「デジタルの限界」にも挑み、グローバル展開も視野に:アディアムCEO兼クリエイティブディレクター前田華子氏

DIGIDAY

ラグジュアリーファッションブランド、アディアム(Adeam)が10周年を迎えた。同社CEO兼クリエイティブディレクターの前田華子氏がアディアムの成長を振り返った。

デザイナーの前田氏は東京に生まれニューヨークで育ち、東京拠点のファッションブランド、フォクシー(Foxey)のバイスプレジデントでもある。同氏は、アディアムの成功のもっとも重要な要因のひとつはゆっくりではあるが、着実な成長を受け入れたことだと述べている。「重要なのは顧客を本当に理解することであり、速すぎる方法や急ぎすぎる方法でブランドを拡大しないことだ」と前田氏はGlossyポッドキャストの最新エピソードで語った。

たとえば、アディアムは社歴10年だが、アンバサダーとのコラボレーションを実施するようになったのはつい最近のことである。最初のコラボは、2020年2月、テニス界のスターである大坂なおみ氏との、大坂氏にとっても初のファッションコラボレーションだった。最新はモデルのキャロリン・マーフィー氏との6月のコラボで、大坂氏とのパートナーシップから得られたベストプラクティスを利用した。

「(キャロリン・マーフィー氏との)コラボレーションは100%持続可能なコレクションであったため、ユニークだった。オーガニックコットンや、服のサイクルの最後には土に還る生分解性のある生地を使った」と前田氏。「このようなコラボレーションを引き続き行っていきたい。なぜなら、そのようなコラボレーションからはメインコレクションで違うものを制作しようというインスピレーションを受けるからだ」。

アディアムの次のステップについて、前田氏はグローバル展開を視野に入れている。ニューヨーク市にゼロから旗艦店を築き、ヨーロッパ、中東、そしてアジアの一部でアディアムを成長させる計画があるという。

以下に、対談のハイライトを読みやすさのために若干編集して紹介する。

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拡大前に顧客の信頼を築くこと

「(早い段階では)eコマースサイトに重点を置いていなかった。その主な理由は価格だった。(ラグジュアリーな)価格では(顧客にとって)試着できること、実際に製品を見られることが重要であるし、(eコマースサイトを計画し始めたときには)アディアムの知名度はそれほど高くなかった。当社の製品のフィット感や生地のシルエット、すでにあるワードローブとのスタイリングなどについて顧客にはあまり知られていなかった。だが、創業から8年が経ち、世界中に物理的なロケーションが確立できて、多くの顧客にアディアムについて、そして当社が使っている生地などについて詳しく知ってもらえるようになったし、(当社に対する信頼が築けたので)D2Cに移行する準備ができたと思った。(今では)当社の品質とフィットについていっそう信頼されるようになっている」。

パンデミック中に創造性を高めること

「当ブランドとクリエイティブな仕事にフォーカスする時間が増えた。パンデミック以前はいろいろなイベントを行っていたし、レッドカーペット用のカスタム(ルック)も多く手がけていた。ビジネス面で携わっていたことも多かった。しかし、(パンデミックの最中に)ブランドのクリエイティブな要素にフォーカスできたことは私にとって本当に役立った。 (パンデミック初期のキャロリン・マーフィー氏とのコラボレーションは)デジタルコミュニケーションとリモートでの交流の限界を感じられたすばらしい経験だったし、楽しい挑戦だった。(パンデミックによって)コレクションの制作をどうクリエイティブに行えるかが示された」。

デジタルのショーと対面ショーのメリット・デメリット

「クリエイティブなアウトレットとして、デジタルショーにはそれなりの利点がある。それは、クリエイティブ面でいろいろなことが可能になるし、すべてが記録できるからだ。2022年春向けにバーチャルアイランドを制作して、モデル全員をグリーンスクリーンで撮影し、バーチャル空間を作り上げることができた。事前に準備したデジタル形式がなかったならこのようなことは可能ではなかっただろう。だが、対面のショーにも、空間を共有して、同じ時に同じスペースで他人と一緒にいるというメリットがある。その経験を分かち合えることはとても特別だ。どちらの形式でもできることもある。いまではインスピレーションやそのシーズンにやりたいことに応じて選択する自由がある」。

新進デザイナーへのアドバイス

「始めのころは、自分よりも大きなビジネスを営んでいる人や、成功した人、有名な人と自分を比較していた。いま振り返ってみると、自分自身にフォーカスして、自分にできることや自分が(顧客に)提供できることに集中することが常に重要だと思う。ファッション業界とファッションの会話全体に貢献できるユニークな視点は何だろうかと考えてみることだ。私からのアドバイスは、ほかのデザイナーと自分を比較しないこと」。

[原文:NYFW designer Hanako Maeda on testing ‘the limits of digital’ during the pandemic

TATIANA PILE(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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