Cookieレスを迎える今こそ日本企業が CDP 活用に舵を切るべき理由: ティーリアム ジャパン安部氏、菅原氏に聞く

DIGIDAY

Cookieレスを迎えようとしている今、企業はこぞってファーストパーティデータの活用に歩を進めている。この動きのなかでトピックとなっているのが、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)の存在だ。特に日本国内においては、サードパーティCookie規制への対応や分散化した個人データを一元化するというリスクヘッジと、ファーストパーティデータを使ったマーケティング施策への期待という観点から需要が高まっている。

しかし、「必ずしも取得したデータが有効活用されているとは限らないのが現状だ」と指摘するのは、2015年から日本でCDPを提供するティーリアムジャパン株式会社のシニア・マーケティング・ディレクター安部知雄氏だ。「CDPはリアルタイムなデータ活用が可能だが、うまく使えなければ、その価値を発揮できない。その結果、CDPに蓄積されたデータは、顧客にアプローチするタイミングを逸してしまう」という。同社でセールスパートナーを務める菅原健三氏も、「古いデータをもとにしてリアルタイムの施策はできないが、最新のデータがあれば施策の幅を広げることができる」とCDP活用の可能性について説明する。

では具体的に、日本におけるデータ活用の現状はどのようなものか、また、CDP本来の価値はどこにあり、どう活用するべきなのか。安部氏、菅原氏とともに考える。

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――まず、CDPとは何か教えてほしい。

菅原健三(以下、菅原) 一言で言えば「顧客に関するデータのプラットフォーム」だが、この概念は新しいものではない。同様の概念を表すものとして、以前はCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)という言葉が使われてきたが、その後、広告分野を中心にDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)と呼ばれることも多かった。Cookieレス時代を迎えようとしている今、カスタマーデータプラットフォーム、すなわちCDPという言葉が使われるようになってきたということだ。すべてに共通するコンセプトは、顧客に関するデータを格納し、解像度を上げて理解するための仕組みということになるが、昔のCRMとは違う点がある。それは、CDPに求められるのが、オンラインとオフラインのデータを統合したうえでの深い顧客理解の実現と、それに基づいたメール配信や広告の出し分けといったアクションにまでつなげる、ということだ。

――なるほど。ではなぜ今、CDPが注目されているのだろうか?

安部知雄(以下、安部) 企業にとっての「リスク」と「機会」の2点が主な理由としてあり、加えてニーズの変化が挙げられる。まずリスクというのは、各種法規制への抵触を避けるという意味合いになるが、CDPを活用することで、基本的に個人に関するデータは一元化される。その結果、さまざまなツールがバラバラに個人データを保有している場合と比較して、管理や法規制への対応がしやすくなるので、リスク管理の意識が高い企業はCDPを利用しようとなる。

実際、我々はCDP導入企業を対象にさまざまな調査を実施し、2023年3月にその結果を「CDP最新動向」というレポートにして発表したが、グローバルな企業と比較すると、日本の企業はよりこの規制変更に懸念を示していることがわかっている。68%の企業が規制変更にどのような対応をとるべきか悩んでいたのだ。

もうひとつの「機会」だが、CDPには、オンライン、オフラインを問わず、絶えず顧客データが蓄積されていく。そしてそのデータを使って実施するアプローチが適切であれば、しっかりコンバージョンすることが見えてきている。

ここでキーワードになるのが、コンバージョンAPI(Cookieを使わずに広告の効果測定を行う技術)だ。Cookieレスに向けて、企業はファーストパーティデータを使った施策を進めることとなるが、その場合、ユーザーの行動履歴が取れないため、広告の効果測定ができない。しかしCDPを使ってコンバージョンAPIをつなぐことで、サーバー間でのやりとりが可能になるので、効果測定が実現する。そのデータをCDPに入れ込み、顧客の興味関心、趣味趣向を分析することで、より精緻なアプローチが可能になる。これが「機会」だ。このように、ネガティブな守りの「リスク対応」と攻めの「機会を掴む」の認識が進んできたことで、CDPが盛り上がりを見せているのだと思う。

菅原 ニーズの変化についてはまず、顧客データを統合するニーズが高まってきた。マーケティングサービスの種類が増えた結果、それに対応するように顧客データも分散していった。しかし、しっかり顧客に寄り添うためには、その状態では難しい。それぞれのデータが、顧客のある一面しか捉えていない場合が往々にしてあるからだ。だから、CDPによって分散したデータを統合、一体化して、より深い顧客理解を進めようとなっているのだ。

安部 あとはもうひとつ、ベスト・オブ・ブリード(*)へのニーズも大きい。ただそれぞれのツールで設計思想が違えば、やはり必要なデータも分散されてしまう。そのようなとき、CDPであれば、製品のいいとこ取りをしつつ、データの一体性を担保できる。

(*)ベスト・オブ・ブリード(Best Of Breed)
いろいろな機能を1社の製品でまかなうのではなく、機能ごとに、最適な製品を採用してオリジナルのプラットフォームを組むこと。たとえば、メール配信はA社の製品、データ分析はB社の製品を使う、など。

――CDPが求められる理由がよくわかった。では現状では、データ活用はどの程度進んでいるのだろうか。

安部 我々から見ると、顧客データを集め、分析し、解像度を上げて理解する、というところで終わってしまっている印象がある。メール配信やコンテンツの出し分けなど、取りうるマーケティング施策はすでに非常に多く、今後、ますます増えていくだろう。しかし、必ずしも取得したデータが有効活用されているとは限らないのが現状で、結果、CDPにどんどんデータが蓄積されていき、データは古くなっていく一方だ。

――なぜそのような状況になっているのだろう?

菅原 課題は2つある。まず、マーケティングのデザインまで含めたデータ統合ができておらず、分析するところがゴールになっているということ。

たとえば分析の結果、自社にとって大切な顧客をランク分けできたとする。しかし、その先のアクションまで考えているケースは少ない。米国の事例などを見ていると、まず目的があって、それにふさわしい形でデータ統合が進んでいく。日本では、まずデータを貯めて分析して、その上で施策を考えようという流れが多い。いざ施策を打とうにも、必要な形のデータがなく、対応が遅れてしまうことになってしまいがちだ。

安部 先に紹介した「CDP最新動向」でも、CDP活用に際して必要なスキルセットはマーケティング戦略だという回答が日本では43%を占めている。しかし、他国ではむしろ必要とされるのは、データを扱うスキルだという回答の方が多い。最初にマーケティング戦略があって、そこに顧客データを当てていくという風に発想を切り替えないと、CDPを導入する意味はない。少しずつ日本の企業もその重要性に気づき始めている。いざCDPを運用しようとして、はたと「マーケティング戦略がないと、CDPの有効活用ができないのではないか?」ということがわかり始めたというところではないか。

CDP活用に際して必要なスキルセットは?という問いに対してもっとも多かったのが、「マーケティング戦略」だった

(CDP最新動向レポート【2023年版】より)調査対象:売上$100M(約130億円)以上のB2CおよびB2B企業でマーケティング、オペレーション、IT、データ・アナリティクスなどの部⾨に所属し、世界各国1200⼈以上の顧客データを扱うプロフェッショナルに調査/⽶国、イギリス、豪州、フランス、スペイン、ドイツ、シンガポール、UAE、ニュージーランド、⽇本の計10カ国で実施。

――「データはあるが、うまく活用できない」というのは、日本企業にとって永遠の課題のようにも思える。

安部 だからこそ「データは使えば使うほど価値が出る」ということを知ってほしい。溜め込んでいけば古くて使えないデータになってしまう。特にCDPの場合、仕組み上、リアルタイムなデータ活用が可能だが、うまく使えなければ、その価値を発揮できない。

顧客データを無形資産として考えた場合、データがフレッシュなうちに使えば使うほど価値が出る。たとえば、たまたま店舗に立ち寄って商品を購入した旅行者に対し、その場でクーポンを配信できれば、新たな購買につながるかもしれない。しかし、そのタイミングが遅れ、3日後のクーポン配信となったら、旅行者はすでに地元に帰っていて、購買の機会は期待できない可能性が高い。

データは膨大にあるのだから、施策はいくらでも打てる。ただ、そこでネックとなるのが、データ活用が進まない課題の2つ目でもあるが、データとマーケティングツールのつなぎ込みが難しいということだ。一般的には、データとマーケティングツールをつなぐためにはAPIと言われるプログラムを書かなければならないが、それは、マーケターにはできないので、エンジニアに依頼することになる。するとそれだけで、タイムラグが発生する。

本来であれば週に20件、30件という施策を実施できるかもしれないのに、ツールとのつなぎ込みがうまくいかないので数件で止めているという悩みを抱えている企業もたくさんある。

――なるほど。ではその中で、ティーリアムの特徴はどのような点にあるのか。

菅原 オンラインとオフラインのデータを統合して、さらに一般ユーザーにとってネックとなるマーケティングツールとの連携が容易にできるところが大きなポイントだ。また、顧客データについては「バッジを付与する」という形で、より精緻かつ柔軟に管理できる。

――バッジとは?

菅原 たとえばオンラインショッピングで、カートに商品を入れたけれど購入せずに離脱し、その後、同じ商品のページを閲覧したユーザーがいたとする。ティーリアムでは、そのユーザーには「カートに商品を入れたが、そこで離脱」「商品ページを閲覧している」という2つの「バッジ」を付与する。そして、この2つのバッジを持つユーザーに対して「レコメンドメールを配信するという」というシナリオに対するアクションを紐づけておけば、人の手をわずらわせることなく、オートメーションで施策を打てるようになるのだ。

――その「バッジ」とは、ユーザーが新しい行動をするたびに付与されるものか?

菅原 その通りだ。だから、一定の条件のもとでユーザーをセグメンテーションするよりも柔軟にターゲットを選ぶことができる。もちろん、バッジの付与は、オンライン上だけでなく、店舗などのオフラインの場合でも実現できる。そしてユーザーデータはリアルタイムで書き換えられ、必要に応じたアクションもリアルタイムで実施できる。これを人の手でやろうとすると、とても大変だ。

先に話したように、蓄積されたデータと、それを活用するためのマーケティングツールをつなぐのは実はかなり苦労するところだが、ティーリアムならプルダウンで接続先を選ぶだけで、Googleでも、Facebookでも、Adobeでも、エンジニアに頼ることなく、マーケター自身がつなぐことができる。言うなれば、APIの代わりをティーリアムがやっているということだ。

そしていま現在、データをつなぎ込みができるサービスは約1300種類ある。

安部 データの蓄積をメインとするCDPもあれば、施策をメインとするCDPもある。しかし、我々のCDPは、ユーザーの新しい行動に対して常にバッジを付与していくため、常にデータが最新の状態にあり、それをリアルタイムに施策側に供給していく特長を持つ。つまり、データと施策を連携するエンジンのような役割を果たしている。このようなことを実現しているのはティーリアムだけだ。その意味で、ティーリアムは「唯一無二のCDP」だと自負している。

しかも、先ほどお話ししたベスト・オブ・ブリードも可能なので、ユーザーが任意のマーケティングツールを指定すれば、ティーリアムが繋ぎこむ。結果、すでに投資済みで、社内で使っているツールを無駄にせず活用でき、かつ施策の数も増やせる。

一元化したデータをリアルタイムに取得・分析し、リアルタイムに各施策に落とし込んでいくのがティーリアムのCDPだ

そしてもうひとつポイントになるのが、ティーリアムの「中立性」だ。一般的に同じベンダー間でのデータの受け渡しは可能であるが、ベンダーが異なる際にデータ連携は課題となる。しかしティーリアムであれば、それができる。さまざまなデータソースから集めてきたデータをさまざまな広告媒体と繋ぐことができ、その結果、広告の精度も向上する。全世界で、ティーリアムのコンバージョンAPIコネクタを使用している企業がすでに500を超えているため、その期待値の高さが伺える。

――リアルタイム性など、ティーリアムの有効性がわかる事例を教えてほしい。

安部 航空会社では、お客様のWeb上の行動履歴に応じたコンテンツの出し分けなどを行っている。ロス行きのチケットを検索されていて購入しなかったお客様に、次の来訪時にはロス行き便をお勧めするバナーを出すようなパーソナライズ施策を数多く実施されている。また、たとえば、普段はビジネス出張で利用している人でも、家族旅行をする時には行動が変わるものだ。ティーリアムでは前述のリアルタイムでのバッジ機能があるため、動的にそのお客様の行動に対するバッジを付与、変更できる。ビジネスパーソン属性のお客様が時間帯や閲覧コンテンツから家族旅行を計画していると判断し「家族旅行バッジ」が付与された瞬間、レンタカーの推奨を小型車からワンボックス車に変えるような施策を回せるのだ。

さらに、データソース側と施策ツール側とのつなぎ込みが容易なので、ひとつの施策が奏功しなければ新たな施策をどんどん試すことができる。従来の手作業では20パターンしか試すことができないとしても、ティーリアムを使えばその10倍の施策をリアルタイムで打つことができる。

これによって「蓄積はしているが有効活用できていない」データを、どんどん活用することができる。

――システムを自動化することで、マーケターが本来するべきことに時間を割くことができるようにも思う。

安部 それもティーリアムの魅力であると言える。たとえばメールのABテストを実施するのであれば、そのメール内容をもっとクリエイティブにすること、いかにアクションを起こしてもらえるかを考えることに、マーケターは時間を費やすべきだ。仮説をもとにシナリオをつくり、施策を実施して効果検証する。そのプロセスで自動化できる部分はどんどん自動化する。マーケターは技術的な側面ばかりに振り回されるべきではない。

菅原 もうひとつ付け加えると「リアルタイムな施策はしないからCDPは必要ない」という企業であっても、データが最新であることを否定する理由はない。ユーザーのアクションから一定時間をおいたメール配信のように、必ずしもリアルタイム性が求められない施策に取り組んでいる企業だとしても、最新のデータがあれば、新たな打ち手を増やすことはできるはずだ。古いデータをもとにしてリアルタイムの施策はできないが、最新のデータがあれば施策の幅を広げることができる。

安部 サードパーティーCookieが廃止されたことで、コンバージョンAPIの活用は、最適な広告配信とその効果測定に欠かせない。それをティーリアムであれば、簡単に利用できるということだ。もちろん顧客の同意を取得・管理する機能などによって法規制もクリアしているので、その点も大きな利点である。

――最後に、ティーリアムの今後の展望を聞かせてほしい。

安部 今後ますます増える一方のデータソースと施策ツールとの連携はさらに拡充していく。たとえば、LINEのように、特に日本でのプレゼンスの大きいものなど、日本市場により合った形での連携を深めていきたい。

今までCDPというと、データの蓄積や統合に主眼があったが、日本企業も次第にデータを活用した施策に目が向き始めている。そこがまさにティーリアムの強みでもある。これからさまざまなパートナーとの連携を強化して、ティーリアムの存在感を高めていきたい。

菅原 まさにその通りで、日本のマーケターには、データ活用という面で提案したいことがまだまだたくさんある。しっかりと彼らに寄り添いながら、より多くの成功事例をつくっていきたいと思う。

安部知雄(写真右)
ティーリアムジャパン株式会社
シニア・マーケティング・ディレクター

国内⼤⼿鉄鋼メーカーで世界各国への機械販売に従事。世界市場におけるマーケティング⼒やコミュニケーション⼒の重要性を強く感じ、マーケティングコミュニケーションエージェンシーに転職。外資系企業の⽇本参⼊を多数⽀援し、デル、クリックテック・ジャパン、サイトコアでの広報、マーケティング統括を経て、2022年12⽉より現職。

菅原健三
ティーリアムジャパン株式会社
パートナーセールス

株式会社IMJ(現 Accenture)、SAP株式会社でデータ活用による企業の業務プロセス改善、マーケティング戦略の支援に従事。2013年より日本オラクル株式会社で部長としてマーケティングクラウド事業の立ち上げ。現在はティーリアムジャパンでパートナービジネスをリードし企業のCDP活用を支援する。

Sponsored by ティーリアム

Written by DIGIDAY Brand STUDIO(滝口雅志)
Photo by 合田和弘

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