良い製品なのはわかるが、少し落ち着け。
はやりモノってありますよね。数年前なら20万円近いカナダグースのジャケットだったし、私が学生だった頃はラルフローレンのカーディガンにバーバリーのマフラーでした。
では今は? 耐久性抜群のタンブラーだそうです。購入したい人が大行列を作り、しまいには逮捕者が出るほどの事態になっているんですよ。
人々を熱狂させるスタンレーの「クインチャー」
バカ売れしているのは、100年以上の歴史を持つスタンレー社の「クインチャー」というタンブラー。2016年にデビューしたモデルで、無骨なデザインと高い耐久性が人気。男性労働者をターゲットにしてデザインされたみたいですが、今や女子中高生の必須アイテムなんです。
きっかけは、去年11月にある女性がTikTokに投稿した動画でした。
@danimarielettering Thirsty after you catch on fire? @Stanley 1913 is like no problem i gotchu #fyp#carfire#accident#stanleycup♬ original sound – Danielle
炎上してボロボロになった車。その中に一際目立つオレンジのクインチャーが見えます。
原型をとどめているどころか、中に入った氷のカランカランという音がするほど無事。耐久性の高さが自慢とは聞いていましたが、まさかここまでだっとは…。
動画は驚きと共に世界中を駆け巡り、スタンレー社の社長にも届くことに。
@stanleybrand#stitch with @Danielle ♬ original sound – Stanley 1913
社長は思いがけないPRに喜び、女性に複数のスタンレーカップと新しい車をプレゼント。このニュースがさらにスタンレーの人気に拍車をかけました。
限定版でパニックに
スタンレー社がこの商機を逃すはずはありません。スターバックスとのコラボで限定版ピンクカラークインチャーを販売したときは、発売日の前夜からずらりと行列ができました。
量販店のターゲットでは店頭に並べるや否や、我先にとクインチャーを求める人でプチパニックが起こりました。
個人オークションサイトのeBayでは、倍以上の価格で取引されています。クインチャーの万引きも横行し、逮捕者も出ています(65個も盗んだらしい)。
偽物も出回っているし、公式そっくりの詐欺のサイトもあります。SNSにはクインチャーを約半額で販売する広告が表示され、ラッキーとばかりに偽物の可能性を疑いもせずにポチって約100ドル(約1万5000円)無駄にしてしまった人も出てきました。
スタンレーを持っていないことを理由に学校でいじめられた、なんてケースも報告されているし、頑丈なタンブラーを求める人は減るどころか増える一方。
こんな状況に対して、アメリカとカナダで不正広告などから消費者を守るBetter Business Bureauは、「信頼できる店で購入して」と呼びかけて注意喚起していますが、どうなることやら。
手に入れる工程がひとつの娯楽になっていたり、ある種の集団ヒステリー状態になっていたりもするみたい。限定品やコラボ商品も販売されているので、この熱狂はもうしばらく続きそう。
冷静になって考えてみれば、人間は何個もタンブラーを持つ必要がないし、どんなカップでも水分補給はできるのだから「少し落ち着け」って思うんですけどね。でもまぁ、子どもが「持っていないといじめられちゃう」と泣きついてきたら並ぶかもなぁ。