警告を無視したタイタニックと同じ悲劇。
事故に遭ったタイタニック観光潜水艇Taitanの運営会社OceanGateは、これまで再三｢安全ではない｣と指摘を受け続けていたことがわかりました。
キャメロン監督｢最悪の時代が起こる｣
OceanGateのCEOを含む5名全員の乗客が圧死しました。映画『タイタニック』のジェームズ・キャメロン監督はBBCニュースの取材に対して、アメリカ沿岸警備隊が潜水艇との通信が途切れたと最初に発表した際、最悪の事態が起こると思っていたと話しました。
アメリカ沿岸警備隊は、先週木曜に開いた記者会見で潜水艇Titanの破片がタイタニック号から500mほどの位置で発見されたと発表。
破片の状態から｢壊滅的な圧壊｣があったと推測されると見解をしめしました。
キャメロン監督は
直感した。潜水艇が海底3500メートル地点で通信が途切れた時点で、何が起こったのかがわかった。その深さで通信が途切れたということの意味をみな数分で理解した。だから捜索はなかった。
とコメントしています。アメリカ海軍もその意味をわかっていたそうです。
Titanの通信が途切れた場所の音響を調査すると、海底から大きな破裂音を検知。海軍はその音からTitanが圧壊したものと考え、沿岸警備隊にそれを報告。捜索の範囲を限定したと言われています。
適切なテストが行なわれていなかった
OceanGateはこれまでにTitanの危険性を何度も指摘されていて、2018年には当時従業員だったDavid Lochridgeさんは潜水艇がタイタニック号と同じ水深まで潜るのに安全かどうかの適切なテストが行なわれていない、と内部告発していました。
対するOceanGateは、機密情報を漏らしたとLochridgeさんを解雇しています。不当解雇だと裁判が行なわれ、法廷でLochridgeさんは
お金を払っている乗客たちは、潜水艇が十分なテストが行なわれておらず、着火する恐れのある素材が使われ、まだ実験段階であることを知ることも、知らされることもないのです。
とコメントしています。
同じ2018年には数十人の専門家たちがOceanGateのCEOに対して、圧壊の危険があると安全性に警鐘を鳴らしていました。
キャメロン監督はOceanGateが許可を得ていないことは知らなかったとし
OceanGateが使用している技術に関してとても懐疑的だった。自分ならあの潜水艇には乗らない。
と話しています。
タイタニックは構造が悪い船
ちなみにキャメロン監督はこれまで30回以上も潜水艇に乗りタイタニックを訪れていて、ナショナル ジオグラフィック協会と時計メーカーのロレックスと協力して潜水艇の制作もするほど、潜水艇とタイタニックについて熟知しています。
今回の事故はタイタニックについて研究をしていた私のような人たちには、ただ警告を無視しただけと捉えられてもしょうがないでしょう。タイタニックが海底に沈んでいる理由は、船が重いからではありません。構造の悪い船だからです。船長は氷山があることを知りながら無視をした。月明かりのない夜に、船長は無視して進み続けたのです。
と今回の事故と1912年のタイタニック号の沈没事故が警告があったのに無視して起こった惨事という類似点があるとコメントしています。
懸念しつつも乗船した結果
息子と一緒に乗船したパキスタン人の実業家シャザダ・ダウード氏はタイタニック号の観覧についてとても楽しみにしていた一方、息子さんのほうは不安があると事前に話していたそうです。
ダウード氏の妹さんは、ダウード氏はタイタニック号にずっと情熱を持っていて、一人3500万円のチケットを購入したときには驚きはなかったと言います。
今回の出航が父の日だったことから、ダウード氏の息子さんはお父さんに喜んでほしいとの思いで懸念があるなか参加を決めたということです。
ダウード氏の妹さんは
カウントダウンされながら悪い映画を見ているような気持ちでした。でも一体何のためにカウントダウンされているのかわからないまま。彼らのことを考えるだけで息ができなくなります。息ができない状況になるなんて、思っても見ませんでした。こんな経験今までにしたことありません。
と悲しみを表しています。
また、2022年にAmazonのCEOジェフ・ベゾスが設立したBlue Originで宇宙へ行った経験のあるフランスの元海軍でタイタニック号の専門家でもあるポールアンリ・ナルジョレ氏と実業家のハミシュ・ハーディング氏の両人も、今回の潜水艇に乗り込み死亡しました。
懸念要素があり、警告を受けていたにも関わらず運行し、悲劇を生んでしまった今回の事故、調査は続いていきそうです。
