太陽系の惑星軌道は不安定で水星が太陽や金星に衝突することもあり得るという指摘

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太陽系の惑星は太陽を中心に楕円(だえん)形の軌道を描きます。こうした軌道について、天文学者らは「安定しているときもあれば、不安定になるときもある」という説を提唱し、考え方によっては惑星同士の衝突もあり得るという予測を打ち立てています。

[2303.05979] A counterexample to the theorem of Laplace-Lagrange on the stability of semimajor axes
https://doi.org/10.48550/arXiv.2303.05979

New Math Shows When Solar Systems Become Unstable | Quanta Magazine
https://www.quantamagazine.org/new-math-shows-when-solar-systems-become-unstable-20230516/

2009年、パリ天文台の天文学者であるジャック・ラスカール氏らが太陽系のモデルを構築してシミュレーションを行ったところ、水星の出発点を1メートル弱の範囲で変化させると、1%というほんのわずかな確率ながら水星の軌道が変化し、やがて太陽または金星に衝突することを発見しました。

太陽系の軌道を描く最も単純なモデルでは太陽が及ぼす重力のみが考慮されています。そのモデルにおいては安定した軌道が永遠に続くだろうと考えられていますが、惑星の重力等を考慮すると違った結果になってくるとのこと。


ラスカール氏らが発表したようなシミュレーションは天文学的に重要であったものの、数学的に証明されてはおらず、完全に正確なものではありませんでした。重力といったさまざまな要素を考慮して長期間にわたる惑星軌道を検証するとなると、それこそ何十億ものシナリオが考えられ、たとえ惑星同士の衝突が発生するという予測が打ち出されたとしても、それを証明するのは容易なことではありません。

こうした予測を研究するバルセロナ大学の数学者、マルセル・グアルディア氏らは、合わせて150ページを超える3つの論文を2023年に発表し、太陽を周回する惑星のモデルで不安定性が必然的に生じることを初めて証明しました。


18世紀に行われた初期の研究以来、太陽系惑星の軌道が描く楕円の大きさと形は安定しているとされていましたが、19世紀後半にアンリ・ポアンカレが、たった3つの天体しかなかったとしても既存の方程式に当てはめることは不可能であることを発見し、前提が揺らぎました。


軌道が不安定にもなり得るということを証明しようという試みはこれまでにも行われてきましたが、惑星のカオス的な振る舞いが大きく長期的な変化を生じさせるということを証明することは誰もできませんでした。今回の研究でグアルディア氏らは、2つの小さな天体が太陽の周りを回るような惑星系であっても不安定性が生じることを示しました。

これにより、数学者たちは軌道が不安定になる初期条件を見つけることができたとのこと。不安定性が生じるシミュレーションでは、変化は非常にゆっくりと蓄積されるにもかかわらず予想以上に早く発生し、現実的な惑星系に当てはめてみると、変化は数十億年ではなく数億年で現れるかもしれないという予測が立てられています。

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