知っておきたい、「 サステナビリティ 」用語19:Bコープ、ブルーエコノミー、生分解性

DIGIDAY

COP26が終了し、多くのブランドが新たなサステナビリティの認証をアピールするなか、Glossyではこの分野を理解するためのガイドをまとめた。グリーンウォッシュ(以下で説明する)は、いまだに製品とマーケティングの両方にはびこっている。したがって多くの企業や経営者は、よりクリーンでサステナブルな小売業界への道を形づくる専門用語への理解を深める助けを必要としている。

この用語集は、新しい用語や事例などを定期的に更新していく予定。

B Corp / Bコープ

非営利団体Bラボ(B Lab)が2007年に開始したB Corp認証は、創設以来、4000以上ものブランドや企業が取得している。ブランドのあいだでもっとも知られた認証のひとつで、ガバナンス、コミュニティ、労働者、環境、顧客の5つの分野における影響を測定する。B Corpのウェブサイトによると「BIA(ビジネスインパクト分析)では企業のガバナンス構造と説明責任に関する質問を行う。その質問は、オペレーション(企業の日常の活動全般)とインパクトビジネスモデル(さらなるプラスの影響を生むためにデザインされたビジネスモデルに付加的なポイントを与えるもの)というふたつのカテゴリーに分かれている」。B Corp認証の取得には、すべての分野で200点満点中最低でも80点以上のスコアを獲得しなくてはならず、その検証プロセスには半年から10カ月の時間がかかる。B Corp認証を取得しているファッションブランドに、クロエ(Chloé)、アイリーン・フィッシャー(Eileen Fisher)、パタゴニア(Patagonia)などがある。

Biodegradable / 生分解性

技術的にはあらゆるものが生分解可能であるため、グリーンウォッシュに関連したもっとも一般的な言葉のひとつとなっているのが生分解性である。この言葉は、バクテリアや菌類、微生物によってある物体がどんどん小さく分解されて周囲の環境に再吸収されることを指し、そのプロセスでさらなる温室効果ガスを発生させることがないのが理想的だ。ただし問題は分解にかかる時間がものによって異なる点だ。ポリエステルやナイロンを含むプラスチックなどのアイテムは分解されるまでにもっとも長い時間が必要であり、20年から200年かかるとされている。コットンのようなオーガニックな素材でできたアイテムでさえ、タグや染料のせいで完全には分解されない。

Biodiversity / 生物多様性

ファッションは生物多様性に大きく依存しており、生物の多様性がなければ成立しない素材が数多く存在する。生物多様性は、広義には地球上のあらゆる生命体の多様性と定義づけられている。ファッションは土壌の劣化、自然の生態系の変換、水路の汚染などと関連することが多いため、生物多様性はファッションが持続可能性に取り組む上で重要な側面となっている。2019年にアディダス(Adidas)、バーバリー(Burberry)、シャネル(Chanel)などのブランドが結成した「G7ファッション協定(G7 Fashion Pact)」では、サステナビリティに関する業界の取り組みのなかで生物多様性を重要な要素としている。

Blue economy / ブルーエコノミー

持続可能な成長を支援する世界連合である世界銀行(The World Bank)では、ブルーエコノミーを「海洋生態系の健全性を保ちつつ、経済成長、生活の向上、雇用のために海洋資源をサステナブルに利用すること」と定義している。気候変動対策は地上に着目したものが多いが、海洋生態系が直面している課題は、マイクロプラスチックのようなファッションを中心とした問題である。最近の進展にブルーファッションがある。これはブルーエコノミーの新興セクターで、ファッション業界向けにサステナブルなバイオ代替品を開発するために、海洋の原材料や副産物を活用することに注力している。これらの代替品は有機物として分解されるもので、水産業からの廃棄物を使用している。

Corporate social responsibility / 企業の社会的責任(CSR)

企業の社会的責任(CSR)とは、その事業が経済的、社会的、環境的な利益をすべてのステークホルダーにもたらし、環境にはプラスの影響を与えることを意味する。生産規格から、リサイクルPET素材を使用した繊維製品であることを示すラベルといった製品に関する社会的取り組みにいたるまで、幅広い事項が含まれる。これまでCSRスコアが欠けていたファストファッションのブランドがCSRにとくに力を入れている。

Carbon footprint / カーボンフットプリント

カーボンフットプリントとは、製品やサービスの生産、その使用や使用後に発生する温室効果ガスの総排出量のこと。ナイキ(Nike)などのブランドが再生可能エネルギーに移行するなど、炭素排出量の削減がファッション業界の優先事項となっており、カーボンフットプリントの正確な算出は、ブランドが環境に与える影響を理解する上で必要不可欠である。

Carbon positive/neutral/negative / カーボンポジティブ/ニュートラル/ネガティブ

これらの用語はブランドのカーボンフットプリントと、そのカーボンインパクトを削減する手段との間の計算を反映したもの。しかし、カーボンオフセット(ブランドが排出量を補うための購入)の導入で、カーボンポジティブ、カーボンニュートラル、カーボンネガティブの数値化は非常にむずかしくなり、ますますグリーンウォッシュに陥りやすい事態となっている。たとえば植樹のようなブランドの取り組みは、植えた木が完全に成長するまではカーボンROI(費用対効果)をみることはできない。

Circular economy / 循環型経済

循環型経済とは、とくにファッションにおいて理想的には商品が埋立地で終わることがないように機能すること。その代わり、できるだけ長くリサイクルや再利用される。たとえば、フットウェアブランドのハイロス(Hilos)のように、直接回収プログラムを提供しているファッションブランドは循環型経済の中で機能している。ハイロスでは新しい靴に再生産された素材を使用している。

Compostable / コンポスタブル

いかなるものもコンポスタブル(堆肥化可能)と法的に表示されるには、産業用コンポスト施設で180日以内に分解されることが証明されなくてはならない。つまり、そのアイテムのライフサイクルが、生分解性と表示されている商品よりもかなり短期間でなくてはならないということだ。アンダーウェアブランドのケント(Kent)では、自社のアンダーウェアが90日で分解されると示している。

Cradle-to-cradle / ゆりかごからゆりかごまで(完全循環型)

この用語は具体的にはデザインプロセスを指し、衣類やアイテムの寿命を考慮して設計することを意味する。多くの製品は製品の寿命が尽きるまでのサイクルを意識して作られていないため、この用語は循環型ビジネスモデルのキーワードとなっている。ほとんどのブランドは製品ができるだけ長く使えることを望んでいるが、すでに確立している製造を改変することは非常に難しいため、既存のブランドでは真の意味での「ゆりかごからゆりかごまで」を実現できない。しかし独自の製造を有し、製品の寿命を念頭にデザインできるブランドを新たにローンチすることで、その可能性は広がるだろう。

Doughnut economics / ドーナツ経済学

多くのサステナビリティの取り組みが気候への影響に焦点を当てているのに対し、ドーナツ経済学では人権にも目を向け、生活賃金を守るなどのビジネスにおける人的要素にも注力する。これはオックスフォード大学の経済学者ケイト・ラワース博士が10年以上前に提唱したモデルで、成長を意識した経済ではなく、再生と再分配の経済に着目している。

Fairtrade / フェアトレード

1992年に設立されたフェアトレード財団(Fairtrade Foundation)では、商品や原材料の取引に関わる世界中の人々が適正な価格で購入できることに力を入れている。ファッションの場合、綿花の生産を意味することが多く、具体的にはILO(国際労働機関)の中核的労働基準とフェアトレード財団のテキスタイルスタンダードに準拠している。フェアトレード財団では「国際貿易で不利な立場にある綿花農家を支援し、彼らが商品を妥当な価格で販売できることで彼ら自身と家族を養えるようにすること」を意図している。

Greenwashing / グリーンウォッシュ

グリーンウォッシュの定義は、ブランドのサステナビリティへの取り組みに関して消費者に嘘をつくこと。とくに、証拠のない「サステナブル」な衣服の限定コレクションや、研究調査されていない取り組み、先見性のない実施などを通じてグリーンウォッシュが行われている。グリーンウォッシュに対するブランドの責任はさらに確実に高まっているが、ウルトラファッションやファストファッションのブランドの多くはいまだにみずからのコレクションでグリーンウォッシュを行っている。

Life cycle assessment / ライフサイクルアセスメント(LCA)

衣料品の調達から生産、寿命までを含むライフサイクルの気候変動への影響を評価する手法のこと。多くのブランドにとってライフサイクルアセスメントでたびたび問題になるのは素材と生産である。LCAツールは、ソフトウェアを使用して製品のすべてのライフサイクルステージに関与する天然資源、エネルギー使用、有害物質の放出の影響を分析する。

Next-gen materials / 次世代素材

ブランドがリサイクル可能で環境により優しい衣類を生産する新たな手法を見つけようとしているなかで、テキスタイルをリサイクルして分子レベルで分解できるインフィンナ(Infinna)や、マイコワークス(MycoWorks)による菌糸を使ったレイシ(Reishi)といった新素材の人気が高まっている。エルメス(Hermès)のようなラグジュアリーブランドでさえもレザーに代わる次世代素材を研究している。

Micro-shedding / 微小な繊維片

アクティブウエアアやファストファッションなど、ファッション業界の広範囲でナイロンやポリエステルなどのプラスチック系素材に依存している。実際に全繊維の生産量の52%がポリエステルであり、持続可能性という点で最悪の素材のひとつとなっている。素材が分解される際、あるいは洗濯した際にマイクロプラスチックが放出され、それらが環境中に排出されている。

Recyclable / 再生利用可能

従来の廃棄物処理システムでリサイクルできるアイテムが「再生利用可能」とされる。ファッションブランドの場合、生産されたほとんどの衣類は縫い目やファスナーのためにリサイクルができないため、再生利用可能が適用されるアイテムはパッケージであるケースが多い。

Regenerative agriculture / 再生型農業

再生型農業は通常の農法を用いて土壌を豊かにし、世界の典型的な乾燥地域に肥沃な環境を取り戻す手法に注目している。土壌保全に消費者を関与させることに非常に成功しているブランドにクリスティドーン(Christy Dawn)があるが、業界全体ではまだ再生型農業への関与は行われていない。

Zero-waste / ゼロ・ウェイスト

本質的に、サステナビリティ関連でもっとも誤った用語のひとつ。なぜなら、オフセットを加えることなく、自然にゼロ・ウェイストになるシステムを作るのは非常に困難だからだ。繊維くずを出さない編み方といった効率的な技術によって衣類をゼロ・ウェイストで制作するのは可能だが、効果的なシステムのためにはライフサイクルアセスメントに「ゆりかごからゆりかごまで」のアプローチを含める必要があり、ゼロ・ウェイストそのものにはすることはできない。

[原文:Glossy’s glossary to sustainability]

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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