リテールメディア によって立場を強めるリテーラー。エージェンシー排除の動きも

DIGIDAY

メディアコマースの成長に伴ってブランドにはいま、「リテーラーとの直接取引をしなければいけない」とのプレッシャーが重くのしかかりつつある――そしてそれはときに、エージェンシーの立場を危ういものにしている。

リテールメディアネットワーク(以下、RMN)の競争が激しさを増すなか、一部のマーケターはファーストパーティデータへのアクセスや店舗での露出を確保するため、リテーラーに広告費を使わなければ、とのプレッシャーを感じている。そのせいでメディアエージェンシーは宙ぶらりんな状態に陥っており、リテーラーとマーケターの関係が進化するなかで、エージェントとしての役割維持に努めている。

ただ、3者の関係は極めて入り組んでおり、「はっきり言って、魔の三角区域と呼ばれるバミューダトライアングルに似ている」と、ピュブリシス(Publicis)のメディアエージェンシーであるスパークファウンドリー(Spark Foundry)でコマース部門EVPを務めるエイプリル・カーライル氏は説明する。

一方で、エージェンシーはウォルマート(Walmart)のリテールメディアプラットフォームであるウォールマートコネクト(Walmart Connect)といったリテーラーの顧客だ。リテーラーはエージェンシーに自身のメディアをより多く買わせたいのだ。また、ブランドはエージェンシーとリテーラー、双方の顧客でもある。「我々は互いに売ったり買ったりしており、依存し合うことでエコシステム全体が成り立っている」と、カーライル氏はDIGIDAYに話す。

変わりゆく力関係

だが、ブランドがRMNに直接向かい、エージェンシーを飛ばして自ら支出を管理するようになると、その力関係はさらに複雑化する。そしてコマース内で熾烈さを増す競争はいま、ブランドに対してRMNを含めた従来のメディア予算の再考を促している。

「多くのブランドが各々の包括的メディアプランにおいて、RMNに進出しているのは明らかだ」と、メディアとコマースの交差点に焦点を当てた独立系エージェンシー、コードスリー(Code3)のチーフアクティベーションオフィサーであるグレッグ・ウォルニー氏は話す。「そうしたプラットフォームも取り入れなければ、というプレッシャーはRMNを試している競合他社から、そしていまやすべてのカテゴリーがある程度参加している事実から来ている。ブランドはどこも、流行に乗り遅れたくないのだ」。

ただ、これは新たな関係であり、広告主は依然として各RMNとその能力について学んでいる段階だ。ウォルニー氏いわく、RMNがブランドの総予算の多くを占めている場合もあるが、だからといってエージェンシーが完全に切り捨てられているわけでもないという。RMNは依然、大半がいわゆるセルフサービスであり、予算を使ってくれるブランドをサポートするべく、エージェンシーと提携関係を結んでいる。

「この状態は実際、メディアエージェンシーにとって、ブランドの支出を管理するさらなる機会を生んでいる」とウォルニー氏は話す。

仲介役ではなくなるエージェンシー

RMNの急速な進化は一方で、双方に寄与するアドテクソリューションの新たな機会も生んでいる。ヴァイブノミクス(Vibenomics)のリテールメディア/パートナーシップ部門SVPであるポール・ブレナー氏によれば、より多くのブランドがリテールメディア担当を作り、革新の機会を探し求めているという――そして、そこにエージェンシーはもはや存在しないようだ。

ブレナー氏はブランドの幹部勢との話し合いを引き合いに出し、こう続ける。「ブランドの幹部たちは、エージェンシーを間に入れるのではなく、直接話してほしいという。その後、『我々からエージェンシーに話を通す』というのだ」。

ヴァイブノミクス――2023年3月、ムード・メディア(Mood Media)に買収された――は、店舗内のデジタル音声・映像メディアとアドテクを組み合わせ、リテーラー、DSP、広告主向けに広告販売をしている。同社はプログラマティックに対応したアドテクを使い、ブランドおよびエージェンシーの双方と直接やり取りする。ブレナー氏によれば、リテールメディアネットワークが数年前、まだインベントリー(在庫)を活用できる段階になかった当時、同社がそれを埋める使命を担ったという。

力を持ち始めているリテーラー

多くの消費者は依然として実店舗で買い物をしており、それゆえデジタル市場における店舗と付加的なスケールを持つリテールメディアを魅力的にしている。消費者行動に関するマークル(Merkle)の2022年の調査によれば、消費者の84%が前年に実店舗で買い物をしており、68%が購入品を自宅に配送させているという。

コードスリーのウォルニー氏いわく、店頭での体験はRMNを通じて向上しており、それはRMNがたいていの場合、「顧客の購入プロセスにおける最初のリサーチの場だからだ」と指摘する。

同様にブレナー氏によれば、明らかにリテーラーが力を持ち始めているという。つまり、リテーラーはブランドが自分たちの棚に商品を置きたがっていることを強く認識しているという。「言うなれば、『我々の棚に広告を置きたいのなら、リテールメディアエージェンシーに支払う金額の1%は我々に回せ』という感じだ。そうなればメディアエージェンシーは蚊帳の外に置かれる。彼らの出る幕はないからだ」。

また、カーライル氏は「RMNはここ数年で能力を向上させ成熟しており、新たな機会をさらに壮大なスケールで提供している」と指摘する。以前は、いずれのリテールメディアにおいても、いわばセルフサービスでの購入は不可能だった。

「これまでは売り物としてのマネージドサービスであり、それを買うのは基本的にショッパーマーケティングエージェンシーだった」とカーライル氏は続け、「それが、いま何が起きているかというと、リテーラーがサイト上で購入できる在庫の量は限られている(中略)しかし今では、リテーラーは自社のオーディエンスのファーストパーティデータをトレードデスク(The Trade Desk)といったメディアトレーディングプラットフォームで入手可能になっている」という。

エージェンシーの新たな成長機会

RMNが火を点けたこの関係性の変化は、エージェンシーにとって、のけ者にされないように再考し、戦略を建て直すよい機会になると、専門家は確信している。カーライル氏が指摘するとおり、エージェンシーはあらゆるメディア戦略のマネージドサービスからセルフサービスへの移行にクライアントが対処できるよう手を貸している。今後、エージェンシーはRMNのパフォーマンスを検証しつつ、すべてのコマを繋ぎ合わせることにフォーカスする役を担うことになるだろう。

「我々はリテーラーの切り札であるメディアミックスについて、リテーラー自身に責任を持たせている」とカーライル氏は説明する。「どうしてそういう結果になったのか? そこからどうしてそういうリターンを得るに至ったのか? 実際、ほかのどのプラットフォームでも結果の責任は当事者に持たせるようにしており、それと何ら変わりない」。

いずれにせよ、ウォルニー氏によれば、エージェンシーは今後も一役を担うことになるという。というのも、ブランドはそうしたプラットフォームやRMNの運営に関する専門知識を手にするために人員を増やしているわけではないからだ。「それはつまり、エージェンシーとの提携がブランドだけでなくプラットフォームにとっても極めて有益であることを意味する。エージェンシーは利用可能なインベントリー(在庫)を抱えているからだ」。

詰まるところ、いまはまだ試験/実験をくり返している段階だ。そして新たなプラットフォームおよびツールは、状況を刻一刻と変えていく。ただ、「クライアントと接する際、エージェンシーはテスト&ラーン(実験と学び)期にあるものとして、これに臨む必要がある」と、カーライル氏は話す。

また、「私がこれまで見たところでは、どのクライアントにとっても完璧なソリューションはまだ存在しない」と続け、「まずはこのリテーラーにはいま使えるこの新戦略を試し、そのうえで先へと進んで行く、という姿勢が求められる。リテール業界の市場の変化は早い。だからこそ、我々はそれを『リテールの速度で(at the speed of retail)』と呼んでいる」と話す。

[原文:How retail media is creating a ‘Bermuda Triangle’ relationship between retailers, marketers and media agencies

Antoinette Siu(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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