバクロンビー&フィッチ 、 TikTok を通じて生まれ変わる :「多様性はひとつの領域で示せばよいものではない」

DIGIDAY

アバクロンビー&フィッチ(Abercrombie & Fitch)が、ミレニアル世代とZ世代に狙いを定め、TikTokを活用している。

創業130年のアバクロンビー&フィッチが、TikTokでペイドとオーガニックの広告戦略を展開し、そのなかでクリエイターも起用。これは、近年同社が進めている全体的なブランド改革の一環だ。2000年代初頭に得たティーン向けのプレッピー(名門私立学校に通学している良家、お金持ちの子息に対する俗称)な上級ブランドというイメージから徐々に脱却し、ファッショナブルなベーシックさを求める、20代のためのインクルーシブなブランドへの生まれ変わりを図っている。

ブランド改革は、2017年に就任した現CEOフラン・ホロウィッツ氏のもとで進められているものだ。アバクロンビー&フィッチのマーケティング担当シニアディレクターを務めるメーガン・ブロフィー氏は、まずは改革を進め、その変化が本物であると思ってもらわなければ、以前とは違うイメージをTikTokなどのプラットフォームで発信することはできなかった、と説明する。

ブロフィー氏は「ブランドを再発見してもらい、改革が本物であると信頼されて親しんでもらうには時間がかかる」と話し、サイズの取り揃えを拡充し、モデルなどさまざまな面で顧客のダイバーシティを表そうと努めてきた、と語った。「ダイバーシティはひとつの領域で示せばよいものではなく」、ブランドが行うすべてのことに反映されていなければならない。「数年かけて取り組んできたことが、最近になって注目されるようになった」のだという。

多種多様なクリエイターたちを起用

2021年第2四半期には、拡大を続けるTikTokのオーディエンスを活用してインクルーシブを前面に打ち出した新しいブランドアイデンティティを売り込むため、Z世代を対象とするコンサルティング企業であるIF7と手を組んだ。IF7のCOOで共同創業者のミシェル・マカリア氏によると、TikTokのオーディエンスに幅広く発信し、ブランドが対象とする多様なオーディエンスを例示するため、アバクロンビー&フィッチとIF7はファッションインフルエンサーに加え、ダンサー、シェフ、コメディアンなどの多種多様なクリエイターを起用したという。

ブロフィー氏は「広告とパーソナリティ起用のためTikTokに予算を移した」と話した。「現在の顧客を反映するような人にコンタクトしている。現在のアバクロンビーのさまざまな面を紹介できるように、ありとあらゆる分野で人を探している」そうだ。

投稿内容について具体的な指示はせず、「全体的なクリエイティブ戦略をクリエイターに伝え」、各自のチャンネルとアバクロンビー&フィッチ用のTikTok動画を制作してもらっている、とマカリア氏は話す。

「TikTokにかなりの金額を投じている」

ブロフィー氏は「クリエイターとどのように仕事をするかは、作業を進めながら調整している」といい、「月ベースでクリエイターと作業を進め、何が成果を挙げているのか、何がうまく行っていて何がうまく行っていないのかを注視し、安定した成果のあるパーソナリティやクリエイターには継続してもらいながら、ダイバーシティを維持するために新しい人たちを加えている。クリエイターの人数は常に流動的だ」と語った。

アバクロンビー&フィッチもIF7も、TikTokの広告やクリエイターに投じている金額については明かしていない。だがブロフィー氏は、生まれ変わったブランドの対象オーディエンスに対する周知をTikTokに大きく頼る今、「TikTokにかなりの金額と注目が向けられている」ことは認めた。

カンター(Kantar)によると、2021年9月までのアバクロンビー&フィッチのメディア支出は、2020年の2680万ドル(約29億5000万円)より若干少ない2590万ドル(約28億5000万円)。ただし、カンターではソーシャルチャネルへの支出は調査しないため、これらの数字には同ブランドがソーシャルチャネルにいくら投じたかは含まれていない。

ブランドイメージを変えるために

TikTokを活用しているのがアバクロンビー&フィッチだけではないと話す複数の業界アナリスト筋によれば、ブランドイメージを変えるためにTikTokを活用する動きは大手のマーケターのあいだでさらに広まる可能性があるそうだ。

インフルエンサーマーケティング企業のスウェイ・グループ(Sway Group)のCEO、ダニエル・ワイリー氏は「ブランドは、これまでとは異なるオーディエンスへの訴求手段として、TikTokに目を向けている」と話す。「TikTokはブランドイメージを変える機会を得られる場。以前は堅苦しい印象のあったブランドでも、TikTokで存在感を示すことでそのイメージを変え、もっと愉快で若々しいイメージを発信できる」。

ワイリー氏は、今後はブランドイメージを変える以外にも、インフルエンサーに対してより多様なアプローチをしていくブランドが増えていくだろうと予想する。「人々は『完璧な』インフルエンサーに飽きてしまっている。作り物ではない、本物っぽさを求めている。ブランドが『完璧』な人たちだけのものではなく、皆のものだというイメージを伝えるのに役立つのがTikTokだ」。

[原文:How Abercrombie & Fitch is using TikTok to reintroduce the brand and ‘reflect back who our consumer is today’

KRISTINA MONLLOS(翻訳:SI Japan、編集:黒田千聖)
Illustration by IVY LIU

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