ランニングシューズ は、リテールブランドたちの新たな戦場:ルルレモンやオールバーズの賭けの行方

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ランニングシューズは、リテールブランド間のもっとも新しい戦場だ。そして、ルルレモン(Lululemon)はその戦場に新しく参入し、女性用スニーカーの商品ラインナップのリリースを3月8日の国際女性デーにて発表、同月22日に発売開始した。

ルルレモンのこの動きは、パフォーマンスシューズ分野に参入する企業が増加するのを受けたものだ。D2Cブランドのオールバーズ(Allbirds)はサステイナブルなカジュアルフットウェアの商品ラインで知られているが、2020年にランニングシューズを発売した。さらに最近の話として、クロスフィット(CrossFit)ギア付きのスニーカーとアパレルで知られるフィットネス用品ブランドのノーブル(Nobull)は、同社初のパフォーマンスランニングシューズをリリースした。同社はこの商品ラインに合わせてバーチャルランナークラブも発足させた。

ランニングの人気が高まっていくことが予想されるなかで、これらのブランドはナイキ(Nike)やアディダス(Adidas)など、すでに定評のあるフットウェアメーカーから市場シェアを奪い取ることを狙っている。一方で、ルルレモンやオールバーズなどの企業も関連のイニシアチブや商品、たとえばバーチャルランニングクラブや、フィットネス用アパレルをリリースしたり、ランニングに特化したほかの小売業者と提携したりすることで、ランナーに選ばれる業者として自社の地位を確立しようと試みている。

大手業者から市場シェアを奪い取る

エヌピーディーグループ(The NPD Group)のバイスプレジデントとシニア業界アドバイザーを務めるマット・パウエル氏は、ランニングカテゴリーの成長はパンデミック中に、主にランニングへの興味の広がりから、爆発的に加速したと語る。

2021年のニールソン・アンド・ワールド・アスレチック・レポート(Nielson and World Athletics report)によれば、調査対象となったランナーの1/5以上は、パンデミックがはじまったあとで以前よりも頻繁に走るようになったと回答している。この調査では、回答者の大多数は、パンデミックがやがて終了しても、さらに頻繁に走ることを計画していることも示されている。

「ランニングは安価で、簡単に行え、ソーシャルディスタンスも維持できる」とパウエル氏は述べ、同社のアスレチックフットウェアを多くの消費者が買い求めるようになった理由であると言及している。ランニングスニーカーはウォーキングエクササイズ用や、ファッションアイテムとしても履くことができることから人気になったとも同氏は語る。「そのため、ルルレモンのようなブランドが、その市場シェアの一部を獲得したいと考えるのは当然のことだ」と同氏は付け加える。

コンサルティング企業のカーニー(Kearney)のパートナーであるブライアン・エーリッヒ氏は、アスレチックフットウェアは特に、ナイキやアディダスのような大手企業に独占されている傾向があると語る。2021年の時点で、ナイキのアスレチックフットウェアの売上は全世界の総市場の40%近くを占めていた。

エーリッヒ氏は、ランニングシューズは小売業者が新しいカテゴリーに参入するための新たな方法だと付け加えている。したがって同氏によれば、ヨガやフィットネス用アパレルの大きな顧客ベースをすでに持っているルルレモンのようなブランドにとって、シューズは事業拡大における次の選択としては当然のものだ。ルルレモンがめざす、総合的なフィットネスとライフスタイルのブランドになるという目標に向けた次の一歩がフットウェアだと、エーリッヒ氏は説明している。同社が2020年にコネクテッドフィットネスブランドのミラー(Mirror)を買収したのは、このロードマップを示すまた別の、最近の例だ。

またパウエル氏は、自社のデザインを女性の足に合わせて特に作られたものとしてプロモーションすることで、女性用スニーカーのカテゴリーで競合するというルルレモンの野心についても指摘している。同社は国際女性デーに行った発表で、ほかのパフォーマンスアパレルを20年以上にわたってデザインしてきた経験を、新しいシューズの商品ラインのプロモーションに活用している。

市場参入への高いハードル

しかし、スニーカー事業の開始と成長は大きな仕事だ。

「パフォーマンスシューズを作るより、ショーツを作るほうがずっと簡単だ」とパウエル氏は述べる。特に、ナイキやアディダスのような企業と競合しようとする場合はなおさらだ。しかしルルレモンやオールバーズのような大手ブランドにとって、「その挑戦は不可能ではないし、投資するだけの価値はある」と同氏は語る。その難しさの一部はアスレチックフットウェアの開発フェーズで、適切な技術的素材を入手して適合をテストするため、高い技術を持つデザイナーが必要となる。このプロセスには何年も要することがあると、同氏は説明している。

さらに、定評のある企業がパンデミックのあいだに新しい顧客を獲得して成功していることから、この分野で成長するための競合も熾烈なものだ。

バークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway)が保有しているランニングブランドのブルックス(Brooks)は、パンデミック中に大きな成長を遂げたと報告した。フットウェアのブランドである同社は、2021年初頭に年間売上高が5億ドル(約595億円)に達した。同様に、ランニングシューズブランドのホカオネオネ(Hoka One One)は、過去数年間に自社のスニーカー商品ラインの支持者を作り上げた。同社は会計年度2020年において収益が62%増加し、5億7100万ドル(約679億円)に達したことを報告している。さらに、アシックス(Asics)などレガシーランニングブランドも最近、ランナー向け商品の売上増加を報告している。

このような状況で他社より抜きん出るため、オールバーズなどのブランドも定評のある小売業者と提携し、自社のフィットネス商品の認知を広めようと試みている。オールバーズは過去にノードストローム(Nordstrom)と提携したことがあるが、主体は依然としてD2Cだった。しかし現在、パフォーマンスカテゴリーにおける同ブランドへの「信頼性」を強化するため、卸売の機会拡充を探求していると、共同創設者でCEOを務めるジョーイ・ツウィリンガー氏は2月に行われたオールバーズの第4四半期の決算発表で語った。

ツウィリンガー氏は次のように述べている。「消費者が長年のブランクのあとで、ひさしぶりにランニングに復帰しようとしていると考えよう。消費者は店舗に行き、身体に負担をかけず、負傷の原因にならないような、エントリーレベルのランニングシューズを探そうとするだろう。このようなとき信頼性は非常に重要だ。このような消費者は、何が市場で最高のものか、どのような新商品があるか、最新のテクノロジーは何かといったことを、選んだ店舗の販売員に訊ねるだろう」。

「カジュアルフットウェアとパフォーマンススニーカーではレベルが異なる」と、カーニーのエーリッヒ氏は述べる。同氏は、自社のスニーカーのテクノロジー構築をはじめたばかりのブランドにとって、「アパレルよりもリスクが大きく、正しく行うには多くのテストが必要になる」と主張している。

[原文:Lululemon and Allbirds are betting on running shoes to drive growth]

Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:黒田千聖)
Image via Lululemon

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