「人材重視への回帰だ」:アドウィークで業界幹部が語った、仕事の未来を生き抜く方法

DIGIDAY

コロナ禍は私たちの働き方を一変させた。広告/マーケティング業界幹部の念頭にあるのはいまや、フレキシブルな勤務スケジュール、ハイブリッドな職場環境、多様性といった諸々だ。ニューヨークにおいて先日、バーチャルと対面のハイブリッド方式で開催された2021年度のアドバタイジングウィーク(Advertising Week)でも、仕事の未来予想図とそこで生き残るための最良の方法について、業界幹部らが忌憚のない意見を交換した。

言及された事柄には、コロナがもたらしたマイナス面だけでなくプラス面もある。コロナ禍以前は、卓球台や、いつでも飲める水出しコーヒー、無料ランチを提供するカフェテリアなどなど、贅沢な福利厚生を偏重する流れがあったと、Z/ミレニアル世代女性のプロフェッショナル向けソーシャルネットワーク、Rise(ライズ)の創業者兼CEOヴィヴィアン・チェン氏は指摘する。だが、コロナ禍が経営陣のそうした姿勢を改め、代わりにワークライフバランスや従業員リソースを重視させるようになったという。

「人材重視への回帰だ」と、氏は仕事場の変化をテーマにした午前のパネルディスカッションで語った。「人生において真に大切なものとは何なのか? まさに概念の大再編が起きている」。

実際、広告/マーケティング業界をはじめ、米労働界全体に「大退職時代」の影が忍び寄るなか、ますます多くの雇用者が福利厚生として、従来の健康保険だけでなく、メンタルヘルス維持管理手当フレキシブルな勤務スケジュール、さらには 給与の即時支払まで提供しはじめている。

「仕事とは単に労働をするだけではなく、さらに知識と技能を身につけるためのものという考え方や、ワークライフバランスという考え方が提唱されはじめた時代の記憶は、私の世代にもはっきりと残っている」と、生理痛緩和ソリューション提供企業、ホールベア(Whole Bar)の創業者タビサ・ホルバート氏は同パネルディスカッションで語った。「そうした諸々は福利厚生と呼ぶべきではない。私たちの生き方そのものと捉えるべきだ」。

「最悪の選択というしかない」

もちろん、仕事の未来はフレキシブルな職場環境に限定されるものではない。2021年度のアドバタイジングウィーク中、テーマの異なるふたつのセッションにおいて、職場をよりインクルーシブなものにするためには、ダイバーシティ、エクイティ(道徳的衡平)、インクルージョン(包括性)の実践が必要だと指摘されたのは、偶然ではない。

女性および共働き夫婦がテーマのパネルディスカッションでは、求人情報専門検索エンジン、インディード(Indeed)のグローバルブランドマーケティング部門VPジェニファー・ウォーレン氏が、同社の調査結果に基づき、共働き夫婦の実に半数以上が仕事の充実か家庭の円満かの二者択一を迫られていると感じている、と述べた。

「最悪の選択というしかない」とウォーレン氏は語った。

別のパネリストで、ケアギバー(介護者)に特化したオンラインマーケットプレイス「ケア・ドットコム(Care.com)」のコンシューマー&エンタープライズ部門ジェネラルマネージャー、ナタリー・メイスリック氏も、同様のコメントをした。「私たちが理想からどれほど遠く離れているのか。その現状に光を当てるのに、コロナという災禍が必要だった」。

それはDEI(多様性・公平性・包摂性)に関しても同じだと、広告エージェンシー、UMワールドワイドのチーフダイバーシティオフィサー、ジェフ・マーシャル氏は、企業文化をテーマにした別のパネルディスカッションで指摘した。

「株式会社アメリカ(Corporate America)はいまだ、発見の段階にいる。2020年の諸々が起きた際、多くの国は目を覚ましたが、株式会社アメリカがしたことと言えば、『参ったな、ちょっと気にしてみるか』と言っただけだ」。

トップダウンの取り組みが不可欠

ジョージ・フロイド氏の殺害を受けて、エージェンシー勢は多様性を実践し、DEIの牽引役として女性や有色人種を次々に採用した。とはいえ、するべきことはまだまだあると思われる。DIGIDAYの告白シリーズにおいても、2名のエージェンシー幹部が、そうした試みが薄っぺらなもので終わる危険性を指摘している。

広告/マーケティング界に変化をもたらすには、リーダー自らが共感、認識、謙虚を実践する、トップダウンの取り組みが不可欠だと、マーシャル氏は指摘する。

「我々は依然、その発見ループのなかに留まっている。この業界のリーダーにはそこから抜け出し、行動の段階へと進んでもらいたい」。

[原文:‘It’s back to a talent market again’: Advertising and marketing execs navigate the future of work at Advertising Week

KIMEKO MCCOY(翻訳:SI Japan、編集:長田真)

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