毛のないネコに“謎のナルト模様”。その原因は?

痛くない? 治るの?

毛の無いネコ・スフィンクスのあいだで、不思議な皮膚病が見つかっています。この症状は「図形状紅斑(Figurate erythema)」と呼ばれ、体表にうず巻きのような模様が浮かび上がってきます。

図形状紅斑ができる原因はまだはっきりしないのですが、とにかくあまり例がなく、比較的無害で一時的で済むことが多いようです。

「紅斑」というのは皮膚が赤くなる症状を広く指していて、図形状紅斑自体は人間においてはすでに確認されています。人間の場合、その皮膚症状自体が病気であるというよりも、感染や自己免疫系など何らかの健康上の問題が元になった症状のひとつであることが多いとされます。

ネコを飼っている人やブリーダー、獣医師などからは、スフィンクスにこんな模様が出ていることがわりと前から報告されていました。しかし今回、スフィンクスの図形状紅斑について論文を発表したEkaterina Mendoza-Kuznetsova氏によれば、これまで学術的な研究はされてこなかったんだそう。そこで彼女らは、自らそれに取り組むことにしたのです。

タフツ大学カミングス獣医学部の臨床医兼教授であるMendoza-Kuznetsova氏は以下のように話しています。

私がロシアのモスクワで働いていたとき、私も同僚もこの症状をよく見ていました。臨床的な所見が独特で目を引くので、この症状についてより深く調査するのはかなり興味深かったです。

この症状に関してはブリーダーや飼い主、そして獣医のあいだでも多くの仮説があるので、これが何なのか?という疑問を少しでも解消したいと考えていました。

異常は見た目のみ、たまにかゆみも

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Image: Mendoza- Kuznetsova, et al/Veterinary Dermatology
複数のスフィンクスで記録された図形状紅斑。

研究チームは、米国内外(主にヨーロッパのバルト海地域)の幅広い獣医師に対し、スフィンクスの図形状紅斑例の報告を呼びかけました。その結果、彼らは11の症例を集めることができ、その中でいくつかの共通点を発見しました。

まず、すべての事例はオスで、ほとんどは1歳未満で発症していました。

そして飼い主にとっては不安なこの症状、当のネコたちは皮膚以外には全身性疾患や病気の兆候が見られませんでした。強いて言えば、11匹のうち1匹は、紅斑が出始めたのと同時期にときどき嘔吐していた程度。よくある皮膚感染の細菌に対しても陽性反応は出ませんでした。

おそらく一番負担だったのは、図形状紅斑に伴って、一部のネコにはかゆみがあったことでしょう。

食事などの生活習慣の変更や抗生物質投与といった治療でも、症状には効果がないようでした。紅斑が消えたりまた出たりといったことも時々見られましたが、最終的には薄くなったり、完全に消えたりしていきました。

この発見は学術誌「Veterinary Dermatology」に掲載され、東欧系スフィンクスの図形状紅斑に関して初めての正式な記録だとされます。この論文では、ネコの図形状紅斑には原因となる病気がないので、人間における図形状紅斑とは共通点が少なく、別ものとして考えるべきだとしています。

Mendoza-Kuznetsova氏は、スフィンクスにおける図形状紅斑は単に外見的な症状だけで、より大きな病気の兆候などではないと言っています。

この症状が現れるのは多くの場合若いオスネコなので、遺伝的要因があるのかもしれません。また、図形状紅斑は他の種類のネコにも現れる可能性があるものの、スフィンクスでもまれに見つかる程度なので、毛のあるネコではさらに見つかりにくいと考えられます。

今後は遺伝的背景を研究

Mendoza-Kuznetsova氏いわく、今回の論文は、ネコにおける図形状紅斑を理解するための最初のステップに過ぎないんだそう。

この次にとるべきステップは、この症状の遺伝的背景の可能性を調査することだと考えます。この研究のあいだ、我々は症状を持つネコからの情報を収集し、今後遺伝的な分析に集中した研究ができるようにしました。

では、スフィンクスを飼ってる人はどんなことに気をつければいいんでしょうか? Mendoza-Kuznetsova氏はこう助言してくれてます。

この症状は外見上だけの問題である可能性が高く、飼い主もそれほど心配する必要はないと考えます。ただそれでも、見た目が同じように見えるもっと深刻な病気の場合もあるので、獣医またはできれば皮膚科医にかかることをお勧めします。

また、この症状について国外からの報告をさらに収集できれば、この症状の分布や進行などについてよりよく理解できます。

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