インスタグラム がNFT機能を廃止。ファッション業界への影響は?

DIGIDAY

インスタグラムの親会社であるMeta(メタ)は、収益性を重視した広範囲な削減の一環として、3月13日にNFT機能の提供を終了した。この動きがファッションに影響を及ぼすかどうかはMeta次第である。

インスタグラムのNFTツールの変遷

3月13日のツイートで、インスタグラムの親会社であるMetaのコマース責任者、スティーブン・カスリール氏は、MetaはNFT機能を廃止し、代わりにリール(Reels)でのさまざまな収益化方法に注力すると述べた。また、同氏によると、クリエイターやブランドがインスタグラムのメッセージを通じてファンとつながる方法をMetaは模索しているという。

Metaは2022年5月にパイロットプログラムでNFT機能を導入した。限られた数の米国のクリエイターとコレクターは暗号ウォレットを自分のプロフィールに接続できるようになった。また、画像がNFTであることを確認する特別なタグを使ってプロフィールグリッドにNFTを表示することもできた。これらの機能へのアクセスは8月に世界中のユーザーに拡大された。

Metaは、11月に再び限られた数のクリエイターに向けてこのプログラムを拡大し、ユーザーはインスタグラム内でNFTを作成できるようになった。「エンドツーエンド」のツールキットを通じてユーザーはNFTを作成・展示・販売することができた。この11月の更新はインスタグラムNFTプログラムの最後の更新だった。

焦点はブランドよりもクリエイターに当てられていたが、2022年8月以降はどのブランドも作成したNFTをアップロードしてインスタグラムに表示できるようになっていた。

ロイヤルティプログラムの一環としてNFTをテストするブランド

NFTの暗号接続とFTXからの脱落などの理由から、最近ではNFTの人気は低下しているが、ファッション業界は過去2年間でさまざまなPFP(picture of proof)、POAP(proof of attendance protocol、参加証明バッジ)、NFTアートコレクションを開発してきた。その結果、多くのブランドにより新しいWeb3コミュニティが発展した。NFTの売上で成功を収めたブランドには、グッチ(Gucci)、ナイキ x アーティファクト(Nike x RTFKT)、アディダス(Adidas)などがある。ブロックチェーン分析会社のデューン(Dune)は、2022年のファッション部門のNFT売上は2億4500万ドル(約320億円)であり、ナイキが9120万ドル(約119億円)のロイヤルティとさらに9310万ドル(約122億円)の収益を生み出したと述べている

ブランドのなかには、今年、ロイヤルティの一環としてNFTをテストしているところもある。イヴ・サンローラン・ボーテ(YSL Beauty)は最近、ロイヤルティにフォーカスした3番目のNFTドロップをローンチしている。YSLボーテ・インターナショナルの最高デジタル・マーケティング責任者、ダイアン・ヘッケ氏は次のように述べている。「Web3は客関係管理(CRM)を刷新する機会であり、Web2のCRMをWeb3で複製することではない。ユーザーとブランドのつながりを改革したい。従来のCRMは購買行動に基づくものだったが、Web3ではエンゲージメントに基づくものになる。Web3では、コミュニティと長期的かつ常時接続のロイヤルティプログラムを持つことができるかもしれない」。

インスタグラムのNFTツールの廃止は、ブランドにとってはインスタグラム上でNFTを提供できないこと、ユーザーにとってはNFTをプロフィールに含められなくなることを意味する。NFTがインスタグラムから削除される日付は今後数週間のうちに決定される。ユーザーがプロフィールにアップロードした既存のNFTがどうなるかは不明である。

インスタグラムはNFTをテストできるソーシャルメディアプラットフォームの最大のもののひとつであり、データ分析会社のスタティスタ(Statista)によると、2025年までに月間アクティブユーザー数は14億4000万人に上ると予測されている。

メタバースエクスペリエンス企業のジャーニー(Journey)の最高メタバース責任者、キャシー・ハックル氏は、ファッションNFTを複数所有しており、その一部をインスタグラムフィードにアップロードしている。同氏は実用的な面ではMetaの動きを理解しているという。「MetaがNFTからほかのベンチャーにフォーカスを移しているのは悪いとは思わない。ほかの組織が主導権を握ってWeb3で顧客とつながる新しい方法を模索し続けるだろう、たとえばセールスフォース(Salesforce)のように」。

セールスフォースの新ツール

CRMソフトウェア会社のセールスフォースは、3月18日にセールスフォースWeb3(Salesforce Web3)と呼ばれるNFTロイヤルティツールをローンチした。現在、同社は、ブランドが自社NFTロイヤルティプログラムを開発する支援を目指している。このツールによりブランドはNFTの作成・販売、リアルタイムの顧客データの表示、ブロックチェーンのアクティビティの監視を行うことができる。セールスフォースWeb3は異なるサブスクリプションティアでローンチされた。セールスフォースは15万社以上の企業で利用されている。そのような規模の企業がこの分野に参入しているということは、ブランドにとってNFTによる顧客体験の未開拓の機会がまだ存在していることを意味する。玩具会社のマテル(Mattel)と服ブランドのスコッチ・アンド・ソーダ(Scotch and Soda)はセールスフォースのパイロットプログラムですでに複数のNFTをローンチしており、ほかのファッションブランドも今後数カ月以内にこのロイヤルティプログラムに参加する予定である。

「セールスフォースの発表が非常に興味深いのは、インスタグラムがNFT機能を廃止するという実に愚かな決定をしたのと同じ週に起きたということだ」と述べているのは、ブロックチェーンハードウェア会社、レッジャー(Ledger)の最高エクスペリエンス責任者、イアン・ロジャーズ氏だ。同氏は12月の時点でセールスフォースの新規プログラムの諮問委員会にも参加している。諮問委員会のメンバーにはオンラインゲームプラットフォームのサンドボックス(Sandbox)をはじめ、ユニリーバ(Unilever)、チケットマスター(Ticketmaster)、アディダスからの代表者が含まれている。「Metaはデジタルの世界に注力していながら、なぜかその価値を信じていない企業だ」。ロジャーズ氏は、今後25年間でデジタルプレゼンスが高まるにつれNFTやデジタルコレクションを求める顧客の可能性がより明確になること、そしてセールスフォースが成長する市場を活用していることを信じているという。

Metaの決定は、もっと新しいもっと若いNFTプラットフォームが生まれる機会でもある。「Metaの決定により、新しいものを作成するスタートアップが多く登場して、潜在的な空白を埋める道が拓かれるだろう」とハックル氏。「結局のところ、規模を問わず多くの企業がオーディエンスとやりとりする新しい方法を模索しており、ロイヤルティプログラムを新たなレベルへと高めてオーディエンスとつながるためにWeb3を使っている」。同氏は、最終的には、この決定はオンラインで自分のアイデンティティを表現してデジタルコレクションを共有したいという消費者の高まるニーズを満たす絶好の機会になると考えている。

[原文:What’s the industry impact of Instagram cutting NFTs?

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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