ナイキ第3四半期で2ケタ増収:「過剰在庫」問題改善と「ダイレクト販売」好調がカギに

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ナイキ(Nike)は、堅調なD2C販売、的確な在庫管理、中国での販売の回復から、主要市場で勢いを取り戻しつつある。

ナイキは3月21日火曜日、会計年度第3四半期の収益が124億ドル(約1兆6200億円)に達し、前年同期と比べて14%増加したことを明らかにした。同社のダイレクト販売は、ウェブサイトと直営店を含めて53億ドル(約6940億円)に達し、前年同期比17%増となった。この最新の決算発表期間は2023年2月28日までの3カ月で、スーパーサタデー(Super Saturday)やクリスマスなどの大きなショッピングイベントによる売上が含まれている。

在庫状況の改善

重要なのは、ナイキが昨年のもっとも大きな問題点のひとつだった過剰在庫について進展をなしとげたことだ。ほかのアパレルやフットフェアの小売業者と同様、ナイキも在庫過多を解消するためのプロモーションを、特にホリデーシーズンに行った。しかし、マークダウンは同社の同四半期における成長率が330ベーシスポイントも減少するという結果ももたらした。よい点としては、中国において、ゼロコロナ政策の撤回による課題を乗り越えて1ケタの成長を達成し、新商品や新しいコラボレーションへの投資を続けている。

同社は現在、89億ドル(約1兆1700億円)相当の在庫を抱えている。これは前年同期より16%多く、決算報告によれば「商品の投入コストの増大と輸送コストの上昇」が主な理由だ。しかし、第1四半期および第2四半期では、それぞれ97億ドル(約1兆2700億円)と93億ドル(約1兆2200億円)だったことからすれば、明確に改善されている。

EVP(エグゼクティブバイスプレジデント)兼最高財務責任者を務めるマット・フレンド氏は次のように述べている。「当社は、マーケットプレイス全体にわたり、健全な在庫状況で年を越せるという確信をますます強めつつある。実際に、当社ブランドの推進力を考えれば、当社は年末までに、今まで考えていたよりも多くのユニットをさばく予定だ」。

中国ゼロコロナ政策の撤回

この四半期でもうひとつの明るい材料として、中国で躍進したことだ。ナイキは中国において、競合他社と同様に政府のゼロコロナ政策によって店舗の閉鎖やロックダウンが命じられたことにより、大きな影響を受けていた。11月と12月に中国は規制を緩和しはじめ、ナイキはこの地域で数四半期ぶりに利益が増加しはじめた。直近の四半期では、同地域における収益は1%増加した。

フレンド氏は3月21日の発表で、1月に入ると、「実店舗への訪問者が回復し、春節前後における小売の強い勢が2月に加速した。特に、当社の在庫状況がクリーンになったため、顧客にフレッシュな季節の新商品を販売できるようになったことが訪問客を後押しした」と語った。中国は通常、ナイキにとって売上高で3番目に大きな市場だ。課題を抱えていても、「中国におけるナイキの成長の基盤は盤石だと確信している」と、同氏は付け加えている。

また、ナイキは競合他社がそれぞれ一連の課題に直面するなか、その恩恵も受けた。アディダス(Adidas)も中国で大規模な販売を行っているが、特に厳しい状況にある。同社は依然として売れ残ったイージー(Yeezy)の商品を数億ドル分も抱えており、今年初めには、2023年度の営業損失が7億ユーロ(約987億円)になる可能性があることを警告した。また同社は、1月にプーマ(Puma)から移籍してきた新しいCEOであるジョーン・グルデン氏のもとで、リーダーシップに合わせた調整を行っている最中だ。

商品の開発とイノベーション

ナイキは在庫の削減に取り組む一方で、競合他社に遅れないよう商品のイノベーションに注力している。この数カ月にエアマックススコーピオン(Air Max Scorpion)や、ペガサストレイルフォー(Pegasus Trail 4)といったシューズ、フォワード(Forward)アパレル商品ラインを発売した。また、エアジョーダン(Air Jordan)や、エアマックス(Air Max)、ダンクロー(Dunk Low)など、もっとも人気のあるいくつかのモデルの新しいカラーリングやコラボレーションを発表した。

3月初めには、バスケットボール選手のサブリナ・イオネスク氏とのパートナーシップによるシューズ、サブリナワン(Sabrina 1)を発表した。また、子ども向けの新しい商品であるエアマックス270ゴー(Air Max 270 Go)を発売し、今後、エアジョーダンスリー(Air Jordan 3)の「レトロ」スタイルを販売することを予告した。バスケットボール選手のジェイソン・テイタム氏との提携によるシューズ、ジョーダンテイタムワン(Jordan Tatum 1)は4月7日に発売される。

ナイキは、過去に在庫の問題を抱えていたとき、人々に自社商品を購入するよう説得するため、「常に、商品の開発と商品のイノベーションをストーリーテリングに用いてきた」と、ウェドブッシュセキュリティーズ(Wedbush Securities)の普通株調査担当シニアバイスプレジデントを務めるトム・ニキック氏は米モダンリテールに語った。ナイキは顧客に対して、「ここにクールで新しいTシャツがある。そして、今まで見たこともないようなお洒落なシューズがある。新商品で、昨年の商品よりもさらにいいものだ」と話すことができると、同氏は述べている。

「歴史が参考になるなら、ナイキは自社が保有している商品開発エンジンを活用することで、プレミアムブランドの座を維持できるだろう」と、ニキック氏は付け加えている。

[原文:Nike is making solid progress on its inventory glut problem]

Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Nike

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