太陽の中心よりも6倍高い温度を球形トカマク型核融合実験装置「ST40」が達成し論文が公開される

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「トカマク型」と呼ばれる方式を採用し、小型かつ球形であることが特徴の核融合実験装置「ST40」で1億度を超えるイオン温度が達成され、関連する論文が公開されました。核融合炉において重要なマイルストーンとなる1億度という温度が、球形トカマク型で成し遂げられたのは初めてです。

Achievement of ion temperatures in excess of 100 million degrees Kelvin in the compact high-field spherical tokamak ST40 – IOPscience
https://doi.org/10.1088/1741-4326/acbec8

Spherical Tokamak Achieves Crucial Plasma Temperatures – EE Times
https://www.eetimes.com/spherical-tokamak-achieves-crucial-plasma-temperatures/

原子核融合反応を利用した原子炉である核融合炉については、超高温のプラズマを閉じ込める磁場閉じ込め方式と呼ばれる手法が次世代の技術として注目されています。磁場閉じ込め方式はコイルをドーナツ状に巻いて電流を流し、発生した磁場の中にプラズマを閉じ込めるというものですが、コイルの巻き方によって「ヘリカル型」と「トカマク型」の2種類に分かれます。

こうした核融合炉では、水素の一種である重水素と三重水素を太陽の中心部より高い温度で加熱してプラズマを作ることができます。トカマク型では加熱されたプラズマを、強力な磁石を使ってリング状の「トカマク」と呼ばれる装置内に閉じ込め、核融合反応を起こし続けることで、エネルギーを生成します。

トカマク型の小型高磁場球形装置「ST40」は、球形といっても真球に近いものではなく、リンゴのような縦にやや長い形をしています。球形であることは安定性を向上させるなどの利点があり、既存のドーナツ型の形状よりも安価に高品質なプラズマを生成させることが期待されています。


このST40が1億度(8.6KeV)の温度を達成したことを受けて新たに執筆・公開された論文によると、これまで5keV以上のイオン温度は球形トカマク型で達成されたことはなく、はるかに高いプラズマ加熱パワーを持つ大型装置でのみ達成されていたとのこと。また、磁場閉じ込め方式を採用した商業核融合に求められる適温を、小型の高磁場球形トカマク型が達成し得る可能性を初めて証明した例としても、大きな成功であると言えるそうです。


ST40を開発したTokamak Energyのサイエンス・ディレクターであるSteven McNamara氏は、「私たちはトカマクの設計、建設、運用、検証において10年の経験を持ち、トカマクを使った記録的な結果を出していますが、まだ発明すべき技術や克服すべき課題があります。大国が支援すれば、2030年代にもトカマク型核融合炉を用いた発電所実現するでしょう」と述べました。

McNamara氏は「核融合燃料1kgは、約1000万kgの石炭を燃やしたときと同じエネルギーを放出します。これに対抗できるものはありません。核融合は気候変動との戦いをサポートし、持続可能なネットゼロの未来の一部として、他の自然エネルギーと競合するのではなく、補完するものとして利用することができます」と続け、核融合の未来について語りました。


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