卸売 事業に本腰を入れるD2Cブランド各社:デジタルツール活用で商機広がる

DIGIDAY

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高級寝具・家庭用品のD2C小売業者であるブルックリネン(Brooklinen)は、卸売ビジネスを4年ほど手動で管理してきたが、Shopify(ショッピファイ)で卸売ウェブサイトを開設することになった。

「この優れた点を考えると、これまでの当社が極めて受身的だった」と、ブルックリネンの新規チャネルディレクターを務めるニコラス・ルーカック氏は述べる。「極めて受身的なモデルだった。誰かがウェブサイトを訪問し、アプリにホテルを所有しているというメッセージを送ると、会話を交わして、当社が注文に応じるというものだった。我々は、もっと積極的になりたいと考えている。社内でも、もっと積極的にこれらの顧客を獲得していこうという意識が高まっている」と、同氏は付け加えている。

一方で、自社の成長における次の段階として卸売チャネルに目を向けるD2Cブランドは増え続けている。Shopifyが2022年夏に開催したイベント「エディションズ(Editions)」で最初に紹介されたB2Bサービスを使って卸売ビジネスを運用しているブランドは、ダーマロジカ(Dermalogica)、クラニキニス(Kulani Kunis)など増え続けており、ブルックリネンもそれに加わった。それとは別に、卸売マーケットプレイスのフェール(Faire)はこの1年間で同社のプラットフォームを利用する小売業者の数が約45%増加したと報じている。ごく最近加わったブランドパートナーには、婦人服ブランドのYMIジーンズ(YMI Jeans)、美容品およびウェルネスプロバイダーのスキニーコンフィデンシャル(Skinny Confidential)、キャンディーメーカーのシュガーフィナ(Sugarfina)がある。一方、大手小売業者も新しいB2Bツールを立ち上げつつある。ウォルマート(Walmart)は1月、中小企業や非営利団体を対象に、「ウォルマートとのあいだでのビジネス購入を、迅速かつシンプルに、より費用対効果の高いものにする」ことを目的としたウォルマートビジネス(Walmart Business)を立ち上げた。

卸売のプロセスをデジタル化

卸売販売は新しいアイデアではないが、Shopifyやフェールのような企業はそのプロセスをさらにデジタル化しようと試みている。具体的には、ブルックリネンのように、D2Cを開始し、リソースが限られていて、卸売で商品を販売する場所に明確なこだわりがあるブランドに対応しようとしている。

この4年間でブルックリネンは、ウッドストック(Woodstock)のウッドストックウェイホテル(Woodstock Way Hotel)、コクサッキー(Coxsackie)のギャザーグリーン(Gather Greene)、コロラドスプリングズ(Colorado Springs)のキンシップランディング(Kinship Landing)といったブティックホテルを含む、B2B市場のホスピタリティクライアントに特化した商品ラインを開発する形で、ビジネスの流れを拡大しようとしたと述べている。しかし、顧客には、ブルックリネンの商品を購入したり、B2B向け割引や卸売の価格リストなどを見つける簡単な方法がなかったため、これは非常に複雑なプロセスだったと、ルーカック氏は語る。

「卸売顧客の前には常にギャップが存在していた」と、同氏は述べる。そして、「当社が1日に処理できる注文の数は限られていた」と付け加える。Shopifyを利用することで、「顧客は、必ずしもチームには依存しないような形で、商品を閲覧してカートに追加し、好きな頻度で取引を行うことができる」と、同氏は続ける。その結果、同社は卸売事業が昨年比で50%成長させることができると見込んでいる。

卸売の市場規模はD2Cの2倍以上

B2Bマーケットプレイスの売上は2021年に131%増加して565億ドル(約7兆5700億円)に達したことが、デジタルコマース360(DigitalCommerce360)のデータに示されている。そして、これらは同様の比率で増加し、2022年には1300億ドル(17兆4000億円)に達するだろうと、レポートは付け加えている。「当社の市場調査から、グローバルなB2Bおよび卸売市場はD2Cの2倍以上の規模であり、まだ開拓されていない収益が何十億ドルも存在することが示されている」と、Shopifyの商品ディレクターを務めるマニ・ファゼリ氏はメールの応答に記している。クラニキニスの場合、Shopifyは前年比でB2B卸売ウェブサイトの取引収益が前年比で300%増加し、B2B卸売の収益が60%増加したと述べている。

ルーカック氏は次のように述べている。「もっとも大きな変化は、このビジネスの潜在的な金銭価値だ。D2Cにははるかに多くの顧客が存在するが、各自の予算は少ない。B2B市場ではプロジェクトの規模がはるかに大きい」。

グレートポイントベンチャーズ(GreatPoint Ventures)のベンチャーパートナーであるアーネスト・スウェット氏によれば、多くの新興企業のあいだで卸売販売に参入する流れがはじまったのは、5年ほど前にD2C新興企業のコンバージョン指標が頭打ちとなり、同時に広告への支出が増加したときだ。「これにより人々は、顧客ベースにリーチする新しい方法をより効率的に見つける必要があると考えるようになった」と、同氏は述べる。スウェット氏は以前に、さまざまなブランドやeコマース企業の航空流通サービスを本質的に迅速化させているフレクセ(Flexe)やエアースペーステクノロジーズ(Airspace Technologies)といった企業に投資している。

ブランドは従来、卸売の注文のためPDFのカタログ、スプレッドシート、メールを使うことを強いられ、これらは非効率的で面倒なものだった。Shopifyが刷新した卸売チャネル「B2B on Shopify(ビーツービー・オン・ショッピファイ)」では、Shopify Plus(ショッピファイプラス)の業者が、消費者向けビジネスで使っているのと同じプラットフォームで、ほかの業者に販売できるようになった。

ファゼリ氏は次のように記している。「オンライン・ファーストは、現代のコマースのスタンダードとなった。小売業者は、消費者向けにうまく機能してきた自社のブランド優先D2Cアプローチを、B2B運用にも応用し、オーダーメイドのセルフサービス型購買体験を作り出そうとしている」。

オンラインに固執しない

ブルックリネンが卸売に参入したことは、まさに顧客主導だったと、ルーカック氏は語る。「4、5年前の当社の販売は、顧客が州の北部にホテルを所有しており、当社の寝具が気に入ったので購入したいと連絡してくる、というものだった。その時、我々の商品を希望しているホテル、短期レンタル、エアービーアンドビー(Airbnb)などにも市場があるはずだと考えた」と、同氏は振り返る。

これは、成長するブランドにとって自然な流れなのだと、スウェット氏は見ている。「各社は、どうすれば収益性を改善できるのか? どうすれば成長を続けられるのか? という問題への解決法において賢くなってきたのだと思う。そして、フェールやほかのマーケットプレイスが、これまで触れることのなかったコミュニティへの新しいチャネルを提供するなら、そこに参入するのは当然のことだ」と同氏は語る。

D2Cブランドが成熟段階に達するにつれ、もっとも抜け目のないD2Cブランドは、オムニチャネルのビジネスへと進化していくだろうと、ルーカック氏は語る。「歴史的に見ても、オンラインに固執したD2Cブランドの多くは成功しなかった。将来を考えれば、オンラインはチャネルのひとつではあるが、小売もまた重要なチャネルだ。そして、卸売もまた重要なチャネルだと考えている。もっとも賢いD2Cブランドは、オンラインだけでなく、顧客が存在する場所で顧客と接触するために、オムニチャネルビジネスになるにはどうすれば良いかを考えはじめていると思う」と、同氏は述べている。

[原文:More DTC brands are seeking new tools to expand to wholesale]

Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Illustration by Ivy Liu

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