みずほ銀の新体制に不安募る理由 – 大関暁夫

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りそな銀行巡り「りそめぐ」の背景が興味深い

最近テレビ番組で、自身の預金通帳への入出金取引時の支店名印字収集を目的として、旧あさひ銀行時代からりそな銀行の全国の支店およびATMコーナーを回っているという人が紹介されていました。

なんでも、他の大手銀行の通帳印字は店番のみで店名がないそうで、この店名印字に魅せられ「りそめぐ(りそな銀行巡りの意)」を始めたと、話していました。

共同通信社

この「りそめぐ」における最大のピンチが、旧大和銀行主導ですすめられた大和銀行とあさひ銀行の合併時だったそうです。

大和銀行の印字は店番のみ。全店制覇の夢はついえてしまうかに思えたものの、なんとシステム統合は旧あさひ銀行のシステムを活かすことで話が決まり、「りそめぐ」は統合後も無事継続できるようになったのだといいます。

大和銀行主導の合併でありながら、なぜあさひ銀行のシステムを活かす選択になったのかですが、「りそめぐ」氏の話では「顧客数がより多いあさひ銀行のシステムを優先した」というのがその理由だったのだと。

なるほど銀行と言えども顧客あってのサービス業であり、サービスの根幹を支えるシステム統合においてあるべき「リテール優先」思想が発揮された結果かなと、銀行に身を置いた者として興味深く聞きました。

相次ぐシステムトラブルで「リテール軽視」の風土が浮き彫りに

私がこの話を聞いて連想したのが、みずほ銀行で相次いでいるシステムトラブルでした。みずほ銀行は、昨年2月に起きた「ATM通帳飲み込み障害」に端を発して、3月までに4回のシステムトラブルを引き起こしました。

6月に再発防止策を公表しながらも8、9月にもトラブルが続発。さらに9月に金融庁が業務改善命令を出すも、直後にまた外為システムトラブルによる処理遅延とマネロン確認不備も発覚しました。

結局昨年だけで、同行のシステム障害は計8回。11月に金融庁は昨年二度目の業務改善命令を出すに至り、退任が予定されていたみずほ銀行藤原弘治頭取に加えて、続投が予定されていたグループトップの坂井辰史みずほフィナンシャルグループ(FG)社長も辞任に追い込まれました。

共同通信社

金融庁は11月の業務改善命令の中で、みずほの風土として「言うべきことを言わない、言われたことしかしない姿勢」と、組織風土の問題にまで言及するという異例のメッセージを発しました。

「言うべきことを言わない=自発的な改善行動をしない」「言われたことしかしない=受け身本位」ということでしょう。すなわちサービス姿勢は常に自己都合の受け身で、顧客本位で考え対応しようという姿勢に欠けている、とも言い換えられると思いました。

先のりそなの対応とは真逆の、顧客の大多数を占める「リテール軽視」という風土が、浮き彫りになったとも言えそうです。通帳飲み込みを何時間も放置したトラブル対応のまずさなどは、よくよく考えれば「リテール軽視」の極みと思える不祥事だったのです。

三代続く旧興銀出身のFG社長、人選には疑問符も

みずほは年明けに、4月を予定していたグループトップ坂井社長の交代を2月に早める方針を発表。新FG社長には、平成入社の木原正裕執行役員が就任することになりました。

しかし、木原氏は前任の坂井氏と同じ旧日本興業銀行(興銀)の出身です。この人選で本当にいいのか、個人的にはいささか疑問に感じています。

日本興業銀行はそもそも戦後の高度成長期を、大企業向けの長期金融の面から支えた政策金融機関です。木原氏の経歴には、証券財務企画部長、グルーバルプロダクツユニット長などという役職名が並び、明らかに興銀の本流であるインベストメント・バンキング畑の人材であり、大多数の顧客を占めるリテールからは距離のある畑の育ちです。

木原氏がいかに優秀な人材であっても、今重視すべきリテール優先文化定着に向けたリーダーとしては疑問符が付くと思うのです。

みずほは委員会設置会社であり、トップ人事は指名委員会に決定権があります。かつ同社の指名委員会は社外取締役で構成されており、旧三行間力学等社内の力関係は排除できる環境は整っているといえます。

しかし、肝心の指名委員会に今みずほが本当に必要とするトップ人材を選ぶ人選眼があるのか否か。

甲斐中辰夫指名委員会委員長、取締役会議長で指名委員の小林いずみ氏は、共に2018年に今回引責辞任する坂井社長を選出した時の指名委員でもあります。今回も再び「優秀さ」を優先して、リテールに疎遠な旧興銀出身者をグループトップに選んでしまうことに問題を感じなかったのだとすれば、彼らこそ指名委員に不適とすら思えるところです。ちなみに、木原氏で旧興銀出身のFG社長は三代続くことになります。

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