新CEOを迎えたピンタレスト、小売業者向けeコマースツールの運用開始:よりダイレクトな収益化モデルをめざす

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6月28日に新しいCEOを任命してから数日で、ピンタレスト(Pinterest)はeコマース機能を倍増させることになった。

ソーシャルメディア企業である同社は7月7日、同社のプラットフォームでより買い物しやすくするよう設計された、小売業者向けの新しいツール群を発表した。運用開始されたもののなかでもっとも重要なのは、ピンタレストAPIフォー・ショッピング(Pinterest’s API for Shopping)で、カタログ(商品情報を表示するプロダクトピンを自動作成する機能)の管理を簡単にするためのツールだ。また同社は、ピン用の商品タグ付けや、カタログに動画を追加する機能に加えて、ビジネスページの専用ショップタブも発表した。

コンバージョン率改善をめざしたツール群

同社にとって、今回のeコマースツールの追加は、同社のプラットフォームのコンバージョン率を改善するための何年にもわたる戦略の一環だ。最新の一連の機能は、トライオンAR(try-on AR)やリピンオプションなどのピンタレストの既存ツールに基づいて作られたものだ。この運用開始の背景には、同社のユーザー数の伸びが鈍化しているなかで、広告ビジネスを成長させようと試みていることも関係している。同社は最新の四半期の決算で、500万ドル(約6億8500万円)の損失を計上し、ユーザー数も9%減の4億3300万人となった。

このような逆風のなかでも、同社はトップオブファネルとボトムオブファネルの両方の広告に向けた一連の機能を増やし続け、多くのマーケターがこれらの機能を活用することに期待している。

ピンタレストのエンジニアリング担当シニアバイスプレジデントを務めるジェレミー・キング氏は、同社のeコマースツールは、激動するデジタル広告市場の変化を念頭に置いて設計されていると、米モダンリテールに語った。

「当社は多くのブランドが、特にプライバシーの新しい運用が開始されて以来、多角化を求めていることを耳にしてきた」と同氏は述べ、Googleによるサードパーティー製Cookieの段階的廃止と、iOSのトラッキング変更の両方について同氏は指摘した。「小売業者は、カスタマージャーニーを開始するためにピンタレストのような場所が使えるということに気づきつつある」。

ピンタレストAPIフォー・ショッピングは、ターゲット(Target)やザズル(Zazzle)などの小売業者により作り上げられたeコマースカタログ管理機能をそのまま手本にしたものだと、キング氏は説明している。小売業者にとって、カタログ管理はeコマース環境のもっとも重要な側面のひとつだとも、同氏は付け加えている。

「数千ものアセットをアップロードするのは悪夢のように大変な作業となり得る。そこで、ピンタレストのAPIをShopify(ショッピファイ)やウーコマース(WooCommerce)などのプラットフォームと統合し、プロセスを自動化するため支援しテイル」と、キング氏は述べている。「この新しいツールにより、高い精度でアイテムをアップロードすることも可能になる」。ベータテスト中に、このツールを使用した小売業者は在庫の価格設定とデータの有効性について97%の正確性を達成したと、ピンタレストは語っている。

タグ付けの数値的効果

そのほかの新機能は、商品ページをユーザーが閲覧するときの利便性を向上させることを目的としたものだ。たとえば、商品のタグ付けにより、企業は自社のブランド付きピンを購入可能にできる。キング氏によれば、シーンやブランド画像のタグが付けられた商品のピンは、単体の商品ピンと比べて、利用者の購入意思は70%も高いことがわかった。

「ピンタレストでは、商品画像が必ずしもクリーンな白色の背景に表示されるわけではないので、商品のタグ付けは特に重要だ」と、同氏は語る。一般的に、ユーザーは、たとえば誕生日パーティーやテーブルスケープなど、セッティングの一部である商品をスクロールして見過ごしてしまうという。「ピンタレストでの検索の97%はノーブランドだということがわかっており、ブラウジングによってブランドへの認知を広めるにはこの方法が適している」と同氏は述べている。

最後に、動画も同社にとって成長の可能性がある分野だ。同社は6月、食品およびレシピのネットワークであるテイストメイド(Tastemade)と長期的なパートナーシップを締結した

この新しいツールの一部として、ピンタレストはカタログに動画を追加しようとしている。これは過去数年間に各ブランドで一般的になったメディアだ。「当社は動画のピンを長年にわたって使用してきたが、この方法によりブランドのショッピング可能な動画にタグ付けすることが可能になる」とキング氏は述べている。

またキング氏は、商品動画のピンはクリックスルー率が158%に達し、「利用者たちがこれらの動画によく反応していることが明らかだ」としている。同様に、ピンタレストのARトライオンレンズも広く使用されるようになってきたと、同氏は語る。「これらの機能を使用する利用者は、60%から70%も購入する可能性が高い」。

よりダイレクトな収益化モデルをめざして

ピンタレストは長いあいだ、FacebookやGoogleなどほかの広告業者と、自社を差別化しようと試みてきた。過去数年間に同社は、D2Cブランドから小規模企業に至るまで、さまざまな小売業者を誘致してきた。また同社は、レシピに焦点を当てたコンテンツ戦略で、アルコールブランドを取り込み、ニッチ市場を開拓しようと試みてきた。しかし、こうした差別化の試みにもかかわらず、同社の広告プログラムは、大手の競合他社の規模にはいまだ届いていない。

パフォーマンスマーケティングエージェンシーのアドルセント(Adlucent)で有料ソーシャル担当のシニアディレクターを務めるクリス・アパリスキー氏は、「ピンナーはプランナーであり、インスピレーションを求めてをピンタレストを訪れる」と述べている。最近ユーザー数が減少したにもかかわらず、同氏は「ピンタレストの既存ユーザーに高い購買力があることを証明できれば、それはより多くの収益と、独自のブランド提案へとつながる」と述べている。

パートナーマーケティングソフトウェアおよびサービスプロバイダのパートナライズ(Partnerize)のCEOを務めるマット・ギルバート氏によれば、これらの新機能は「中核的なeコマース機能」で、直接的なコマース戦略を活性化する可能性がある。同氏は、後任のCEOであるビル・レディ氏の任命直後にこの発表が行われたことについても言及している。「これらの発表が非常に接近した時期に行われたことは、同プラットフォームがより直接的な収益化モデルをめざし、消費者の購入ジャーニーにおいて自社プラットフォームの果たす全体的な役割の拡大に向けた動きを真剣に検討していることを強く示唆している」と、同氏は述べている。

ピンタレストは、今後数カ月のあいだに、同社の新しいeコマースツール群をグローバルに展開すると発表した。同時に、同社は6月に買収したファッションマーケットプレイスのザ・イエス(The Yes)のチームのオンボーディングも行っている。キング氏は、同社がこの新興企業のショッピングテクノロジーを統合し、この秋に始動することを認めた。

同氏からすると、FacebookやGoogleの広告によって買い物を促進するのは、オンラインブランドにとっては成功だったという。しかし、最近の仕様変更により事態も変化した。現在ピンタレストは、新しい小売広告のプレイブックの一部になろうと試みている。「当社は、広告がユーザーに歓迎されるような購入の機会を生み出そうとしている」。

[原文:With a new CEO at the helm, Pinterest rolls out new e-commerce tools for retailers]

Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Pinterest

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