パブリッシャーのNFT二次市場戦略:投資対象としての魅力が不十分な場合は?

DIGIDAY

フォーブス(Forbes)は4月11日、毎年発表している世界長者番付(World’s Billionaire List)のプレーオフとして、最新のNFTコレクションであるフォーブス・バーチャルNFTビリオネアズ(Forbes Virtual NFT Billionaires)を購読者向けに先行リリースした。

パブリッシャーの観点から、このリリースは理にかなっているように見える。このコレクションは100人のビリオネアのイラストで構成されており、架空の純資産(株価実績と連動して毎日更新)によってランキングが決まる。理論的には、NFTの購入者はランキングに応じてデジタル資産に付加価値を与えることができ、フォーブスが数十年にわたって運営してきたリストとのつながりを実感できる。

最高技術責任者のバディム・スピツキー氏によれば、フォーブスの購読者を対象とした最初の先行販売では、1個当たり0.25ETH(約765ドル)のNFTが1日以内に完売し、25ETH(約7万7000ドル)の売上を計上したという。フォーブスは購読者数を公表していないが、アライアンス・フォー・オーディティッド・メディア(Alliance for Audited Media)は2021年12月31日時点の数字として、有料購読者数と認証済み購読者数の合計は50万6000人超だと報告している。

発売から10日ほど経過した時点で、取引の観点から言えば、再販市場はそれほど活発ではない。FTX.USに出品されたコレクションのアクティビティ履歴とオープンシー(OpenSea)の取引履歴によれば、再販されたNFTは100個中14個だ。しかし、再販されたNFTの平均価格は元の販売価格の6.9倍に達しており、本記事の公開時点で5237ドル(1.71ETH)だった。そのうちふたつはオープンシーのNFTマーケットプレイスで1万719ドル(3.5ETH)と1万1331ドル(3.5ETH)の値が付いている。

これにより、フォーブス・バーチャルNFTビリオネアズの二次市場における価値は23.99ETH(本記事の公開時点で7万3000ドル超)で、最初の販売で計上した売上とほぼ同じになる。フォーブスは再販で10%のロイヤリティを得ているが、2021年とは状況が異なるため、フォーブスの再販市場をNFT市場の全体像と比較するのは難しい。

NFT市場が減速しているのは確か

NFTバブルがはじけたと言うのは時期尚早かもしれないが、データを見る限り、市場がいくらか減速していることは確かだ。ノンファンジブル・コム(NonFungible.com)のマーケットトラッカーによれば、4月20日の時点で、NFTの平均販売価格は約1700ドル(約22万円)だ。ブルームバーグ(Bloomberg)は3月、1月2日に記録した史上最高値6900ドル(約90万円)からの下落を報じている。

テクノロジーとメディアを専門とするアドバンス・ローカル(Advance Local)の社内インキュベーター、アルファ・グループ(Alpha Group)のシニアディレクターで、サブテクスト(Subtext)の共同創業者でもあるデイビッド・コーン氏は「炭鉱のカナリア。カナリアというより、カラスか巨大なダチョウの方が適切だろうか。ジャック・ドーシー氏の最初のツイートを転売する試みは、そこにある本当の価値は何かという疑問に直接答えている」と話す。

Twitterの共同創業者であるドーシー氏の最初のツイートは2021年3月、290万ドル(約3億7950万円)相当で購入された。それから約1年後の4月、NFTの所有者である起業家のシーナ・エスタビ氏が4800万ドル(約62億8100万円)でオークションにかけた。コインデスク(CoinDesk)によれば、オークション終了時の最高入札額はわずか0.09ETH(当時の相場で約277ドル)だった。

しかし、再販市場で好調を維持しているNFTコレクションは、投資対象としての可能性に加えて、コミュニティ意識や特別感を提供するものだ。その一例が限定のNFTコレクションを販売するボアード・エイプ・ヨット・クラブ(Bored Ape Yacht Club)だ。ノンファンジブル・コムのランキングで、4月22日までの1週間にもっとも高値が付いたNFTのトップ10に入り、1個平均47万5000ドル(約6220万円)近い価格で再販されている。

NFT売上の60%は二次市場から

フォーブスと同じパブリッシャーのタイム(Time)はボアード・エイプ・ヨット・クラブの前例に倣い、タイムピーシーズ(TIMEPieces)というグループをつくった。プレジデントのキース・グロスマン氏によれば、Web3熱狂的支持者約4万人から成るグループで、すでに1万2000人がNFTを購入しているという。グロスマン氏はNFTの販売によって数千万ドル単位の利益が生まれていると補足したが、正確な金額については言及を避けた。

グロスマン氏によれば、オーガニックに構築されたコミュニティではあるが、Discord(ディスコード)を使ったプライベートなコミュニティイベント、カンファレンスの入場券を手に入れる機会、新しいプロジェクトについて学び、タイムのチームやNFTのアーティストと話すことができる週1回のタウンホールといった特典も用意されている。さらに、NFTの保有者は暗号資産ウォレットをタイム・コム(Time.com)とひも付ければ、ボーナスとして自動的にデジタル購読者になる。

また、NFTの購入だけがグループへの参加方法ではないものの、グループに参加することで、NFTの発表、発売、再販への期待が高まることがわかったとグロスマン氏は話している。

タイムのデジタル担当プレジデント、バラト・クリシュ氏は米DIGIDAYの取材に対し、NFTによる売上の60%は二次市場から得ているものだと述べている。ただし、正確な金額は不明だ。

「パブリッシャーはコミュニティのキュレーターであり、キュレーションは、アートであるNFTの価値によってではなく、そのトーンや(コミュニティとの)情緒的なつながり、そして、編集の切り口によって行われる」とコーン氏は話す。

「実用性とエンタメ性をひとつに」

フォーブスはまだNFTプロジェクトの実用的な部分が欠けており、純粋に収益を追求するというより、オーディエンスのエンゲージメントを高めるエンターテインメント性に主眼を置いているとスピツキー氏は認めている。イベントのチケットやメンバーシップ製品のアクセスキーにするなど、NFTに実用性を持たせることが、NFTやブロックチェーンの実験をビジネスに変える道筋になりそうだ。

「実用性とエンターテインメント性がひとつになれば」、NFTは仮想世界やメタバースでのイベントのチケットになり、メンバーシップのアクセスキーにもなる。そして、最終的には、「Web2とWeb3の境界線を本当の意味でひとつにできる」とスピツキー氏は話す。

[原文:Publishers’ secondary market strategy: What happens when the monetary appeal of NFTs isn’t enough?

Kayleigh Barber(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:猿渡さとみ)
Image by Ivy Liu

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