スマートウォッチのバンドからも「永遠の化学物質」が検出されちゃった

筆者の場合、アレルギーのおかげでシリコン製バンドの時計しかしないのでセーフかも。

近年はスマートウォッチなどを着けている人が増えてきました。バイタルや睡眠時間の記録など、健康管理にも役立ってくれますものね。ところが、スマートウォッチやフィットネストラッカーのバンドから高濃度の「永遠の化学物質(PFAS)」が検出されちゃったみたいです。

市販バンドからPFASの一種を検出

ノートルダム大学の研究チームが科学誌、Environmental Science & Technology Lettersに発表した学術論文によると、スマートウォッチなどのリストバンドを分析したところ、4割からPFAS(有機フッ素化合物)の一種が検出されたそうです。

研究チームは、アメリカで販売されているさまざまなブランドと広い価格帯のスマートウォッチやフィットネストラッカーに使用される市販のバンド22種類を分析しました。

その結果、9種類のバンドからPFHxA(ペルフルオロヘキサン酸)と呼ばれる有害物質が高濃度で検出されました。特に、価格が15ドル以上のバンドで濃度が高いことが判明しています。

フッ素ゴムを使用するバンドに含まれるPFHxA

最も注目すべき点は、一部のサンプルで1000ppb(10億分の1000)を超える極めて高い濃度のPFHxAが検出されたことです。同大学物理天文学部のGraham Peaslee教授はプレスリリースで次のように述べています。

「この研究で最も注目すべきことは、たった一種類のPFASの濃度が非常に高かったことです。PFHxAの濃度が10億分の1000を超えるサンプルもありました。これは、私たちが消費者向け製品から確認してきたほとんどのPFASよりもはるかに高い濃度です」

汗や皮脂、ローションに対する耐性を持たせるために使用されるフルオロエラストマー(フッ素ゴム)という合成ポリマーに含まれるPFHxAは、環境中で分解されにくく、土壌や地下水を汚染し、数十年にわたって残留するといいます。

研究チームの大学院生、Alyssa Wicks氏は、PFASが皮膚から体内に吸収される可能性についてこう話します。

「皮膚からのPFAS吸収に関する研究はほとんど発表されていません。2024年初めにヨーロッパの研究グループが発表したある論文では、数種類のPFASが皮膚から体内に大量に吸収されることが判明しました。その初期の研究では、14,000種類あるとされるPFASのうち、わずか20種類ほどしか調査されていないため、PFASが皮膚から体内にどのように吸収されるかをより深く理解するためには、さらなる研究が必要です」

高い製品ほどフッ素濃度が高い

アメリカでは、5人に1人がスマートウォッチやフィットネストラッカーを使用していて、着用時間は1日平均11時間にも及ぶのだとか。

研究チームは、価格帯別の分析も行なっています。15ドル未満を「低価格帯」、15~30ドルを「中価格帯」、30ドル以上を「高価格帯」に分類して調べたところ、高価格帯の3製品すべてと中価格帯14製品中12製品で、フッ素濃度が顕著に高いことが確認されました。低価格帯7製品のフッ素濃度は極めて低かったそうです。そして、9製品から高い濃度のPFHxAが検出されたといいます。

内閣府食品安全委員会は、PFHxAの健康への影響について「入手可能なエビデンスにより、ヒトがPFHxAに十分(sufficient)にばく露された場合、肝臓、発生、造血、及び内分泌への影響を引き起こす可能性が高い」としています。

また、EUでは新たにPFHxAが規制対象になりました。 規制は2026年10月10日より段階的に施行されるそうです。日本では今のところ規制対象にはなっていません。

研究チームは、着用者が実際にどの程度の有害物質にばく露されているかについて理解を深めるために、より包括的な調査が必要だとしています。

また、個人にできる対策として、研究チームは低価格のシリコン製バンドの購入を勧めています。もしも高価格帯のバンドを購入する場合は、商品説明をよく読んで、「フルオロエラストマーを含むと記載されているものは避けたほうがいいとのこと。

安かろう悪かろうじゃないんですね、スマウォのバンドは。バンド単体じゃなく、スマウォやフィットネストラッカーとセットになっているオリジナルのバンドにPFHxAが含まれているかどうかも知りたいところです。

Source: Wicks et al. 2024 / Environmental Science & Technology Letters, University of Notre Dame

Reference: 内閣府食品安全委員会, EC, カケンテストセンター, Phys.org

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