新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症、いわゆるロングCOVIDに悩む12人の患者を調査した結果から、長期にわたる症状に悩まされる人はメモリーT細胞と呼ばれる免疫細胞が減少しているなど、健康な人と比べて免疫細胞数に違いがあることが明らかになりました。
Deep Phenotyping of Neurologic Postacute Sequelae of SARS-CoV-2 Infection | Neurology Neuroimmunology & Neuroinflammation
https://doi.org/10.1212/NXI.0000000000200097
Long COVID Seems to Make Distinct Changes to The Immune System : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/long-covid-seems-to-make-distinct-changes-to-the-immune-system
疲労や集中力の低下など、COVID-19から回復してもなお感染時に近い症状が残る「ロングCOVID」の症例は世界各国で報告されています。フローニンゲン大学の研究者らによると、2021年時点で少なくとも6500万人がロングCOVIDに罹患(りかん)している可能性があり、ロングCOVIDの研究団体であるPatient-Led Research Collaborativeは「さらに多いと推定される」と記しています。
ロングCOVIDの症状について詳しく調べるため、アメリカ国立衛生研究所のヤイル・ミナ氏らは12人のロングCOVID患者を対象に検査を行い、その結果を新型コロナウイルスに感染していない健康な人々のグループと比較しました。ロングCOVID患者のグループにはCOVID-19発症後9ヶ月(中央値)の人々が集まっており、患者たちは一般的な症状として疲労と認知障害を抱えていました。
ミナ氏らが患者の血液サンプルや脳脊髄液、MRIスキャンに異常がないかを調べ、自律神経系の機能障害を検出するための一連のテストを実施した結果、ロングCOVID患者と健康な人々の間で最も明確に見られた差異は「免疫細胞数」だったことが判明。
対照群と比較して、ロングCOVID患者はメモリーT細胞と呼ばれる免疫細胞の数が減少していました。この細胞は通常、再感染が起こった場合に備えて感染後長期間にわたって体内に存在しています。加えて、ロングCOVID患者は抗体を生産するB細胞、細胞を感知して破壊するナチュラルキラー細胞の数が増加していました。
こうした状態から、ミナ氏らは「免疫系が疲弊している可能性がある」と捉え、「感染から数カ月にわたりこれらの免疫異常が持続することは、感染が持続しているか、感染に対する異常な免疫反応を示しているかのいずれかである可能性が考えられます」と考察しました。
今回ロングCOVIDのグループとして集められた患者からは、立ち上がるときに心臓がバクバクしたり、めまいがしたり、気が遠くなったり、あるいは皮膚温度が低く、血管が収縮して皮膚への血流が減少していたりといった症状が確認されています。
この研究結果はロングCOVIDに対する免疫療法の有効性を検討する材料として有用である可能性があり、ミナ氏らは「さらなる調査と、潜在的な免疫調節剤の評価を必要とします」と記しています。
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