スパゲッティの完璧なゆで方を科学的に求める方法が発表される

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乾麺のスパゲッティをゆでる時、パッケージに書かれている時間を参考にしますが、実際はさまざまな条件で最適なゆで時間が変わるため、ゆで具合を完璧にするためには実際にスパゲッティを食べてみたり、スパゲッティを壁に貼り付けたりといった方法が必要になります。そんなスパゲッティのゆで時間を科学的に検証する方法が、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(UIUC)の研究者によって明らかとなりました。

Swelling, softening, and elastocapillary adhesion of cooked pasta: Physics of Fluids: Vol 34, No 4
https://aip.scitation.org/doi/10.1063/5.0083696

How to tell if your spaghetti is perfectly done using just a simple ruler | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2022/03/how-to-tell-if-your-spaghetti-is-perfectly-done-using-just-a-simple-ruler/

食材であるスパゲッティは物理実験の対象になることがよくあります。「スパゲッティの乾麺は必ず3つ以上に折れる」という物理法則を解明した研究は2006年にイグ・ノーベル物理学賞を授賞。さらにこの物理法則乗り越えて、スパゲッティを2つに折る方法も論文で発表されて話題となりました。

「スパゲッティの乾麺は必ず3つ以上に折れる」という現象を乗り越えて研究者が2つに折ることに成功 – GIGAZINE


UIUCのベックマン先端科学技術研究所に所属するSameh Tawfick氏がスパゲッティの研究を行ったきっかけは、新型コロナウイルス感染症の影響で大学が一時閉鎖され自宅で研究することになった時に、UIUCの物理学者の間で「台所でもできる物理実験」が話題となったことだそうです。Tawfick氏の研究室では人工筋肉などに応用できる「軟らかく長い繊維」を研究していたため、スパゲッティが実験材料としてちょうどよかったとのこと。Tawfick氏は「スパゲッティは私たちから見れば、長い繊維です。私たちは長い繊維の変形や絡み合い、接着を研究していますが、これら全ての現象をスパゲッティで観察できます」と述べています。

Tawfick氏は、ゆでたスパゲッティを鍋から引き上げた時に「スパゲッティの束がどのように動いてくっつくか」という点に注目し、ゆでたスパゲッティ同士がくっつくのは「チェリオ効果」が関係していると考えました。チェリオ効果とは、「O」の形をしたシリアルのチェリオをボウルに入れて牛乳を注いだ時に、牛乳に浮かぶチェリオが互いにくっつき、やがてボウルの中央から端に集まっていくという現象です。以下のムービーを見ると、チェリオ効果がどういうものなのかがよくわかります。

Cheerio effect – YouTube
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このチェリオ効果は液体の浮力と表面張力、毛細管現象の一種であるメニスカスが原因で起こります。そこでTawfick氏は、スパゲッティに働くチェリオ効果と毛細管現象を研究テーマに定めました。

Tawfick氏の率いる研究チームは、太さ約2mmのディチェコ製スパゲッティの乾麺2本を一定の間隔で垂直に保持できる装置を3Dプリンターで自作しました。また、80℃と100℃の蒸留水と食塩水を入れたビーカーを用意し、モーターで上下に駆動する台に乗せました。そして、装置に取り付けたスパゲッティをそれぞれのビーカーのお湯に浸したり出したりしながら、カメラでその様子を撮影し、スパゲッティのひずみ(スパゲッティの膨れ具合)、弾性(スパゲッティの軟らかさ)、2本のスパゲッティがくっついていない部分の長さ(以下の図のls)を測定しました。


その結果、加熱時間が長ければ長いほど、スパゲッティのひずみが大きくなることがわかりました。水に30分入れて加熱すると、スパゲッティの断面の半径は元の1.7倍にまで膨れあがり、10万倍も軟らかくなったとのこと。


また、lsは、加熱時間が長くなるにつれて短くなったことから、Tawfick氏は「スパゲッティがくっついていない部分の長さが、スパゲッティのゆで加減を推測するための最も有効な指標になる」と論じています。

以下の図(a)は、左からゆで時間0分・12分・18分・24分・30分のスパゲッティで、くっついていない部分の長さであるlsが短くなっていることがわかります。図(b)は縦軸をls、横軸をゆで時間にして結果を示したグラフで、100℃(赤)でゆでた方が、80℃(黒)よりもlsが早く短くなっていることが示されています。星マークはスパゲッティがアルデンテとなるポイントで、この星ポイントにグラフが重なるようにお湯の温度とゆで時間を調節し、lsを観察することで、アルデンテを科学的に生み出すことが可能になります。


さらにTawfick氏は、2本のスパゲッティの間隔・スパゲッティの半径・スパゲッティの弾性率・湯の表面張力・ゆで時間から、指標となるlsを求める方程式を算出しています。

Tawfick氏は、「私たちが行った実験によって、2本のスパゲッティの長さを測るだけでゆで加減を測定することが可能になります。この実験がプロのシェフによってさらに検証されれば、家庭でも応用できるようになる可能性があります。また、今回の研究は、おいしいスパゲッティの食感を再現するのに最適な調理時間を求めるための洞察をスパゲッティのメーカーに提供できると信じています」と述べました。

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