喫茶チェーン、ドトールコーヒーショップには、「ドトール珈琲店」や「ドトール珈琲農園」といった、高価格帯の店舗がある。
憧れを高ぶらせて調べて知ったのだが、どうもこの手の漢字まじりのドトール(以降、漢字ドトール)のミルクレープには洋酒が使われているようなのだ。
えっ! それって、いつものドトールのミルクレープと違うってこと!?
フルサービスのドトールだなんて
こうしちゃおれんとかけつけたのは、ドトール珈琲店の武蔵小山店。再開発されて2019年に新しくなった駅前のビルの2F、スターバックスの上にあった。
人の多い場所は本当に、カフェはいくらあってもありがたいものですからな。
冒頭でご紹介の通り、漢字ドトールは一般的なドトールの高価格版としてある。
ドトールがセルフ式(カウンターでコーヒーを買い、自分で席まで運ぶ)のに対し、漢字ドトールはフルサービス(店員さんが席まで注文を聞きにきてオーダーを運んでくれる)タイプだ。
ドトールが1号店を原宿に出したのは1980年。その際に革新的様式と言われたのがセルフ式だった。
フルサービスをしないことによりコーヒー一杯180円(当時)を成立させ、以降力強くチェーンを拡大したわけだ。
そんなドトールが2020年代に入りフルサービスの店舗を展開している。喫茶業界のうねりを感じ、業界外の人間としてはただ「へ~!」とうなるばかりだ。
うなるフードメニュー
漢字ドトールの提供メニューは店舗によりじわっと異なるようだ。
武蔵小山の店舗ではハワイアンメニューや無添加のオートミールを使ったパンケーキといった意欲的な期間限定の品がありつつ、グランドメニューとしてパスタ、オムライス、サンドイッチにデザートメニューも幅広く取り揃う。
キッズメニューもあり、ベビーカーで入店しやすい店づくりをしているようすもあってコーヒーをがんばるファミレスのような気配があった。
コーヒー中心のいつものドトールとはかなりスタンスが違うのがもう分かる。
高級なミルクレープとジャーマンドッグをください
店内は入り口にレジカウンターがあり、レジ前にコーヒー豆などの商品が並ぶ。奥に広く客席がとってあるなどやはりファミレスに近い。
ただ、おしゃれ方向にちゃんと意思が感じられる照明やいす、テーブル、ソファのしつらえがあって、あたらしい純喫茶的な、大人っぽさをちゃんと感じる。
窓際の席に通してもらい、座ると斜め後ろの席の方々が貴金属の相場について熱心に会話をしていたのだった。
さて、オーダーだ。
選んだのは例のミルクレープ(メニューに間違いなく「洋酒をつかっています」の文字があった!)と、それからドトールドッグ、カフェラテ。
ドトールと言えばフードメニューはジャーマンドッグだろう。
漢字ドトールには「ジャーマンドッグ」と表記されたメニューはなく、その代わりに「ドトールドッグ」がある。
そもそも私は、漢字ドトールにおいて、ミルクレープやホットドッグの価格がドトールよりやや高いことを、単純にフルサービスのサービス代の分高いのだと思っていた。商品はドトールと同じなのではないかと。
ミルクレープもホットドッグも、しっかり違う商品なのがちゃんと面白い。
ここからは普通のドトールと比べます
呼び出しボタンで店員さんに来てもらいオーダーしてしばらく、目の前にやってきた。
これが漢字ドトールのメニューか……!
ドトールなのに自分で運ばないの、思った以上に「いいのか!」というインパクトがある。
それに、これは個人の感想でしかないが、ふだん喫茶店でフードメニューを2品も頼むことはないからこれだけでもう祭りの時間になってしまった。
せっかくなので、このあと普通のドトールにも行って対応するメニューを食べた。比べるかたちで写真を並べてまいりますね。
ソーセージは見た通りのハーブ味で、ぎゅむっと噛むとプリン、バチンとはじけて肉汁があふれた。
三口目くらいでどういうことか肉汁が本当にあふれすぎて「飲む」一瞬があった。喉ごす肉汁が食道で刹那的にきらめく。
パンはホットドッグのパン特有のへなっとした感じがなく、ふくらみに耐久性がある。皮もばりっとしていて食べ応えがあった。
並べてみて、なるほどだいぶ違う(そして値段も200円もちがう!)。
ジャーマンドッグは泣いてしまいそうになるほど圧倒的安定感のいつものやつだ。あらためて食べて、ソーセージがかなりしっかりスパイシーなんだなと分かった。
飲み比べてなんとなくわかったのは、漢字ドトールのほうがコーヒーの味にフックがある。その分、いつものドトールのカフェラテにはミルクっぽさを強く感じた。
そして待っていました、ミルクレープ。洋酒、けっこう効いてます!
クリームがとろっとろで、食べごろの果物のよう。ナイフがついてくるのも層がきれいに切れて思いのほか体験として楽しい。
いっぽうこちらが……
洋酒の深みがない分、クリームのミルキーさがダイレクトに味わえる。
課金の分、絵に近づく
総じて、漢字ドトールのメニューはいつものドトールにくらべ価格の分味わいがリッチだ。
高くなるとホットドッグにはフライドポテトが、ケーキにはナイフがついてくるというのは、課金として普通のことのようであってもっと立体的な事象を表しているようにも思う。
それはつまり、「より思い描いたとおり」、ということではないか。
お皿にホットドッグが置いてあるだけだとなんだかさみしいでしょう、だからフライドポテトを添える。
絵として少し、わかりやすくなる。
「思ってたんとちがう」という言葉があるが、商品世界において事前の想像との差異は課金により埋められることが多い(そうでないことももちろんとても多い)。
そのこと自体をなんだか感じた。
ミルクレープに洋酒を使うというのは絵的なことではないが、「洋酒」という文字に理想的な高級化の様式がある。
どちらにせよ、食べてしまうとどちらもとってもとってもおいしいんだから、偉いものである。溝がうまる思いだ。
ドトール 自由が丘マリクレール通り店のかっこよさ
ちなみに今回、ふつうのドトールのジャーマンドッグ等を食べに、ドトールファンの友人のすすめで、自由が丘駅近くにある自由が丘マリクレール通り店に行ってみた。
2021年の12月オープンとまだ新しく、友人いわく「南仏のカフェみたいなドトールなんよ!」。
たしかにコーヒーカウンターのある1Fと、客席の2F、どこも全体的に白い内装で、中に入るとちょっと海辺にいるみたいな気持ちになる(私も友人も感性がちょろい側の人間です)。
あとで調べたところ、公式サイドとしては「パリを感じさせる小粋なドトール」をコンセプトとしているのだそうだ。
勝手に海の風を感じてしまい照れた。
漢字ドトールの高級感とフルサービスを味わい、ふつうのドトールにもすてきな店舗があることを知った。
それですっかり、この日はよく寝られたのだ。