ペルー北部のカハマルカ地域で活動している日本とペルーの考古学者チームが、約3000年前の男性の遺体を発見しました。この男性は、この地域にあった寺院の神官だったと思われるとのことです。
インカ帝国以前の文化であったパコパンパ遺跡
遺体が発見されたのは、首都リマから北方約900kmにあるパコパンパ遺跡。アンデス山脈の標高2,500mの高地にあります。
遺体が発見されたあたりは、プレ・インカと呼ばれるインカ帝国文化以前にペルーで栄えた文化群の中で、紀元前1000年頃から広まったチャビン文化が占めていました。
パコパンパ遺跡は、9棟の記念碑的な石造りの建物と儀式用の建造物で構成されています。また、大きな彫刻が施された石の芸術品もあり、その中には人物画が彫り込まれた大きな石碑やジャガーを象った石の彫刻なども含まれています。
遺体はこの地域の最初の神官だった
パコパンパ遺跡で18年間研究をしている国立民族博物館の考古学者の関雄二氏は、AFPに対し「この発見は非常に重要です。なぜなら、この人物はアンデス北部の寺院を管理し始めた最初の神官の一人だからです」と語っています。
国立民族博物館のプレスリリースによれば、遺体が埋葬されていたのは円形で、直径が約3m、深さ約1mの墓。深さ90cmまで大量の灰と黒色土が詰まっていたとのこと。
また、副葬品としてジャガーの顔や手形が彫られたスタンプや刻線文様の完形土器などが出土したそうです。
AFPが公開した動画では墓の中にうずくまる遺体が映され、関氏は「この遺体は大人とみられ、骨盤の特徴などから男性だと思われます」と語りました。
続けて、遺体のそばから出土した副葬品についても「壊れている状態ではありますが、頭蓋骨のそばに小鉢、あるいは器があります。(中略)さらにそれとは別に左腕の横に2つの小さな器があります」とも語っています。
昨年にもリーダー格の人物を発見
2022年8月には、関氏ら考古学者チームはパコパンパ遺跡敷地内のラ・カピーヤ遺跡でも、今回と同じような宗教指導者と思われる男性の遺体が発見しました。
巻き貝などで作られた首飾りや胸飾りなどの装飾品も出土したことから「巻き貝神官の墓」と呼ばれています。
この貝はストロンブス貝といい、儀式の際に使用される楽器などに使われていたものだったそうです。貝の珍しさからリーダー格の人物だけが保有していたとされ、この人物もそうしたリーダーだったのではないかとされています。
今回の発見された人物も神官や宗教指導者として管理するリーダーであったと、前述の関氏の見解からもわかります。この時期のリーダー格の人物の発見はとてもめずらしいのだといいます。
これまでの研究では、こうした権力者が現れるのはこの時期より200~300年ほど先になってからだと思われていたそうです。その歴史が変わる可能性があることもこの発見の重要性を示しています。
パコパンパ遺跡でさらに発掘を進めれば、数千年前にこの地域に根づいていた文化についてより多くの情報が得られることでしょう。