Shopify、大規模小売向けの新ツール「コマースコンポーネンツ」発表:大手クライアントへのアピール強める

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D2Cブランドがビジネスへの逆風を経験するなか、Shopify(ショッピファイ)は大手のエンタープライズ規模のクライアントを取り込むための新しいソフトウェアツールを追加しようとしている。

Shopifyは1月3日火曜日、エンタープライズ規模の小売業者を対象とする、「コマースコンポーネンツ by Shopify(Commerce Components by Shopify)」という新しいコンポーザブル(構成可能)スタックを発表した。この新しいプログラムにより、エンタープライズ規模のクライアントは、Shopifyのチェックアウトなどの中核機能の一部にアクセスでき、同時に、CRMや在庫管理システムなど、小売業者が希望するバックオフィスサービスにも変換することができるようになる。また、この新しいスタックでは、エンタープライズ規模のクライアントが、レート制限のない柔軟なAPIにアクセスできる。コマースコンポーネンツは、自社のコアサービスであるShopifyプラス(Shopify Plus)などを補完する、エンタープライズ小売業者向けの独立した新しいサービスだと、Shopifyは語っている。

豊富な選択肢

アナリストは米モダンリテールに対し、これらの新機能は、Shopifyが2014年にエンタープライズ企業向けプラットフォームであるShopifyプラスを開始したとき以来の大きな前進であると語った。カナダのテック大手である同社は2022年、成長の停滞を理由に従業員の10%をレイオフし、期待のリセットを余儀なくされた。同社は2022年度第3四半期末に、収益が22%増の14億ドル(約1880億円)に急増し、損失も縮小したと報告した。同社はeコマース新興企業を対象として事業をはじめたが、現在は、オプションの幅広さや技術的な自由度を売りに、エンタープライズ規模のクライアントを獲得することで成長しようとしている。

Shopifyによると、コマースコンポーネンツは、自社のスタック全体にわたり複数のシステムを必要とする、GMV(流通取引総額)と売上が5億ドル(約670億円)前後かそれ以上の大規模でグローバルな小売業者向けに構築されたものだと語る。コマースコンポーネンツにより、小売業者は「Shopifyの必要なコンポーネントにのみアクセスし、必要でないコンポーネントは使わないでおくことができる。Shopifyの各コンポーネントを希望の方法で使用し、それらのコンポーネントを自社のコマーススタックと統合できることを望む小売業者向けに最適化されている」と、Shopifyの製品担当バイスプレジデントを務めるアーパン・ポッダトリ氏はメールでの回答で述べた。

コマースコンポーネンツの価格設定は使用量ベースで、小売業者の使用するコンポーネントによって決まると、ポッダトリ氏は語る。Shopifyはこの新しい機能のスイートを、バービー(Barbie)、ホットウィール(Hot Wheels)、フィッシャープライス(Fisher-Price)などのブランドを販売している玩具会社のマテル(Mattel)とともに立ち上げると語る。

「Shopifyのコマースコンポーネンツによって、当社のインフラは開かれたものになる。エンタープライズ規模の小売業者は、自社で重要な基盤を構築するための時間、エンジニアリング能力、そして資金を費やす必要がなく、Shopifyがすでに作り上げた完璧な基盤を使用し、その分をカスタマイズ、差別化、スケーリングに活用できるようになる」と、Shopifyのプレジデントを務めるハーレイ・フィンクルスタイン氏はプレス発表で語った。Shopifyの既存のエンタープライズ小売業者には、グロシエ(Glossier)、JBハイファイ(JB Hi-Fi)、コティ(Coty)、スティーブマデン(Steve Madden)、スパンクス(Spanx)、ステープルズ(Staples)などがいる。

大規模小売を取り込む

「Shopifyは、より多くのエンタープライズ規模のブランドにアピールしようとしている。同社はもう新興企業が成長するためのソリューションではなく、そこから脱皮しようとしている」と、ピュブリシス(Publicis)の最高コマース戦略責任者を務めるジェイソン・ゴールドバーグ氏は米モダンリテールに語った。「このような新興企業のなかには、Shopifyで生まれ、成熟しつつあり、Shopifyが十分な機能を持たないために失うリスクがあると感じている可能性もある。あるいは、より大規模なエンタープライズ規模のブランドを採用するための作業かもしれない」と、ゴールドバーグ氏は付け加えている。

eコマース開発代理店のネタリココマース(Netalico Commerce)の創設者であるマーク・ウィリアム・ルイス氏は、この新しいサービスが、「カスタムのeコマースプラットフォームに傾倒しており、通常はオールインワンのeコマースSaaSソリューションを検討しないような、大規模なブランドを対象としている」と語る。

Shopifyは、コマースコンポーネンツによって、小売業者が将来に向けた構築に必要な「スピードと柔軟性」を提供することができると語る。「自社のインフラをクラウドのSaaSに移行することを望んでいるが、カスタムプラットフォームの柔軟性も依然として必要としているような、大規模な小売業者のニーズを満たすものだ」と、ルイス氏は述べる。

Shopifyの今後に向けた主要な課題は、自社のコアプラットフォームのカスタマイズ能力を拡張し、大規模な小売業者がSaaSのeコマースプラットフォームを使用していることによって、制限されていると感じないようにする方法を見つけ出すことだと、ルイス氏は語る。「同社は、その方向に向けてここ数年間に大きく進展したが、まだまだ成長の余地はある。しかし、この発表はその方向に向けた大きな一歩だ」と、ルイス氏は述べている。

[原文: Shopify aims to woo larger clients with a new stack for enterprise retail ]

VIDHI CHOUDHARY(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)

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