創業50年の老舗バー、「レトロ映え」に見出した活路 「お店を守りたい」奔走するマダムの思い

J-CASTニュース

   東京・新宿の新宿御苑からほど近い場所に、1970年から続くライブサロン「新宿カールモール」がある。バーとして開業後、音楽と酒を楽しむ場として続いてきて、今は音楽ライブ会場に、撮影スタジオにと使われている。

   初代店主が維持してきた空間を引き継いで、現在マダムとして店を切り盛りするのが小林宏美さんだが、この店との縁もちょっとした偶然からだった。50年前とほとんど変わらぬたたずまいを守り、コロナに揺れる夜の店を守るべく奔走してきた日々を聞いた。

  • 新宿カールモールでマダムを務める小林宏美さん

    新宿カールモールでマダムを務める小林宏美さん

  • レトロな空間で音楽を楽しめる

    レトロな空間で音楽を楽しめる

  • 棚には中原淳一のイラストも並ぶ。以前に関連イベントを開催する縁があった

    棚には中原淳一のイラストも並ぶ。以前に関連イベントを開催する縁があった

  • 店内のどの場所も写真映えしそうな雰囲気だ

    店内のどの場所も写真映えしそうな雰囲気だ

  • 50年以上バーとして酒と音楽が楽しまれてきた

    50年以上バーとして酒と音楽が楽しまれてきた

  • 壁紙やアクセサリーにも注目

    壁紙やアクセサリーにも注目

  • 先代マスターの好みを活かした灯具も開業当時のまま

    先代マスターの好みを活かした灯具も開業当時のまま

  • 異国情緒も感じるインテリアとサロンのロゴ

    異国情緒も感じるインテリアとサロンのロゴ

  • 左手に見える扉が電話ボックスで、コスプレ撮影にも人気の空間だ

    左手に見える扉が電話ボックスで、コスプレ撮影にも人気の空間だ

2層のフロアに広がるアンティークな空間

   東京メトロ丸ノ内線新宿御苑前駅・都営新宿線新宿三丁目駅から徒歩圏内の新宿カールモールに一歩足を踏み入れると、2層のフロアには時間を巻き戻したかのようなアンティークな空間が広がる。2階にはピアノも据え置かれ、こぢんまりとしながらも音楽を楽しめる空間だ。内装は壁紙を一度張り替えたほかは1970年の開業以来ほとんど変わっておらず、調度品・照明器具に至るまで昭和時代のものを使い続けてきた。

   稀少な内装を活かしてバーやライブ会場としてだけでなく、写真・映像の撮影スタジオとして積極的にツイッター上でアピールしている。現在マダムとして店の運営にあたっているのが小林さんで、初代マスターの故・小倉恒克さんから受け継いだ。

   21年12月に小倉さんが亡くなったが、「先日亡くなった大好きなマスターから譲り受けたお店を守りたい!そのためには撮影スタジオとしてもっと多くの方に利用していただきたいと思っています」と訴えた22年1月26日のツイートが話題を呼び、写真やコスプレ好きの層にも知名度が広がった。

   小林さんとカールモールの縁は約20年前に始まった。カールモールと同じビルに入居するライブハウスでアコーディオンの弾き語りライブに出演していた小林さんが偶然カールモールの扉に興味を持ち、小倉さんに誘われて店内に入ったことがきっかけだった。その後、音楽ライブの方も小倉さんに誘われる形でカールモールで行うことが増えた。

「レトロなものがすごく好きだったので、店内を初めて見た時は『こんなところが東京にあるんだ!』って驚きました。海外生活の経験がある小倉さんが内装もすべて考えました。70年頃の新宿界隈は歌声喫茶もたくさんあって、音楽を提供する小さな店も沢山あったそうですが、ここのようなサロンスタイルの店は今ではめっきり少なくなりました。小倉さんの時代は近くにテレビ局もあり、著名人でにぎわっていたそうです」(小林さん)

イベントに出演したり、客としてバーの常連になったりして親しくなるうちに、小倉さんから誘われて小林さんも店の経営にかかわるようになった。「誘われた時は仕事をしていたのと、好きなお店だったのでかえって『自分が潰してしまったらどうしよう』と初めは思ったのですが、その後マスターが後継者探しに難航している様を見て、『それなら私が』と腹をくくりました」と話す。

   2012年には運営会社の取締役にも小林さんが就任し、昨年に小倉さんが死去した今は小林さんがホールのかじ取りを一手に担う。

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