朝型はネアンデルタール人の遺伝子にあり?
新しい研究によると、ネアンデルタール人は早起きする傾向の遺伝子変異を持っており、この早起き遺伝子は、我々ホモ・サピエンスの祖先と交配して遺伝した可能性があることがわかりました。研究では、今日でも一部の人がその遺伝子を持っているとの証拠も見つかっています。
ネアンデルタール人とは?
ネアンデルタール人(ホモ・ネアンデルタレンシス)は、絶滅した私たち人間の最も近い人類の親戚と考えられています。
約30万〜70万年前、現代の人間が出現する際に分岐したのがネアンデルタール人の系統です(現代の人間自体は約30万年前に登場)。ネアンデルタール人と他の人類種は、我々の直接の祖先と同じ時期に生息しており、ネアンデルタール人は約4万年前に絶滅するまでヨーロッパとアジアの一部で生活していました。
現代人にも1~4%受け継がれている遺伝子
最近の研究では、ネアンデルタール人とホモサピエンスは単なる共存だけでなく、交配も行なっていたことがわかっています。
この混血は約7万年前、現代の人間がアフリカを離れてヨーロッパとアジアに広がり、ネアンデルタール人に出会ったことから始まった可能性があるそうです。今日のほとんどの人類には、ネアンデルタール人の遺伝子が1〜4%含まれていると考えられています。そして、今回新たに発表されたGenome Biology and Evolution誌に掲載された論文の著者たちは、この遺伝子が私たちを朝型の人に変えるのに役立つ可能性があると述べています。
私たちの「朝型」「夜型」の傾向は、主に私たちの体内時計である概日リズムに大きく影響されています。体内時計はおおよそ24時間でありながら、一部の研究では、より短い概日リズムを持つことが早寝早起きができるようになる鍵だともいわれています。
また、住んでいる地域の緯度など他の要因も、朝型か夜型かに影響があるそうです。今回の研究のチームは動物を研究した結果から、短い体内時計が特に高緯度地域での早期の活動性を増加させる可能性があると述べています。
研究チームは、ネアンデルタール人が一般的に高緯度の場所に住んでいたため、その結果として早起きの遺伝的変異を持っているのではと仮定しています。そして、いつしか現代の人間も同じ高緯度の地域に定住することになり、ネアンデルタール人と交配し、その遺伝子が今日の人間に引き継がれ、今の私たちにも受け継がれているとの考えです。
調査では人工知能が活躍
この仮説を検証するために、まず直接の人類の祖先とネアンデルタール人の両方において、概日リズムに影響があっただろう数百の遺伝的変異を特定しました。それから人工知能を使用して、両種において明確に異なる体内時計を引き起こしていた可能性が高い遺伝的変異を追跡しました。
この発見はまた、ネアンデルタール人が自分たちの概日リズムに関連する遺伝子変異を現代の人間に受け渡すことができたことを意味しています。
その後、チームは数十万人からのゲノムを収集している長期研究プロジェクトのUKバイオバンクのデータを徹底的に調査し、ネアンデルタール人由来と考えられる変異を探しました。多くの変異は、人間の概日リズムに結びついているだけでなく、特に朝型と関連していたのです。
概日リズムに大きく影響
カリフォルニア大学サンフランシスコ校の疫学者で、この研究の著者の1人John Capra氏は声明で述べています。
「古代のDNAと現代の人間の大規模な遺伝学的研究、そして人工知能を組み合わせることで、ネアンデルタール人と現代人の概日システムにおいて実質的な遺伝的差異を発見しました。
そして、現代の人間のゲノムに残るネアンデルタールのDNAの断片を分析すると、びっくりする傾向が見つかりました。その遺伝子の多くは、現代の我々の概日遺伝子のコントロールに影響を与えていたのです。これらの効果は、一貫して朝型の傾向を増加させるのです」
ネアンデルタール人の遺伝子のおかげで朝型の人たちが今存在するのかもしれませんが、研究者たちはこの影響についてはまだ多くの未知の点があると述べています。
チームは現在、もっと多様な人口で同様の研究を行ない、このネアンデルタールの遺伝子が朝型にどのように影響するかをさらに調べていく計画を立てているとのこと。また、他にもネアンデルタール人から私たち人間が受け継いでいる共通の特性があるかどうか、探したいと考えているそうです。