チョコレート 会社にとってもっとも甘くない季節。「溶けない」ためのオンライン配送戦略

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こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
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チョコレート企業にとって、この数年間は、サプライチェーンの問題から原材料のコスト増まで、さまざまな問題に直面しており、それほど甘いものではなかった。

しかし、これらの企業にとって1年のうちで特に危険な時期は、夏だ。傷みやすい食品をオンラインで販売し、配送する場合、輸送中に溶ける恐れがある。そのため、Amazonのフルフィルメントサービスでは溶ける可能性がある商品(チョコレート、グミ、ゼリー、ワックスを使用する商品など)は10月16日から4月14日までしか受け付けない。

しかし、買い物客が何でもオンラインで買えることを期待している現代において、食品の新興企業は暑さを克服する方法を見つけることを迫られている。

輸送と気候に関するアクションプラン

若い新興企業向けのプレイブックは、食品ブランドがこのような問題を回避するためにどのような計画を立てればよいのか、そのヒントを与えてくれる。ロボチョコレート(Lovo Chocolate)は今春、自社のD2CサイトとAmazonで販売を開始した。現在、スイス製のアーモンドミルク、ヘーゼルナッツミルク、オーツミルク、ココナッツミルクのチョコレートなどを販売している。同社は、最初の夏を迎えるにあたり、「溶けない」ための輸送と気候に関する計画を立てた。この計画には、ヒートマップの作成、断熱パッケージ、遠い地域に配送する注文の特別配送など、さまざまなリスク軽減策が含まれている。同社によると、このアクションプランのおかげで、4月以来、配送の99%を損害なくシーズンを開始することができたという。

植物由来で乳製品を含まないチョコレートは近年になって人気が高まっているが、このような商品を取り扱っているブランドの大半はダークチョコレートに特化している。ロボのプレジデント兼CEOを務めるサイモン・レスター氏によレバ、同社は、ミルクチョコレートの方を好んでいるが、植物由来のチョコレートにも関心を抱いているアメリカ人の多くを獲得しようとしている。「米国の小売店で売られているチョコレートの約80%はミルクチョコレートだ」と、同氏は述べている。

しかし、食感や味の問題から、乳製品を含まないチョコレートを作るのは難しいと同氏は付け加えた。「当社は何年にもわたって検討して、代替ミルクを使用することに落ち着いた」と述べている。小売に参入する前に、オンラインで話題を呼んでブランドを確立するため、同社はオンライン販売からスタートした。

10年の経験から学ぶ

問題となったのは、チョコレートは配達がもっとも難しい商品のひとつだということだ。同氏によると、チョコレートは通常、華氏80〜85度(摂氏約26.7〜29.4度)で柔らかくなりはじめ、華氏86〜93度(摂氏約30.0〜33.9度)程度で溶けてしまう。2023年は記録的な猛暑になると予測されているため、同社はオンラインビジネスを最適に運用するための物流計画を考えた。1年の半分にわたってAmazonのフルフィルメントサービスを使用する。しかし残りの6カ月は「傷みやすい商品を売り手が自ら発送する必要がある」と、レスター氏は語る。

レスター氏は、妻で共同創設者のコートニー・バチニッチ氏とともに、創業10年になるアレルギー対応チョコレートブランド、パスチャショコラ(Pascha Chocolat)のオーナーでもある。夏のプロトコルを形作る戦術の多くは、創設者である彼らが過去数年にわたってパスチャのデジタルビジネスを作り上げた過去の経験からきている。この経験を通して、彼らは何がうまくいき、何がうまくいかないのかについて、深い見識を獲得した。

「3年前、当社はスタイロフォーム(発泡スチロールの断熱材)とジェル状保冷剤を使用していた。ほとんどの場合はこれでうまくいくのだが、環境には悪いもので、人々はこれらのリサイクルを行いたがらなかった」と、同氏は述べる。このようなフィードバックと、より優れた保冷断熱材料を調査した結果から、ロボは最大4日間にわたって冷却を維持できる断熱セルロースライナーを使いはじめるようになった。

配送途中の損害を減らす

そのほかの方針は、配送の途中で傷むリスクを低減することを目的としたものだ。同社は年間を通して、米国全体にわたるヒートマッピングも活用している。配送の途中のどこかで箱が華氏71度(摂氏約21.7度)を超える場所に置かれると、傷むリスクがある。同社によると、10月から3月までの寒い月のあいだは、温暖な州への配送以外の注文はすべて、1週間を通して地上で配送される。暖かい地域への配送の場合、週末の配送前に配送ルートの気温をチェックしてから出荷し、商品が配送トラックの中で溶けてしまうのを回避する。

暖かい月のあいだ、ロボは月曜日から水曜日にのみ出荷し、最大2日間の輸送時間がかかる。場合によってはそれ以上待たされることもあるが、こうすることで、輸送途中や週末に荷物が滞留することを防いでいる。

これまで、この配送計画の成功率は約98%で、ほとんどの損害はパッケージが48時間以上太陽にさらされる場所に置かれることによるものだと、レスター氏は語る。しかし、これらの成果を得るにはそれなりのコストがかかると同氏は述べる。D2Cでの販売をより現実的にするため、同社のウェブサイトでは、送料無料になるのは最低50ドル(約7200円)からとなっている。「オンラインの注文でお急ぎ便の料金を払ったことがあるなら、小売業者がどれだけ割高な手数料を加算しているかわかるだろう」と、同氏は述べている。

コストの負担

しかし、同社は現在のところ、顧客を振り向かせ、ファンを増やすため、このコストを負担している。「当社はこれをマーケティングの費用だと考えている。しかしもちろん、我々のコントロール外のものも存在する」と、レスター氏は述べている。

食料ブランドにとって、オンラインフルフィルメントは常に困難な課題だった。パッケージサプライヤーのU.S.パッケージング・アンド・ラッピング(U.S. Packaging and Wrapping)のパッケージング担当役員を務めるチャールズ・ヘイバーフィールド氏は、多くの企業にとっては通常、配送部分が大きな障害になるという。これは、たとえば食材宅配サービスのような損失が出る事業で立証されてきた。

「ドライバーに荷物が渡ってしまうと、そのあとは会社のコントロール外になる。注文を完璧に梱包したとしても、最終的には外部の環境がリスクとなり得る」と、同氏は述べている。

たとえば、注文が完璧な状態で到着しても、「人々は小売業者ほど信頼していないし、パッケージが雨のなかに放置されることもあるかもしれない」と、同氏は述べる。菓子などのオンライン食品ビジネスで利益を出すには、「コストを負担するとともに、顧客を満足させ続けるための適切なバランスを見つける必要がある」と、同氏は付け加えている。

ロボは、新しい顧客が商品を気に入り、配送に余分の金額を払うことを許容するようになってから、そのロイヤルティを活用するため、この夏の熱対策プロトコルに特化すると、レスター氏は述べる。「計画でもっとも重要なのは、配送における誤りを最小限に抑えることだ」と、同氏は述べている。

[原文:How Lovo Chocolate beats the heat and keeps its online orders from melting]

Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Lovo

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