ガニー 創業者が語る新素材への投資と、2023年が「予測がむずかしい年」である理由

DIGIDAY

グローバル展開中の、スカンジナビア発のファッションブランド、ガニー(Ganni)は、新しい素材のためにバイオテクノロジー企業のルビラボラトリーズ(Rubi Labs)とのパートナーシップを開始した。これは、6月27〜28日にコペンハーゲンで開催されたグローバルファッションサミット(Global Fashion Summit)で発表された。この提携はガニーのサプライチェーン全体に徐々に統合されているところだ。

代替素材への注力

社歴23年のガニーは、ポルトガルの工場のソーラーパネル設置やカーボンインセッティング、代替素材の使用などのさまざまな取り組みを通じて、2027年までにカーボンフットプリントを50%削減することに注力している。ガニーは2022年にB-Corpを取得し、2022年6月、革新的な素材をテストして展開するための「ファブリックス・オブ・ザ・フューチャー(Fabrics of the Future)」と呼ばれる代替素材イニシアチブを開始した。素材には、菌糸体をベースにしたマイロ(Mylo)レザーや、使用済みの服から作られたリヨセルであるサーキュロース(Circulose)などがある。

代替素材の最新の試験は、醗酵などの生化学的プロセスを利用して二酸化炭素をセルロースに変える、カリフォルニアに本拠を置く創業3年のスタートアップ、ルビラボと協力したものである。セルロースはリヨセル糸の製造に使用することができる。この革新的な素材によって、バージン素材を使う必要が減り、セルロース素材関連のほかのプロジェクトでは課題になっている森林破壊を回避することができる。

ルビラボは、ガニー、リフォーメーション(Reformation)、レンタルプラットフォームのヌーリー(Nuuly)などのブランドとの6カ月におよぶテストパイロット段階のために、2023年3月に追加のシード資金として870万ドル(約13億円)を調達した。ルビラボのこれまでの資金総額は1350万ドル(約1.9兆円)に達しており、H&Mとパタゴニア(Patagonia)が戦略的パートナーである。ガニーのような低めの価格帯のブランドとの提携により、素材のテストとスケーリングをさらに迅速に行うことが可能になる。ガニーにとっては、これは新素材が自社のサプライチェーンでどのように機能するかを確認する機会である。ガニーはミッドレンジの現代的なブランドとして位置付けられており、価格帯は100〜400ドル(約1.4〜5.8万円)である。

2025年までに10%の素材を新素材に

スカンジナビア発のクールなファッションブランド、ガニーの共同創業者、ニコライ・レフストラップ氏は、カーボンを大量に消費しているファッション業界の一員であることが恥ずかしいと長年語っており、同業者らにもっと持続可能な事業運営方法を示そうとしている。

「最終的な願いは、従来の生地を気候にポジティブな影響を与える革新的な新素材にすべて置き換えることだ」とレフストラップ氏。「目標は、2025年までに当社の全素材の10%を、繊維プロジェクトのラボであるファブリックス・オブ・ザ・フューチャーからの革新的な新素材にすることだ」。同氏はまた、ガニーのサプライチェーンに炭素回収装置を設置し、自社のカーボンを回収して、販売する素材に変えたいと考えている。

新素材の有用性のテスト方法

ガニーはこれらのスタートアップに直接資金を投資していない。ファブリックス・オブ・ザ・フューチャーを通じてイノベーションへの早期アクセスを獲得しながら、ブランドに対する素材の有用性をテストしている。最初のステップは、素材の能力を分析することだ。「製品の外観や感触、スケーリングの可能性だけではなく、通気性などの幅広いパラメータにわたって製品をテストする。また、素材の構成も確認する。それはシート状なのか、列状なのか、自社のサプライチェーンと価格帯にどの程度適合するかなどだ」とレフストラップ氏は語っている。

2番目のステップは、その素材を理想的な用途に使って革新的な製品を開発することである。「マイロレザーのようなものでは、ジャケットやスカートの前に財布を作って、適切かどうかを確認したほうがよいだろう」。

3番目のステップは、素材を市場に投入して、素材のマーケティングを行うことだ。「このステップは、オフテイク契約を結んで、ある価格での一定量を保証することだ」とレフストラップ氏。オフテイク契約とは、ブランドが素材をどれだけ購入するかについてのブランドとメーカーの間の契約である。「当社は、別のソースからもっと安く調達できるかもしれないプレミアム製品に対して(スタートアップに)支払い、(製品を)スケーリングすることによって、間接的にスタートアップをサポートしている」。

2023年は予測が難しい「猶予期間」

ガニーは、小売業者と卸売業者のオムニチャネルアプローチを通じて、世界規模での広範な成長に注力してきた。2022年秋に自社ストアで米国に進出し、2023年3月にはロサンゼルスに最新店舗をオープンしている。最近では中国とオーストラリアにも進出している。

レフストラップ氏は次のように述べている。「実質的なビジネスを構築するためには、世界的に店舗を構築する必要があった。中国の深センからロサンゼルスまで店舗を展開しているが、これはビジネスモデルがやや複雑だということだ。昨年、米国(事業)は大幅に成長したが、ヨーロッパでは苦戦した。2022年末までに中国の景気が回復し始めたので、当社のオムニチャネルアプローチを通じて(収益の)バランスがうまく取れた」。

ガニーの最新の2022年収益報告書では、2021年と比べて売上高は34%の成長を見せた。年間の調整後の2022年のEBITDAは14%の成長だった。北米事業は2021年と比較して53%成長した。同社はコアカテゴリーであるプレタポルテに引き続き注力しており、現在ではプレタポルテ製品の100%が認定された責任ある素材を使って作られている。アクセサリー事業は総売上高の29%を占めており、コラボレーションへの注力によって支えられている。6月にはサングラスブランドの「エース&テイト(Ace & Tate)」とコラボレーションを行っている。

「昨年、当社は多くの課題にもかかわらず、着実な成長を達成したが、対応するには非常に複雑な市場だったためにマージンをリスクにさらすことになった」とレフストラップ氏。「地理的なテリトリー全体だけではなく、チャネル全体にわたって、どこから成長がもたらされるかを予測するのは困難だった。今年の目標を少し下げた。多くのブランドにとって今年はギャップイヤー(猶予期間)になると思っている」。

[原文:Ganni’s co-founder on new investments and why 2023 is a ‘gap year’ for fashion

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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