部門消滅、衝撃の舞台裏。
全米でEV急速充電設備の増設を進めるTesla(テスラ)のスーパーチャージャー部門が、4月30日いきなり消滅。担当社員500人全員がレイオフされ、EV業界に激震が走っています。
アメリカでは全車EV化の未来に向け、2030年までに全米50万カ所に充電網を拡大する計画が急ピッチで進行中です。最初は、政府主導の充電網との充電規格争いが懸念されたのですが、今は一番乗りで敷設を進めるTeslaの働きかけにほかの自動車メーカー各社が応じるかたちで、Teslaの充電規格に他社もそろえることで折り合いがついており、Teslaには、政府のインフラ整備の予算もある程度注ぎこまれています。
これからってときに、なぜ解散?
ところが30日未明、Teslaは突然なんの前触れもなく充電チームを解散。チームの社員全員が、朝目覚めたら会社のメールにアクセスできなくなっていたのです。
どうしてこうなった…とだれもが首をひねるなか、ようやく裏事情が明らかになってきました。
Reutersが元担当社員8人らから得た内部情報によると、イーロン・マスクCEOが充電部門の社員をもっと減らせと命じたのに対し、充電部門トップのRebecca Tinucciさんが「もう15~20%レイオフした、これ以上はムリだ」と反論して解雇され、勢いあまって(?)部門の全員がレイオフされたってなことらしいのです。
これにはさすがに下請けや投資家筋に動揺が広まり、Teslaも慌ててクビにした社員を雇い戻したりしているようですけど、何人雇い戻されたのかはわかっていません。
今はどこが担当を引き継いでいるの?
充電部門に代わって、現在充電設備の敷設業務を担当しているのは、エネルギー部門(太陽光発電システムやバッテリー保存設備の営業窓口)です。
引き継ぎやトレーニングは一切なかったもよう。Teslaの新しい担当社員らと話した下請けの人は「事情をなにも知らされていなくて、話にならなかった」と嘆いていますよ。
契約先も敷設に向けて資材をどこまで調達していいか見通しが立ちませんしね。同じくマスクが所有するX(旧Twitter)の取引先みたいに支払いを渋られるんじゃないかって心配になっちゃいますね…。
本当に今年中に何千か所も増設できるのか
そんな現場の混乱を打ち消すかのように、イーロン・マスクCEOは、
充電設備拡充に当社は5億ドル以上を投じる予定。今年は数千か所の充電設備を新設する。
と息巻いていますよ。それだけ聞くと大層な規模に見えますが、本年予定していた新設数より77%も減ってるようですよ?
Teslaは4月2日の第1四半期報告で、2020年以来初の販売台数の落ち込みを明らかにしました。売れ行き鈍化に合わせて、同月15日には全社員の10%にあたる千人規模のレイオフを発表。充電部門のDrew Baglino上級VPが会社を辞め、Teslaの持ち株ほぼすべて(114万株)を4月25日にゴッソリ売却しています。今回CEOに反論してクビになったのは、その後任の女性。たった数週間の短命となりました。
中国の激安EV上陸の脅威を前にTeslaは廉価EV「モデル2」開発計画を取りやめ、メキシコとインドに工場を進出させる計画が宙に浮き、4月に予定されたモディ首相との対談もドタキャン。内外で迷走が続いています。
Sources: Reuters