「 実店舗 がにぎわいを取り戻している」:ブランドはどのように店舗を再考しているのか?

DIGIDAY

3月末にラスベガスで開催された小売業向けイベント「ショップトーク(Shoptalk)」で、もっとも斬新なコンセプトとして注目を集めたのは、AIだったかもしれない。しかし会場でよく話題になっていたのは、実店舗での小売についてだった。

特にオンラインでの販売とマーケティングがどちらも高騰していることから、実店舗での小売が非常に活気に満ちていると、ショップトークに参加した経営陣ならびに設立者はGlossyに語った。

「オンラインで簡単に顧客を獲得できる時代は終わった」と話すのは、60ブランドの店舗100軒以上を運営する小売店運営会社「リープ(Leap)」の共同設立者、アミシュ・トリア氏だ。

ソーシャルコマース会社「シンプリシティDX(SimplicityDX)」の調査によると、オンラインでの顧客獲得にかかるコストは過去5年間で少なくとも60%跳ね上がり、獲得件数ごとに平均29ドル(約3,800円)の損失がブランドに発生しているという。そこに、いかなる犠牲を払ってでも成長の達成を優先してきた投資家たちが、短期的な収益性を見込める安定した成長路線へと方向転換したこととも相まって、ブランドが実店舗の活用に前向きになった。しかし、過去2年間のeコマースの成長に対抗するために、実店舗は時間をかけて進化する必要があること、そしてどのような方法で進化すべきかについて、ショップトークに参加した多くのリーダーたちは語った。

「実店舗はにぎわいを取り戻しているが、今後数年のうちに実店舗での体験は完全に変革することとなるだろう」と、ル・トート(Le Tote)などに出資してきたスウェイ・ベンチャーズ(Sway Ventures)のパートナー、シェリー・カプール・コリンズ氏は言う。「あなたが誰であるかをショッピングカートが認識し、商品をカートに入れるとそれが何なのかを認識し、そのまま店舗から出られるといった店舗を、想像してみてほしい」。

アマゾンが引き続き実店舗をオープンさせていることは他ブランドにとって注目すべき点だと、カプール・コリンズ氏は指摘する。アマゾンのCEOであるアンディ・ジャシー氏は先月、実店舗数を来年2倍に増やしていくと確言した。

トリア氏によると、小売業の最大の課題には初期費用があり、リープはその負担を軽減する企業のひとつだ。同社は今年中に、ブランドが店舗スペースを年間の一定期間のみ借り、残りの期間を別のブランドが借りることが可能な「シーズナル・ストアズ(Seasonal Stores)」と呼ばれる新プログラムを立ち上げる。パンデミックの混乱以降、リース期間を短くして負担を減らすのは一般的になりつつあり、これはブランド側のリスクを軽減しながら、貸主側にとっては店舗が空かないという良策になり得る。ウォルマートのように大規模な小売業でも、店舗に入居するテナントに最短1カ月という短期間でのリースを提供し始めている。

「ブランドは常に、小売業の季節性に苦労してきた」とトリア氏。「第1四半期によく売れるブランドも、第3四半期によく売れるブランドもある。初の期間限定店舗が今年5月にオープンし、5月から10月までは夏用サンダルで知られるフットウェアブランド『フリーダム・モーゼ(Freedom Moses)』が、そして10月から4月はアウターウェアブランドが入る予定だ」。

複数の経営者たちが強調するのは、イノベーションの重要性だ。特にイノベーションそのものを目的とするのではなく、実際の顧客の行動やフィードバックから得られた洞察に基づいてイノベーションのリソースを活用することが大切だと説く。厳しい経済状況の中で成功する方法についてのパネルディスカッションで、ターゲット(Target)では返品プロセスに求める改善について顧客に調査したと、同社CEOのマイケル・フィデルケ氏は語った。

すると、2点の重要なフィードバックが寄せられたという。ターゲットの店舗まで自動車で行き、そのまま駐車場で返品したい、そして時々はそこでスターバックスの商品も受け取りたいというものだ。同社では今年から、店舗の外で返品できるようにし、注文したスターバックスの商品も駐車場で受け取れるサービスを開始した。

[原文:‘Brick-and-mortar retail is coming back’: How brands are rethinking the store

DANNY PARISI(翻訳:田崎亮子/編集:山岸祐加子)

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