きしめん!カレーうどん!あんかけスパ!名古屋に来たら麺食べて!

デイリーポータルZ

うっま

愛知県の名物といえば味噌カツや手羽先なんかを思い浮かべる人も多いと思う。それは間違いではない。ただ、出身者の僕に言わせると、実は麺ではないかと思うのだ。

今回は名古屋駅周辺で手軽に食べられる名古屋らしい麺を3種類紹介したい。

ホームのきしめん

みんな普段どうやって愛知に行っているか知らないが、今回は新幹線でのアプローチを前提に話を進める。

新幹線の中はビールとかお菓子とかアイスクリームとか、とにかく誘惑が多いのだが、名古屋に着くまではいったんがまんしてほしい。駅弁も食べちゃダメだ。

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名古屋に行くなら

 

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車内ではこのくらいでがまんしておいてほしい。

なぜかというと、降りてすぐうまい麺を食べてほしいからだ。とはいっても駅から少しくらいは歩くんでしょう、その間に腹もこなれますよね、なんて油断してはいけない。

本当に降りたらすぐに麺だから。

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はい、着きましたね!
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そしたらまずきしめんです。

きしめん屋さんは駅のホームにあるので着いたらすぐに食べられる。

もちろん駅の外にも美味しいきしめん屋さんはいくつもあるし、普通は駅のホームよりも町に出た方が美味しいでしょう?と思うだろう。

それが名古屋の場合は駅のホームのきしめんが美味しすぎるから町に出る前に一度食べてほしいんです。

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電車を降りてきしめん食べるところまでがセットです。
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僕はふつうのきしめんが一番好きです。

名古屋駅には新幹線のホームにも在来線のホームにもきしめん屋がある。店舗によって味がちょっとずつ違ったりするらしいが、今は細かいこと気にせずに降りたホームできしめんを食べてしまってほしい。

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悩む前に出てくるから。
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これぞ立ち食いという省スペース。お客の回転がめちゃくちゃに速いので並んでいてもすぐ順番まわってきます。

言い忘れたが「きしめん」というのは名古屋あたりで食べることのできる幅が広く薄い麺のことである。麺が薄いので茹で時間が短く、注文してすぐに食べられる。

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そしてうまい。
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ほんとうにうまい。

きしめんは美味い。

きしめんの美味さの7割くらいはだしの美味さだと思う。これは関東の鰹だしとも関西の昆布だしとも違い、ムロアジという魚からとっただしの美味さ。濃すぎないのにしっかりと魚の味がして、そこに甘めの醤油が足されているのだ。たまらん。

僕はあまり食にこだわりのある方ではないのだけれど、もし3時間後に地球に隕石が落ちてくることがわかったら、新幹線に乗って名古屋できしめん食べる。名古屋ならその時にもきしめん屋さんを開けていてくれるはずだ。

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若鯱家のカレーうどん

各地のグルメはいったん人気が出るとそれを誇りに思い、大切に根付かせようと努力する向きがあるが、名古屋は常にその先を見ている。

エビフライとかきしめんとか、すでに定番として認識されているものでさえ、いったん破壊して再構築しようとするのだ。

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積めるだけ積んでみたり。
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刺して玉子で閉じたりする。
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きしめんをカツカレーにしたり
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ぞうににしたりもする。

こうした名古屋に住む人たちのオリジナルすぎる食への探求の陰で、完成してからずっとその姿を変えようとしないメニューも存在する。

それが若鯱家のカレーうどんではないだろうか。

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カレーうどんといえば若鯱家である。
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たかが一杯されど一杯。

これは僕自身の思い出なのだが、父と野球を見に行った帰りにも、家族で熱田神宮へ初もうでに行った帰りにも、食べたのはカレーうどんだった気がする。モノクロの思い出の中に、カレーうどんの黄色だけが色づいて見える。そのくらいカレーうどんは僕たちの暮らしとともに、いつでも存在していた。

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思い出しているうちに、あの日の思い出がそのまま出てきたぞ。

カレーうどんは食べているうちに服に飛ぶものだが、若鯱家では気を聞かせて紙のエプロンを用意してくれるから優しい。

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気づかい。

しかし、である。

思うに、若鯱家のカレーうどんは服に飛ばない気がするのだ。

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それは簡単には飛ばないくらい汁が重いから。
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すすれないくらい麺も重いから。
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さらに言うと熱すぎるから。

若鯱家のカレーうどんはとにかく重い。麺なんて登山用のロープくらいあるし、汁のとろみもはんぱないからとにかく絡む。ずずーっとすすることなんて一般人の肺活量ではまず無理だろう。そうなってくると1本ずつよっこらせと食べるしかなく、しかも「たったいま地獄の釜から上げてきました!」ってくらい熱いので、おのずと食べる速度も落ちる。

つまり若鯱家のカレーうどんはなかなか服に飛ばないのだ。

味については僕なんかが言うのもおこがましいのだが、なんとも歴史的深みを感じる味である。だしが香り、ちゃんと辛い。具は豚肉とお揚げ、それに大きめに刻んだネギ。このシャキシャキしたネギが最高に合う。

うどんを食べたあとにはカレーが残るので、一緒にごはんを注文するといいと思います。

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スパゲッティハウス・ヨコイのあんかけスパ

名古屋にはあんかけスパという文化がある。そして名古屋であんかけスパといえばヨコイかチャオなのである。

正直どっちで食べてもうまいのだけれど、今回はヨコイを選ばせてもらった。

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むかし彼女と来た店、ヨコイ。
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字面からスープパスタみたいなものだろうと思っている人、いたら手を上げてほしい。切符渡すから名古屋行ってこい。

僕はヨコイもチャオも、もちろんどちらも食べたことがあるのだが、ヨコイが父、チャオが母、そんな印象を持っている。手羽先でいうと山ちゃんが父、風来坊が母である。熱田が父、笠寺が母。そういうことである。

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「ミラカン」か「ミラネーズ」か。はじめての人には理解できない単語かもしれない。

あんかけスパを食べる前に、まず「ミラネーズ」と「カントリー」、この二つの単語を覚えてもらいたい。

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ミラネーズというのは肉が入ったあんかけスパ(ここでいう肉というのはハムとかウインナー)、カントリーというのは野菜が入ったあんかけスパを意味する。
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ではここで問題です。ミラカンとはなんでしょう。

ではミラカンとはなにか。

察しのいい読者のみなさんはもうおわかりかと思うが、ミラカンとは「ミラネーズ(肉)」と「カントリー(野菜)」とを合わせたもので、和訳すると「肉も野菜も」ということになる。

応用編として「海老」と「肉」だと海老ネーズになる。

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直訳すると「海老も肉も」である。

ミラカンかミラネーズか、どちらかを選んでおけば間違いないのだけれど、僕があえておすすめするのはトリカラである。

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トリカラ。和訳すると鳥の唐揚げ。

これはあんかけスパに鳥の唐揚げが乗ったメニューだ。ミラカンもミラネーズも美味いが、僕はあんかけスパには実はトリカラがベストではないかと思っている。

声高らかに注文すると、まずミニサラダが出てくる。

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名古屋のご飯ではミニサラダだけ最初に出てくることが多い。あんかけスパを食べるときはこれは最後に残しておいた方がいい。理由はあとで述べる。

ほどなくして最高にあたまの悪そうな一皿が目の前に出てきた。

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おまえ最高だな。

あんかけスパの「あん」の部分は、野菜からじっくり煮込んで作られたオリジナルソースである。せっかくそうやって手をかけて作ってきたのに、最後にコショウをどばどば入れてただの辛いたれにしてしまっているのもいい。でもこれが太い麺に絡まると文句なしに美味いのだ。

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ギリシャ文化がオリエント文化と融合した。てきとうに言ってるから人には言わないでくださいね。

このあんはトリカラにもでら合う。

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ちょっと薄味に揚げられたトリカラにあんが合う合う。

あんかけスパはスープパスタではなく、あんかけスパなのである。食べたあとは駄菓子でおなか一杯になったみたいな不思議な達成感がある。

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でも美味しいからまた食べちゃうのである。

そうそう、最初に出てくるミニサラダはぜひ食後に食べてもらいたい。味の濃いあんかけスパを食べたあとでミニサラダを食べると、デザートみたいにさっぱりするんです。

名古屋に来たら麺

たとえ明日世界が終わるとしても、名古屋の人は気にせずきしめんやカレーうどんやあんかけスパなんかを食べているんじゃないかと思う。あ終わるんか、そうか、水くれや。

今回紹介した以外にも、名古屋には味噌煮込みうどんやスガキヤ、台湾ラーメンなど、独特に進化した麺がいくつも存在する。機会があれば後編としてそれらも紹介したいと思っていますのでお楽しみに。

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名古屋ではハッシュドビーフですらサブ。

 

 

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