ここ数年、右下の親不知の調子が悪い。疲れが溜まったり体調が悪かったりするとジクジク痛むのだ。ひどい時はその場にうずくまってしまうほど痛い。きっと抜いた方がいいのだろう。分かってはいるが痛みが消えると病院に行く気がなくなる。歯を抜くなんて怖くてたまらないのだ。とはいえ、このまま親不知を放置しても良い事はない。多分、悪化する一方だ。そのうちまた痛み始めるに決まっている。抜くしかないのだ。でも怖い。どうしよう?
新潟県の親不知まで行って親不知を抜くというのはどうだろうか。そこまで遠出すれば引き返す事も出来ないし、なんとなく縁起も良さそうだ。
※2007年12月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
新潟県親不知へ
新潟県の「親不知」とは、JR北陸線の親不知駅を中心に、青海・市振両駅の間約15キロに渡る地域の総称である。
なぜこの地が親不知と呼ばれるようになったのか? その由来には諸説あるらしいのだが、その中の一つが悲し過ぎる。平清盛の弟・頼盛が越後に転勤になり、それを追った夫人がこの地を訪れた時、誤って2歳の子供を波に奪われてしまった。悲嘆にくれた夫人が、
「親知らず
子はこの浦の波まくら
越路の磯のあわと消えゆく」
と歌を詠みそれが地名になった、という言い伝えである。歌を詠んでる場合じゃないほど悲しい話だ。
そんな親不知で親不知を抜くために、まずは東京から上越新幹線で越後湯沢を目指す。
東京は晴天だったのに越後湯沢に着くと小雪が舞っていた。たった1時間で東京とは寒さの質が違う。冬が本気だ。
ここで特急はくたか号に乗り換え糸魚川に向かう。
越後湯沢から糸魚川までの所要時間も1時間ちょっと。その間、トンネルが多く、それを抜ける度に雪が深くなっていく。車掌さんが車内アナウンスを噛んでばかりいて、僕の後ろにはずっと咳をしているおばさんがいる。そして、僕はこれから親不知を抜こうとしている。
ああ、不安でたまらない。