「手の届くラグジュアリー」:D2C新興企業がこぞってキャンドルを発売する理由

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今年のホリデーシーズンは、より多くの新興企業が、人々にそれぞれのお気に入りのD2Cブランドの香りで自宅を満たしてほしいと考えている。

商品開発戦略の一環として、グッズ開発をする新興企業が増えるなか、11月から12月は、特にキャンドルの発売が多く行われた。美容品やフレグランスの新興企業はこの注目のアイテムを取り入れることにもっとも熱心だったが、今では買い物客が自分たちの好みの唐辛子コーヒー日焼け止めから着想を得たキャンドルを選んで集めることができるようになった。

キャンドルはホリデー期間のギフト商品として人気があり、ホリデーシーズンに合わせて限定版を発売するのは、多くの新興企業にとって、ギフトガイドへの掲載数を増やすための手段となっている。しかし、これは同時に、コアな顧客に対して、自分用であれ、ショッピングリストに載っている人々のためであれ、通年にわたって買い物してもらう方法を探しているD2C新興企業にとって、アクセサリーやグッズを作り上げることが、どれだけ重要であるかを示すものでもある。

手の届くラグジュアリー

キャンドルの開発において、多くのD2C新興企業は、フレグランス会社によってこれまでに採用されてきた戦略を使用している。男性向けボディケアブランドのヒューロン(Huron)の共同創設者で最高開発責任者を務めるマット・テリー氏は、キャンドルを「手の届くラグジュアリー」と位置づけている。同氏は過去にエスティローダー(Estee Lauder)でグッズ開発に従事しており、美容品コングロマリット企業である同社の男性向けブランドのトムフォード(Tom Ford)も手がけていた。

テリー氏は、キャンドルは通常、トムフォードのフルサイズのコロンのボトルよりも安価なため、同社のギフト戦略の重要な部分であったと語る。現在、同ブランドのキャンドルの多くは価格が99ドル(約1万3500円)から135ドル(約1万8400円)で、これに対して男性用フレグランスは150ドル(約2万400円)から210ドル(約2万8600円)だ。このため、フレグランスに200ドル(約2万7200円)を支出できない人や、すでに同社のコロンを毎日使用している誰かへのギフトを考えている人にとっては、キャンドルが論理的にもお勧めとなる。

「特にここ数年は、多くの人々が自宅で過ごすか、自宅で仕事をしていたため、キャンドルは、人々が楽しめる感覚的なタッチポイントとして喜ばれている」と、同氏は述べている。

ギフトとしての可能性

ボディウォッシュ、シャンプー、コンディショナー、そのほかのバス用品を販売しているヒューロンは10月、同社のシャンプーやコンディショナーのシトラスやサンダルウッドの香りから着想を得た限定版のキャンドルの発売を決定した。シャンプーのジャンボボトルが36ドル(約4890円)であるのに対し、キャンドルは1個につき30ドル(約4080円)と同社のほかの商品と同程度の価格だ。実際の販売数量を明かしていないが、この商品を恒久的に商品ラインナップに加えるかどうかを、顧客からのフィードバックをもとに、新年に検討するという。


Image via Huron

ヘアケアブランドのプローズ(Prose)も同様に、自社のカスタムのシャンプーとコンディショナーの商品ラインでもっとも売れている3つの香りから着想を得た3種類のキャンドルを11月に発売した。「当社は、消費者がホリデーに親しい人たちにギフトとして贈れるようなものを提供したいと考えた」と、同社の商品イノベーション担当バイスプレジデントを務めるアレクサンドリン・デルリュー氏は米モダンリテールに語った。

プローズはアクセサリーの商品ラインナップを拡大し、この1年間でヘアブラシやタオルなどを開発してきた。デルリュー氏は、同社の「最優先事項はアクセサリーをヘアのカテゴリーと結び付けること」だと語る。しかし同氏は、家庭やライフスタイルのカテゴリー、つまり、特に同社が顧客から受け取った大量のデータからインスピレーションを得て商品を作り出せる分野に、アクセサリーを追加するほうが有意義なため、そちらを検討していると付け加えた。

「切断された手」など個性派キャンドルも

美容品カテゴリー以外の新興企業にとって、キャンドルやほかの変わったグッズを販売する大きな動機は、プレスでの言及を増やすことだ。缶入り飲料会社のリキッドデス(Liquid Death)は10月、デザインアイコンのマーサ・スチュワート氏と提携し、「切断された瞬間(dismembered moments)」キャンドルを発売した。ハロウィンにちなんだこのキャンドルは、リキッドデスの缶に切断された手が取り付けられたようなデザインだ。

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同じように、アジアの調味料ブランドであるフライバイジン(Fly by Jing)のグッズも、食品ブランドとしての同社の評判を、食料品店の棚以外の場所で広めるのに役立った。同社はパーカーやスウェットパンツを販売しており、これらの商品はルピー・カウル氏やティンクス氏のようなインフルエンサーが身に着けている様子を公開している。創設者のジン・ガオ氏は、同社でもっとも売れているグッズは、たとえば、フライバイジンのソースの瓶の上に取り付けるようデザインされたサルセロ(Salsero)スプーンなど、通常は「当社の主力商品ラインと密接に連携しているもの」であるとメールで語った。

しかし同社は、リキッドデスと同様、自社ブランドを未開拓の分野に拡大することに意欲的であることを示した。同社は前回のホリデーシーズンに、トリビュートペッパー(Tribute Pepper)の香りのキャンドルを発売した。これはキャンドルの新興企業であるシブリングス(Siblings)との提携によりデザインされたもので、顧客は古いフライバイジンの瓶をキャンドルホルダーにすることができる。「このキャンドルに対しては、1年間にわたってシブリングスのコミュニティと、フライバイジンのコミュニティの両方から多くの熱狂的な反応があった。非常に反応が強かったため、当社はこのグッズを通年にわたってサイトに置くことを決定した」と、ガオ氏は述べている。このキャンドルが成功したのは「当社のほかの商品群とはまったく異なる商品だったため」と考えていることを、同氏は付け加えた。

ブランドの耐久性を高める

今年キャンドルを発売したD2Cブランドの多くは、ホリデー用の限定版グッズとして発売したが、この商品戦略は、顧客に、シャンプーや調味料といったブランドの主力商品を買い込むとき以外にも自社のことを考えてもらうようにすることで、ブランドの耐久力を証明しようと試みるD2C新興企業が増えてきていることを示唆している。

たとえばリキッドデスは、ブランド名付きグッズを自社のマーケティング戦略の主要部分とした。この方針は成功し、同ブランドは昨年300万ドル(約4億800万円)分のグッズを売り上げた。

「当社は、自分たちをエンターテイメント会社に近いと考えているため、新しいグッズをデザインするときや、新商品を発売するときは、人々がどのようなものを愉快で楽しいと感じるだろうか、という観点から行う」と、リキッドデスのマーケティング担当バイスプレジデントを務めるグレッグ・ファス氏はメールで語った。

[原文:‘An affordable luxury’: Why so many DTC startups are launching candles]

ANNA HENSEL(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Prose

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