【山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ】祝「Kindleストア」10周年。消えていったレアな「Kindle」、「Fire」端末をプレイバック

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 2012年10月をもって日本上陸から10周年を迎えたのが、Amazonの電子書籍ストア「Kindleストア」だ。2010年前後「いつになったら日本に上陸するんだ」などとユーザーをやきもきさせたのも今は昔。現在Amazonが公開している特設ストアでは、これまでの10年の歩みを振り返りつつ、同ストアとともに歩んできたE Ink電子ペーパー端末「Kindle」や、メディアタブレット「Fire」の進化を確認できる。

 もっともこの10年、KindleやFireは、現在の形に向けてまっすぐ進化してきたわけではなく、メインストリームとして生き残れずに短期間で消えていったモデルも存在している。どれもが失敗作かというと決してそうではなく、むしろ完成度が高い製品だったり、人気のある製品だったりするのが面白い。

 ここではそんなKindleおよびFireで、過去に存在した5つのレアなモデルをピックアップ。その特徴と登場当時の状況、そして今だからこそ見えてくる、終息に至った経緯についての考察をお届けする。メインストリームの製品のみを扱ったAmazonの特集ページとは違った視点で、この10年を振り返ることができるはずだ(たぶん)。

歴代最小、スマホサイズのFire「Fire HD 6」(2014年)

 「Kindle Fire」というブランド名が「Fire」に改められた2014年、1モデルだけ存在したのが6型の「Fire HD 6」。その後、7型/8型/10型というバリエーションが定着したことで消滅したが、Kindleの液晶版とでもいうべきコンパクトな筐体で、持ちやすさは秀逸だった。

 本製品が登場した2014年時点ではスマホはまだ4~5型が中心だったが、その後6型のモデルが全盛になることを考えると、価格以外の差別化要因を探しにくい本製品が早期に終息したのは、正しい判断だったと言えそうだ。

片手でしっかり握りしめられる筐体サイズはほかのFireにない特徴

2022年発売の最新版「Fire 7」(右)との比較。そのコンパクトさが分かる

現行の6型「Kindle」(右)との比較。KindleサイズのFireと考えると面白い

6.7型のiPhone 14 Pro Max(右)と比べても表示サイズはほぼ同等だ

読書家も納得のページめくりボタン搭載「Kindle Voyage」(2014年)

 Kindle Oasisが登場する前、Kindle Paperwhiteの上位に存在したのがこのKindle Voyage。既存の6型モデルと同等の筐体サイズながら、本体左右に感圧式のページめくりボタンを搭載した読書家のニーズに応える製品だった。

 Kindle Oasisの登場で位置付けがやや不明瞭になり、1世代のみで消滅したが、販売期間が長かったため知名度は高い。いまなお後継モデルの登場を要望する声がチラホラ聞こえたりと、ユーザーの間では評価の高い名機だけに、なんらかの形での復活を期待してやまない。

外見は通常のKindleと同じだが左右ベゼル部に感圧式のボタンを搭載する

長い線が「次ページ」、その上にある丸印が「前ページ」に相当する

背面はくさび型になった独特の形状。後述の「Fire HDX 8.9」と共通のデザインだ

現行の6型「Kindle」(右)との比較。このベゼル幅に感圧ボタンを収めているのは秀逸

Snapdragon搭載のハイエンドFire「Fire HDX 8.9」(2015年)

 Fireシリーズは、7型/8型/10型というバリエーションが定着するよりも前に、しばらく7型/8.9型という2バリエーションが続いたことがあり、本製品はその1台。「Kindle Fire HDX 8.9」およびその後継機「Fire HDX 8.9」の2モデルにわたって展開された。

 現在のFireとは違うハイエンド志向で、SoCにSnapdragon 805を採用するほか、解像度も2,560×1,600ドットと高く、コミックの見開きにも余裕で対応するサイズでファンも多かった。筆者が過去のFireでベストチョイスを選べと言われると迷わず挙げるのがこれ。

8.9型という珍しい画面サイズ。約375gとサイズの割に軽量なのも特徴だ

背面はこの時期のモデルに共通するくさび型のデザイン。質感は非常に高い

現行のFire HD 10(下)との比較。ベゼルが太いため筐体サイズはそれほど差はない

コミックの表示サイズだけで言うと、8.3型のiPad mini(下)とほぼ同等だ

奇をてらいすぎた? 分離合体式の初代「Kindle Oasis」(2016年)

 現在ではヘビーユーザー向けモデルとして定着したKindle Oasisだが、初代モデルはバッテリ内蔵カバーとの分離合体式という、現在とは若干コンセプトが異なるモデルだった。薄型軽量を追求した結果この形に落ち着いたようだが、単体ではバッテリの持ちが悪すぎ、合体させると重すぎる(240g)という、どっちつかずになった印象は否めない。

 ちなみに筆者所有の私物は、外部バッテリがすでに認識されない状態にも関わらず、カバーが必要ならばそれを取り付けて使うしかないという、実に困った状態になっている。

片方だけ厚みのあるベゼルにボタンを備える、現行モデルと同じデザイン

バッテリを搭載した専用カバーと合体させて使用する。着脱はマグネット式

カバーを使うにはバッテリも装着せざるを得ず、結果として重くなるという悪循環

グリップ部が厚い筐体デザインは現行のKindle Oasis(上)に名残が見られる

[番外編]唯一の大画面版“だった”Kindle「Kindle DX」(2009年)

 2022年秋に「Kindle Scribe」が発表されるまでは最大の画面サイズを誇った、タブレットサイズの大型Kindle。同時期に登場した初代iPadとほぼ同等サイズ(9.7型)だが、タッチには対応しておらず、操作はすべてボタンで行なう。

 登場は2009年とKindleストア日本上陸よりも前、なおかつ日本のKindleストアには非対応(そもそも日本語表示に対応していない)だが、取扱いはAmazon.comながら日本からも注文でき、かつ長期の品切れを挟んで2014年頃まで販売されていたりと、息の長いモデルだった。

9.7型という大画面。タッチ非対応でボタンで操作する。下段にはキーボードも搭載

ページめくりボタンは向かって右側に集約される、左利きの人にはつらい仕様

デザインはKindle 2(右)と共通でスタイリッシュ。ブラックモデルも存在していた

現行のFire HD 10(下)との比較。ベゼルが太いぶん筐体は本製品のほうが大きい

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