ホログラム、AR技術、RFIDタグーー進化する小売ソリューション。ユニクロ、H&M、ZARAの事例

DIGIDAY

RFIDタグ付き衣服、デジタルマネキン、シームレスなチェックアウトなど、小売のイノベーションはショッピング体験の摩擦を取り除き、さらにZ世代の期待を上回っている。

ユニクロ(Uniqlo)、ZARA(ザラ)、H&M(エイチ・アンド・エム)といったブランドはこうした新しいテクノロジーを活用して、商品発見や試着、シームレスなチェックアウト体験を促進する店内小売ソリューションを導入している。

Z世代とミレニアル世代が参加したクラーナ(Klarna)の調査の2023年5月のインサイトによると、Z世代の44%が、将来も現在と同じ方法で服を試着するだろうと考えている。一方、40%はバーチャル試着室の利用、18%は拡張現実の利用、23%は人工知能に頼って自分の体やファッションスタイルにもっとも合う服をアドバイスしてもらうことを期待すると回答している。

デジタル化したタグで小売体験をシームレスに

多くのブランドはこうしたテクノロジーを統合すべく、小売店舗をすでに変化させている。2022年5月、H&MグループのブランドCos(コス)は、ビバリーヒルズの店舗にてスマートミラーを試験的に導入した。このミラーはRFIDタグを活用し、顧客が試着室から出ずに試着するアイテムを注文できるようにしている。RFID(無線周波数識別)は、電磁気技術を使用して位置を追跡する無線技術の一形態である。

一方、9dccやRSTLSS(レストレス)などのWeb3ブランドは、衣類にNFC(近距離無線通信)タグを搭載している。これらのタグはフィジタルなアイテムに機能をもたらし、ドロップの更新を容易にする。また、NFCタグはデジタル認証ウォレットを作成したり、衣服やアクセサリーの組成や素材の原産地を表示するために店舗で使用したりすることもできる。

ラベルやタグがデジタル化されることで、小売体験をより迅速かつシームレスにする方法が提供されるようになった。ファーストリテイリング(Fast Retailing)は2013年に店舗におけるRFID技術のテストを開始、2017年にはユニクロ、セオリー(Theory)、ヘルムートラング(Helmut Lang)を含む全ブランドが値札への使用を始めた。それらを活用すれば、マーチャンダイジングのためにアイテムの追跡が可能となる。2019年、ファーストリテイリングはユニクロの店舗にRFID対応のセルフレジを導入、レジが服のタグを認識し、手動でスキャンすることなく価格が計算される。現在は北米の全店舗と新規オープンの店舗に設置されている。

「RFID技術を使ったセルフレジは、長い行列に並んで待つという、消費者なら誰もが経験したことのある問題の解決に役立つと考えて開発した」と、ファーストリテイリンググループのグローバルマーケティング担当執行役員である中筋雅彦氏は述べている。「何があればレジのプロセスが楽になるかという顧客の視点に立って開発を行った」。これまでのところ、RFIDセルフレジはチェックアウト時間を半分に短縮している。

今年初め、ZARAを所有するインディテックス(Inditex)は、衣服に縫い付けられたチップによる新しいセキュリティ技術を導入し、今年中に店舗のハードタイプの盗難防止タグを段階的に廃止すると発表した。レジでの盗難防止タグの取り外しはプロセスに時間がかかることから行列ができるなど、同ブランドにとって問題点となっていた。インディテックスによると、この新しいタグによってレジの時間が最大50%短縮される。

ホログラムデジタルマネキンとソーシャルフィッティングルーム

H&Mグループも、改装された店舗で新たなリテールイノベーションを試している。5月下旬にリニューアルオープンしたバルセロナのH&M店舗では、テクノロジーを駆使して店内の摩擦を減らし、人を呼び込む工夫をしている。ホログラムのモデルは、試着することなく衣服を視覚的にイメージする新たな方法を顧客に提供した。顧客がQRコードを読み込み、サイズや肌の色など、さまざまなオプションから好みのモデルを選んでアクセスすると、試着する服を選ぶことができる。また店内には、ユーザーによるソーシャルコンテンツ促進のために作られた完全鏡張りの「ソーシャル」フィッティングルームもある。

このホログラムデジタルマネキンとソーシャルフィッティングルームは、未来の小売エージェンシーであるアウトフォーム(Outform)が提供している。

「ファッションでは、自分に似たモデルを見たいと思う人が増えているが、いま、当社はそれを提供している」と、アウトフォームのヨーロッパ・中東・アフリカグループMDサイモン・ハサウェイ氏は述べた。「すべての技術は、小売業者のeコマースサイトやアプリに接続される可能性があるので、アイテムの選択肢は無限の棚のようになるかもしれない」。一方、デジタルマネキンは従来のマネキンよりもかなり高価だが、通常は店頭のヒーローアイテムとして、ディスプレイと便利なサービスの両機能を果たすようになる。

デジタルマネキンとQRコードを通じて、ブランドはオンラインと店頭の両方で顧客の行動を把握することもできる。たとえば、ホログラムマネキンは顧客が接触したアイテムのデータを収集する。「我々はこれをデジタル・ハンドシェイクと呼んでいる。基本的には、物理的な店内における誰かのデータポイントを、より広範な統合されたコマースエコシステムに店頭で瞬間的につなぐことができるというものだ。そのような形で、誰かがそのアイテムを購入しなくても、ソーシャルチャネルを通じてリ・ターゲティングすることが可能になる」。

ARミラーを活用する店舗

拡張現実の試着は、コーチ(Coach)やトミーヒルフィガー(Tommy Hilfiger)などのブランドでテストされているが、多くの顧客から、服が身体のラインをどのように拾うかを確認するには、やはり実物が必要だというフィードバックが寄せられている。コーチはこれまで、その必要がないハンドバッグや視覚効果のテストを主に行っている。

コーチの技術パートナーであるZERO10は、6月14日から17日までパリで開催されるビバテック(Viva Tech)カンファレンスで紹介される予定のワンストップARストアのプロトタイプを発表した。iPadのスクリーンとARミラーで構成されるこのプロトタイプは、店舗の賃貸費用だけでなく、商業スペースのレンタルに関連するその他の経費を削減し、在庫の保管の必要性を最小限に抑え、過剰生産を避けることを目的としている。

ZERO10の創業者であるジョージ・ヤシン氏は、「ブランドはARミラーを既存の店舗に組み込むのではなく、独立したポップアップストアとして活用するという選択肢もある」と述べている。「そうすることで従来の販売場所を超えて顧客に新鮮かつ個性的な体験を提供し、フェスティバル、空港、公共スペースなどさまざまな場所に存在を拡大し、レンタル料やスペースコストを大幅に節約することができる」。

クラーナの調査によると、Z世代の81%とミレニアル世代の75%がARによって店舗での買い物体験が向上すると期待しており、3分の1がこの技術がいずれ小売店全体で標準化されると考えている。

[原文:Holograms, AR technology and RFID tags: The store of the future is taking shape]

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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