高級ディスカウントストア、センチュリー21が復活:営業再開初日にコロナ禍前の集客力

DIGIDAY

センチュリー21(Century 21)が復活を果たした。

高級ファッションブランドを扱うディスカウントストアとして長いあいだ親しまれながらも、コロナ禍の影響で閉店したセンチュリー21が5月16日、ニューヨークのウォール街近くに売場面積を縮小した旗艦店として再オープンした。運営会社のセンチュリー21デパートメントストアズ(Century 21 Department Stores)の幹部によると新生センチュリー21は、あこがれのブランドの掘り出し物をお得に買える店という立ち位置は変えないが、その一方で経営スタイルをスタートアップ企業型に転換し、ブランドパートナーと一般顧客の双方にメリットをもたらす意向だという。

センチュリー21のゼネラル・マーチャンダイジング担当バイスプレジデント、ジュディ・ドゥジック氏は同社が2020年9月に経営破綻するまで30年近く勤めたベテランだ。新生センチュリー21について同氏は「現時点では、新規事業を立ち上げるスタートアップのようだ」と述べている。同社は再出発に向けて、あらためてブランド各社とのパートナー関係を強化し、新たな3PL(サードパーティ・ロジスティクス)事業者と提携する必要があった。また、13店を展開していた2020年と比べ大幅に規模を縮小し、まずは旗艦店1店のみに絞った。売場面積が10万平方フィート(約2810坪)と限られているため、スペースを埋めるためだけの商品を陳列するという、大手オフプライスストアのお決まりの手法に頼る必要がなくなった。商品が長期にわたって売れ残る心配が少なく、ブランド各社は安心して商品を卸せる。

マーケティング担当バイスプレジデントのテレサ・ロドリゲス氏によると、センチュリー21は今後も引き続き出店を計画しており、近い将来にはECサイトも立ち上げるという。ロドリゲス氏はまた、同社が「有力なパートナーとの契約締結」の発表に向けて準備を進めていると述べた(詳細は非開示)。

再開店時は大盛況。店舗とECをうまく差別化

5月16日正午、旗艦店「センチュリー21 NYC」のオープンは盛況だった。VIPプレビューのために朝から現場へ出向いた幹部は午前10時半ごろ、店の前に行列ができ、500人以上が並んでいるという報告を受けていた。開店から7時間で、来店客数はコロナ禍前の平日平均に達した。再出発を祝う特別イベントらしく、ニューヨーク名物のスナックがふるまわれ、ギフトが配られ、ランウェイをテーマとするフォトブースなど無料サービスが提供された。

再開店前まで、販売対象となる商品のブランド名は伏せられていた。ドゥジック氏によると、多くのブランドから「公表を控えてほしい」旨の申し入れがあったためだという。当日、蓋を開けてみると、LL階の靴売場にはJWアンダーソン(JW Anderson)、プロエンザ・スクーラー(Proenza Schouler)、ヴァレンティノ(Valentino)をはじめとする有名ブランドの商品が並び、メインフロア(1階)にはルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)やグッチ(Gucci)の購入証明書つき中古バッグのほか、バンブーバッグが大ヒットとなったカルトガイア(Cult Gaia)など、コンテンポラリーブランドの新商品も陳列されていた。サングラス売場ではトム・フォード(Tom Ford)やプラダ(Prada)、2階の婦人服売場ではモスキーノ(Moschino)、ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)、ヴィクトリア・ベッカム(Victoria Beckham)などの商品が目を引いた。また、モンス(Monse)やラルード(Larroude)といったニューヨーク生まれのファッションブランドも存在感を示していた。

センチュリー21は今後、販売チャネルを拡充する意向だが、入荷数量が限られている商品はECサイトでは販売しない見込みで、消費者が「宝探し」体験を強く実感できるのは実店舗だろうと、ロドリゲス氏は述べている。ただしドゥジック氏によれば、開設予定のECサイトの品揃えは豊富で、実店舗ではまだ取り扱いがないランジェリー、家庭用商品も販売される。また、オンラインで購入した商品の店頭返品も受けつけるという。

オフプライスストアの競合他店および一時閉鎖前の自社直営店との差別化を図るため、センチュリー21は、ドゥジック氏がいうところの「good、better、best」各カテゴリーの厳選ブランド品を前面に打ち出す戦略をとる。「若い世代向けの商品が得意な新進デザイナーブランドのラインナップを強化する。米国系の中堅ブランドのみに偏らず、ヨーロッパ発やコンテンポラリー系の商品を増やしていく」とドゥジック氏は語る。欠けているのは、LVMHやケリング(Kering)傘下のラグジュアリーブランドの、いつまでも色あせないスタイルの商品だ。一方、「good」カテゴリーとしてファストファッションも取り入れて若い世代の買い物客を狙う。

何百という店舗に商品を供給する競合他社とは異なり、1店集中型のマーチャンダイジングは品質管理がしやすいとドゥジック氏は主張する。「競合はアウトレット販売向けに製造された商品を扱う場合があるが、当社はその必要がない」。現在、センチュリー21の売場に並んでいるのは2022年以降に発売された比較的新しい商品で、一部は今シーズンのコレクションだ。ただ当然ながら、事業拡大と増店にともない、これまでと同等の質の品揃えを維持するのは難しくなるだろう。

ブランド各社の信頼は? 今後への活動と期待

一方、小売パートナーとして復活したセンチュリー21に対するブランド各社の信頼のほどはどうか。「思っていたより好意的に受け止められている」とドゥジック氏はいう。

「さまざまなブランドが当店に商品を置いてほしいと望んでいる。ニューヨーク市内という立地の良さ、来店観光客数の多さが評価されているのだろう」とドゥジック氏は指摘する。「加えて、当店のビジネスモデルも好評だ。取扱商品の数を絞り、在庫も多く抱えず、仕入れた商品はすぐはける。高級ブランドは、オフプライスストアに自社商品が大量に陳列された状態が続くのを好まないからだ」。

センチュリー21は2020年9月、米連邦破産法11条の適用を申請して経営破綻し、全13店を閉鎖した。当時のCEO、レイモンド・ギンディ氏は破綻について、新型コロナウイルス感染拡大による一時休業損害保険金の支払い拒否が原因だとして契約先の保険会社を非難した。経営危機に陥る前、センチュリー21はニュージャージー州の巨大ショッピングモール、アメリカン・ドリーム(American Dream)内に売場面積5万5000平方フィート(約1546坪)の新店をオープンする予定だった。

創業者のギンディ一家は2020年12月、センチュリー21のブランドなど知的財産権を900万ドル(約11億7000万円)で買い取った。そして2023年5月、同社はついに、インスタグラムへの投稿で店舗の営業再開を発表した。再起を助けたのは小売・ホスピタリティ事業管理会社レジェンズ(Legends)との新たなパートナーシップだ。レジェンズは、ヤンキー・スタジアムや、世界貿易センターの跡地に建てられたワンワールド展望台の運営で知られる。

センチュリー21は5月16日、記者会見を開き、旗艦店の開所式をおこなった。開所式ではギンディ家の人々ほか経営陣が登壇し、店と街、社員に対する熱い思いを語った。また、戻ってきた幹部のリストが読み上げられ、拍手で迎えられた。テープカットに参加したのはニューヨーク市のエリック・アダムス市長。スピーチでは、ニューヨークを象徴するランドマークとしてのセンチュリー21を称えた。最高執行責任者のラリー・メンツァー氏は、センチュリー21の影響力について、テルファー・クレメンス氏が子どものころ店を訪れた経験に刺激を受けて、のちにファッションデザイナーになったというエピソードを語った。

センチュリー21はPR活動の一環として、ソーシャルメディアやインフルエンサーを利用したデジタル広告に注力している。「インフレのご時世、お得感のある上質な商品を探すならセンチュリー21だというメッセージを消費者に伝えたい」とロドリゲス氏はいう。

ロドリゲス氏は旗艦店の改装について、ソーシャルメディアを意識した設計を取り入れていると述べ、センチュリー21は「インフルエンサーやソーシャルメディアのコンテンツクリエイターにとって絶好の活動の場」であると主張した。

店内にはいま注目のティモシー・グッドマンが新たに制作した壁画アートを設置し、インテリアは従来に比べより「明るく」、「すっきりとして」、「シンプルで」、「居心地がいい」雰囲気に改装したと、ロドリゲス氏もドゥジック氏も口を揃える。

「宝探しの要素は保ちつつも、お客様が欲しいものを探し回らなくても見つけられるようにしたい」とロドリゲス氏は説明する。そのため売場の整頓を徹底し、商品をブランド別のラックに陳列した。また、試着室のスペースを広げ、キャッシュレジスターを増設した。

「会社が大きくなると、規模に合わせたやり方で運営していかなくてはならない」とロドリゲス氏はいう。「センチュリー21は復活して新たな段階に入ったが、だからこそお客様の声に耳を傾け、必要に応じて業務プロセスを変更できるような対応をしたい」。

ドゥジック氏はこう述べている。「再オープンは、リスタートボタンを押して再起動するチャンスを我々に与えてくれた」。

[原文:Century 21 attracts pre-pandemic-level traffic on reopening day

(翻訳:SI Japan、編集: 山岸祐加子)

Source

タイトルとURLをコピーしました