「西洋型の食生活」がアルツハイマー病のリスクになるとの研究結果、認知症の予防に重要な食べ物やサプリも判明

GIGAZINE



記事作成時点で約2500万人いる認知症患者は年々増加しており、2050年までに少なくとも1億1540万人に達すると推測されていますが、最も一般的な種類の認知症であるアルツハイマー病の正確な原因は不明で、有効な治療法もありません。そんなアルツハイマー病の発症リスクに、糖分や脂質が多くなりがちな食生活が関連している可能性があると、中国の研究者らが発表しました。

Frontiers | Effect of nutrition in Alzheimer’s disease: A systematic review
https://doi.org/10.3389/fnins.2023.1147177

Western Diet Identified as Risk Factor For Alzheimer’s Disease, Scientists Warn : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/western-diet-identified-as-risk-factor-for-alzheimers-disease-scientists-warn


アルツハイマー病の研究は世界各地で盛んに行われており、完全な原因究明には至っていないものの、いくつかの研究により食生活やライフスタイルがアルツハイマー病の発症に深く関わっている可能性が示されています。

そこで、浙江中医薬大学のインマクラーダ・シュー・ロウ氏らの研究チームは、2018年~2022年までの5年間に発表された先行研究から食事や栄養とアルツハイマー病の関係を分析するシステマティック・レビューを行いました。

研究チームが4つの医療文献データベースからアルツハイマー病と食に関する文献を検索し、動物実験や特定の医薬品の試験データなどを除外した結果、ランダム化臨床試験17件とシステマティック・レビューおよびメタアナリシス21件、合計38件が見つかりました。


そして、それらの研究を分析したところ、西洋型の食事パターンが軽度から中等度のアルツハイマー病の危険因子であることが分かりました。研究チームは、飽和脂肪酸や糖分、塩分が多い西洋型の食事が人体に余計なストレスをかけており、これが脳内にアミロイドβタウタンパク質を蓄積させて、認知症の原因となる神経細胞の破壊につながっているのではないかと推測しています。

西洋型の食事がアルツハイマー病のリスクを高めていた一方で、軽度から中等度のアルツハイマー病の発症を予防する可能性のある食事も見つかりました。それが、地中海食とケトジェニック・ダイエットです。

地中海食とは、全粒粉の穀物や野菜、果物、魚介類を中心としたイタリアやギリシャの伝統的な食事で、ケトジェニック・ダイエットは炭水化物を避けて脂肪を多く摂取することを特徴とする食事法です。ただし、極端な食事であるケトジェニック・ダイエットを長期的に続けると別の健康リスクが発生するおそれがあることから、研究チームは実践する場合は専門の栄養士による監督が欠かせないとしています。

研究チームは論文に、「地中海食による食生活を続けることは認知症リスクの20%低下と関連しているという研究結果があります。また、ケトジェニック・ダイエットは酸化ストレスや炎症を抑え、脳内のグルコース代謝の変化による悪影響を軽減させることが示されているため、アルツハイマー病の治療にも有効な可能性があります」と記しました。


食事の他には、オメガ3脂肪酸とプロバイオティクスのサプリメントも、アルツハイマー病の予防因子であることが分かっています。研究チームによると、魚介類やナッツ類などに豊富なオメガ3脂肪酸、特にエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)を適切に摂取することで、認知機能の低下を遅くし、アルツハイマー病のリスクを軽減することができるとのこと。また、アルツハイマー病患者は腸内細菌のマイクロバイオームが変化しており、これにより炎症が悪化して認知機能に影響が及ぶことも示されているため、プロバイオティクスも重要です。

研究チームは論文の中で、「栄養介入によりアルツハイマー病の進行速度を遅らせ、認知機能を改善し、患者の生活の質(QOL)を向上させられることが示されました。しかし、まだ調査されていない点や、不足している知識も多くあるので、栄養とアルツハイマー病の関連についてはより深い研究が求められます」と結論付けました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

Source

タイトルとURLをコピーしました