eコマース「 ザ・バーティケイル 」、ソーシャルコマースプラットフォームとして再始動:社会意識の高い消費者たちの「発見の場」に

DIGIDAY

こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトとなります

eコマースサイトのザ・バーティケイル(The Verticale)は、買い物客がプラットフォーム上でキュレーションされた社会的意識の高いブランドを発見できるよう、ソーシャルコマースへの移行を進めている。

2021年に創設された同社は、マーケットプレイスモデルからの転換を図ろうとしている。従来は自社サイトでドロップシップ形式で商品を販売していたが、方針を転換し、現在は、エコフレンドリーなブランドパートナーが販売する商品をユーザーが探すためのサイトになったと語る。同社は専用のブランドのページで、創業者による動画や、インフルエンサーが厳選したお勧め商品など、さまざまなコンテンツを通じて、ユーザーに商品の魅力を伝え、最終的に商品を購入してもらうことをめざす。顧客が商品のリンクをクリックすると、最終的にブランドのウェブサイトに転送されてチェックアウトが行われ、売上につなげることができる。

ザ・バーティケイルが方針を転換するに至ったのは、社会意識の高いショッピング行動が増えてきており、消費者はそのために余分の額を支払ってもよいと思っていることを受けたものだと、フォレスター(Forrester)のシニアアナリストを務めるスカリタ・コダリ氏は米モダンリテールに語った。マッキンゼー(McKinsey)とニールセンIQ(NielsenIQ)による2023年2月の調査によれば、ESG(環境、社会、ガバナンス)に関する「ケージフリー」「ビーガン」「エコフレンドリー」などをを謳った商品は、2017年から2022年までの5年間で平均28%の累積成長率を記録している。それとは別に、フォレスターの調査では、18歳から23歳までのZ世代の回答者のうち、半数以上(51%)がCSR(企業の社会的な責任)に関して自分と同じスタンスを支持していることを確認するために企業に対する調査を行っていることが判明している。

ブランドを発見するための場所

ザ・バーティケイルは、ブランドパートナーにオンボーディング料金を請求するほか、ユーザーが自社のプラットフォームからブランドのウェブサイトに移動する際には、さらに売上の一定割合を徴収する。同社はアーユルベーダのスキンケアブランドのアーブラニ(Aavrani)、廃棄物ゼロのヘアケアブランドのスーパーゼロ(Superzero)、サステナブルなスニーカーブランドのカリウマ(Cariuma)など30ブランドと、自社ウェブサイトを再始動する。

CEOを務めるジャクリン・グローマン氏によると、消費者への調査から、人々がブランドのウェブサイトでチェックアウトすることを好んでいることが判明したことから、リブランディングすることを選択した。「買い物客はチェックアウトが近づくと、当社のサイトでの体験と、ブランドサイトでの体験とを比較することが非常に多いということがわかった」と、同氏は米モダンリテールに語った。

同氏は、消費者が商品の価格や色などの仕様を確認しようとすることや、ブランドの「非常に特化された」eコマースストアで商品を購入したいという希望が、この断絶を強めていると語る。さらに、「これらの消費者はすべて、我々のサービスを、ブランドを発見するための場所だと認識していた」と、同氏は述べている。

「消費者は、ブランドから中間者を排除されることを望んでいないことがわかった。そして当社も、企業として、ブランドパートナーと競合しなくてはならない状況は避けたかった。そこで、それに対応できるよう、当社のビジネスモデルを適合することにした」と、同氏は説明している。

クリエイターとの協力

グローマン氏は、「この転換は、我々の既存の投資家のひとつが支持してくれた」と、米モダンリテールに語った。マーケットプレイスはコスト高になることがあり、「当社の新しいビジネスモデルは、特に今日の市場環境において、可能な限り損益がないように運営している」と、同氏は付け加えている。

同氏は、ザ・バーティケイルでの新しいソーシャルショッピング体験のすべては、「コミュニティ指向を感じさせ、ミレニアル世代やZ世代の消費者のニーズを満たすよう、インタラクティブで人間性のあるユーザー体験を促進するよう、意図的に設計されている」と語る。

平均価格が80ドル(約1万600円)から100ドル(約1万3300円)の商品を販売するこの招待制プラットフォームは、エイミー・リュー氏やデイビッド・コミサルチク氏など30人のクリエイターやトレンドセッターの協力のもと、自社のリブランディングに関する認知度を高めようとしている。また、これらのクリエイターには、ザ・バーティケイルでのおすすめ商品をプロモーションしてもらうための専用ページを、今後数週間以内に提供する予定だ。

「これは重要な要素だ。そして、それ以外に多くの追加マーケティングチャネルがある。当社のもっとも成功したマーケティングチャネルは、いつでもメールのニュースレターだった。そのため、当社はこのニュースレターを非常に重視している」と、グローマン氏は付け加えている。

ブランドのストーリーを伝える

同社プラットフォームの審査は、廃棄物ゼロ、倫理的に正しい生産環境、クリーンな材料など、具体的な基準に基づいて行われる。サイトには各ブランドが特定の基準をどれだけ満たしているかを示すスコアカードが表示される。また、マルチビタミンブランドのリチュアル(Ritual)や、スイムウェアブランドのアンディースイム(Andie Swim)など、新しいブランドパートナーをブランド一覧に追加した。「これらの中には、以前から提携しているブランドパートナーもいれば、これまでに業界内で関係があった新規パートナーもいる」と、グローマン氏は述べている。

ザ・バーティケイルは、ブランドのストーリーを伝えるために常にコンテンツを多用してきたと、グローマン氏は語る。同氏自身にとって、創業者から直接話を聞くことは、消費者としてもっとも大きな影響を受けたことのひとつだった。「私がこれらの動画をプラットフォームに持ち込み、消費者がこうしたストーリーを直接聞けるようにしようと思ったのは、それが大きなきっかけだ」と、同氏は付け加えている。

ザ・バーティケイルは最初から、各ブランドのページに、創業者を紹介する動画「Meet the founder」をひとつずつ埋め込んでいる。これは、創業者による10秒から15秒の動画で、創業者自身と、会社を立ち上げた理由について紹介している。そして、買い物客に対し、ブランドやその商品について質問するよう勧めている。

動画の統合のために、トルストイ(Tolstoy)と提携した同社は、長期的にはさまざまなブランドの商品に多くの動画を追加することを計画していると、グローマン氏は述べている。

社会意識の高い消費者たち

フォレスターのコダリ氏によれば、「米国の消費者の約5分の1は、社会意識の高いブランドを探すと回答する」。それは「資源の浪費やカーボンフットプリントについての認識が高まっているから」だという。

しかし、「多くのグリーンウォッシュも行われており、消費者もそれを意識するようになってきている」と、同氏は警告している。ザ・バーティケイルは規模の拡大に伴い、この課題、すなわち自社のプラットフォーム上のブランドが、単なるグリーンウォッシュではないという信頼を顧客から得るという課題に直面し続けるだろう。ただ、同社はブランドのスコアカードで、各ブランドがサステナビリティのための取り組みをどのように行っているかを詳しく示すことで、この問題に対してすでに対処している。

「実際のCSRレポートを提出できるか、監査可能な何らかの行動の証拠があれば価値があるだろう」と、コダリ氏は述べている。

[原文:DTC marketplace The Verticale is relaunching as a sustainability-focused social commerce platform] 著者:Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:)

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