こんな小さなクジラもいた!
ある古生物研究チームがエジプトの西方砂漠で、これまでで最も小さいクジラの化石を発見して、Communications Biology誌でその存在を発表しました。
「Tutcetus rayanensis」と名付けられたこのクジラは、約4100万年前のエジプトの始新世に生きていた種。推定で全長約2.5m、体重はわずか約187kgだそうです。
この化石が見つかったのがエジプトということで、ツタンカーメンと実際に見つかった場所の名前にちなんで名付けられています。
すでに絶滅している、水中のみで暮らしていたバシロサウルス科のクジラで、その中で最も小さい種だということです。
どんなクジラ?
研究の共著者でマンスーラ大学の古生物学者Hesham Sallam氏は米Gizmodoの取材に対して、
Tutcetus rayanensisは、バシロサウルス科の中でもびっくりするほどの極小サイズです。
バシロサウルス科でこの小さな姿が存在していたことで、この科に多様性があったこと、また初期のクジラは進化する海洋環境に適応するためにさまざまな体のサイズがあったことがわかります。
とメールで返事をしてくれています。
この化石が見つかったファユーム・オアシスは、始新世は熱帯の海の底だったためこれまでにたくさんのクジラの化石が見つかっていて、「クジラの谷」と呼ばれる場所があります。
2021年に、Sallam氏のチームが4本足の水陸両生クジラを見つけたのもここでした。
研究の共著者で南カリフォルニア大学の古生物学者Erik Seiffert氏は
エジプトの西部砂漠にある始新世の化石遺跡は、クジラの初期の進化と完全な水中生活への移行を研究するのに、世界で最も重要な場所とされてきました。
とプレスリリースで述べています。
超巨大なクジラも同時期に発見
そんな小さなTutcetus rayanensisですが、まったく対照的なクジラの存在も先週明らかになったばかり。
史上最大の大きさとされるシロナガスクジラよりも大きいPerucetus colossusというクジラの化石もペルーで発見されています。
Perucetus colossusもバシロサウルス科で、体の大きさと骨密度から、93.7トン〜375トンも体重があったとされています。
Tutcetus rayanensisの発見は重要なものですが、ただその種の初期の記録というだけではなく、以前に想定されていたよりもはるかに多様性があったことを確証するものだからです。
とシュトゥットガルト州立自然史博物館の古生物学者Eli Amson氏は述べています。Amson氏はPerucetus colossusを発見したチームの一員でもあります。
Perucetus colossusはおそらく現在のペルーの浅い沿岸水域に生息していたとされていて、またその巨大な体つきから、水中でゆっくりと移動していて、獲物を追いかけるよりも餌を漁っていた可能性が高いと考えられています。
巨大なPerucetus colossusと小さなTutcetus rayanensis、両方とも陸生の祖先の名残である後ろ脚がありました。
まったく逆のタイプのバシロサウルスのクジラ2頭が、数日の間に発見されたことについてSallam氏は「始新世の海洋生態系において驚異的な多様性を象徴しています」と述べています。
Tutcetus rayanensisのさらなる調査によって、この小さなクジラがエジプトの始新世でどのような立ち位置だったのか、また泳ぎ方、食べ物、そしてどのように生きていたのかが明らかになっていくことでしょう。