IKEAが衝動買いを誘発するために採用している戦略とは?

GIGAZINE
2022年03月05日 16時00分
メモ


by Seth Werkheiser

IKEAの店舗は広大な敷地に膨大な数の品物を陳列しており、「ついつい目当ての品物以外も手に取り、レジ並ぶ頃には大量の品物をカートに入れていた」という経験をしたことがある人も多いはず。IKEAが顧客に多くの品物を買わせるために採用している戦略について、ビジネス関連メディアのThe Hustleが解説しています。

How Ikea tricks you into buying more stuff
https://thehustle.co/how-ikea-tricks-you-into-buying-more-stuff/

ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンで経済学を研究するアラン・ペン氏は、IKEAで買われる品物の60%は衝動買いによるものだと分析しています。また、IKEAのクリエイティブディレクターも「IKEAで購入される品物のうち、実際のニーズに基づいているものは20%にすぎない」と発言しています。このような大量の衝動買いを誘発するIKEAの仕組みをThe Hustleは解説しています。


◆店舗のレイアウト
一般的に企業は、顧客が自らの意思で店舗内を探索できるようなレイアウトを採用しています。それらの店舗には「間取り図を理解しやすい」「目的の品物にたどり着きやすい」「品物の一覧性が高い」といった特徴があり、顧客は好きな順序で店舗内を移動し、品物を手に取ることができます。


しかし、IKEAでは平均30万平方フィート(サッカー場5つ分に相当)という広大な敷地内に曲がりくねったルートが設定されており、顧客は目的の品物にたどり着くために順路を守って歩き続ける必要があります。The Hustleによると、IKEAに行く顧客は約1マイル(約1.6キロメートル)歩く必要があるとのこと。


上記のように複雑なルートを設定することで、IKEAは顧客が購入予定の品物以外にも目を向ける機会を増やすことに成功しています。また、顧客は複雑なルートを複数回歩くことを拒むため、「必要か不要か判断できない品物」をカートに入れてしまう傾向があります。加えて、IKEA複雑な順路が顧客を「もっと探索したい」という思考に導くという研究結果も存在しています。

順路の複雑化以外にも、IKEAではショールームに鏡を設置して顧客に「ショールームに属している」という感覚を与えたり、安価な製品を大量に詰め込んだワゴンを設置したりといった店舗デザインの工夫を行っています。

◆おとり価格の設定
IKEAでは、品物を多く販売するために、中途半端な品質&価格の品物をラインナップに追加しています。例えば、「安価な材料で構成された40ドルの棚」と「高級な材料で構成された80ドル」の棚を販売する場合、IKEAでは「安価な材料で構成された70ドルの棚」をラインナップに追加するとのこと。このような中途半端な価格の品物を追加すれば、売上高が14%増加するという研究結果も存在しています。


◆価格を低く抑える努力
IKEAの人気の理由は、品物の安さにもあります。IKEAでは「価格を優先し、後から設計する」という理念にそって製品開発を行っており、販売開始した製品を積極的に値下げすることも知られています。

例えば、IKEAでロングセラーを記録しているイス「ポエング」は、1994年には現在の価値で約340ドル(約3万9000円)で販売されていましたが、記事作成時点では1万2990円という半額以下の値段で販売されています。


IKEAが品物を安く提供できる理由の1つは、パッキング手法にあります。IKEAの家具は基本的に組み立て式で、販売時には分解した状態で平たい箱に収納されています。このパッキング手法は「フラットパッキング」と呼ばれ、輸送コストの削減や保管効率の向上に役立っています。

◆IKEA効果
上述の通り、IKEAでは家具を分解した状態で販売しており、顧客は家具を持ち帰った後に自分で組み立てる必要があります。この時、「自分で作ったものは価値があるように感じる」という効果が働くことが知られています。

上記の効果は「『完成品の折り紙を与えられたグループ』と『自分で折り紙を折るグループ』では『自分で折り紙を折るグループ』の方が作品に高い価格を付ける」というハーバード・ビジネス・スクール(PDFファイル)研究で確認されており、この効果は「IKEA効果」と呼ばれています。


◆フードコート
比較的大型のIKEA店舗では、店舗内にスウェーデンの食事を楽しめる数百席のフードコートとホットドッグなどの軽食を楽しめるフードコートの2種類のフードコートが配置されており、これらのフードコートはIKEAの収益全体の5%に相当する約24億ドル(約2770億円)の年間収益を生み出しています。

2012年に実施された700人を対象とした(PDFファイル)調査では、フードコートで食事した人はそうでない人と比べて平均2倍以上の家具を買うことが示されており、フードコートの購買意欲向上効果が認められています。


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