パブリッシャーアライアンス 、オゾンは広告不況にどう対処するのか:「特に大それたことをこの先始める予定はない」

DIGIDAY

激変の渦に飲み込まれている現在の広告市場。その中で、パブリッシャーアライアンス、オゾン(Ozone)だけは泰然自若としている。

コストダウンのために大鉈を振るう必要もなければ、少しでも広告費を得ようと必死でもがいているわけでもない。事実、アライアンスとしてほぼ通常どおりの業務をしている。

それはひとえに、広告収益が前年比61%増と好調だった2022年のおかげだ。そして、2023年も引き続きその勢いに乗っていける、との期待がある。だからこそ、アライアンスの株主勢――ニュースUK(News UK)、リーチPLC(Reach PLC)、ガーディアン・ニュース・アンド・メディア(Guardian News & Media)、テレグラフ・メディア・グループ(Telegraph Media Group)――は2022年末から2023年にかけて、同ベンチャーにさらなる投資を行なった。

そしてこれまでのところ、期待どおりに進んでいるように見える。より多くのパブリッシャーが同アライアンスに参加している。たとえばメールメトロメディア(Mail Metro Media)は先頃、試験的契約を発表した。

これまで積み上げてきたものを重ねる

オゾンの2023年度の一大計画が2022年度のそれと大差ないのは、驚くに値しない。より多くのパブリッシャーを呼び込む。その規模を利用して、より多くの広告主を惹きつける。新たな動画およびショッパブルフォーマットを開発し、その広告費を保持する。その資金の一部を入札管理サービスといった融資サービスや、パブリッシャーが買うテクノロジーに回す。こうしたサービスが増えれば、パブリッシャーから来る仕事がさらに増える。こうして、好循環は続いていく。

「我々がいま現在していない、大それたことをこの先始めることになる、と言うつもりはない」と、オゾンのCEOデイモン・リーヴ氏は話す。「これからも、いまと同じことをしていくだけだ」。

理由は明快だ。これまで積み上げてきたものから遠く離れてしまうのは、長らく賭け金を投じ、いままさに報われようとしているものを放り投げてしまうのと同じだから、にほかならない。その賭けとは、プレミアムパブリッシャーは、価格がオークションを通じてリアルタイムで決定されるオープンマーケットでは、インプレッションを販売しない、との決め打ちだ。いみじくもリーヴ氏が説明するとおり、「プレミアムパブリッシャーがオープンマーケットに属しているとは、我々は考えていない――彼らは間違いなく、プレミアムマーケットという、まったく別の市場に属している」。

この見方はいまや、オゾンが設立された2018年当時ほど急進的には聞こえない。より多くの広告主が同アライアンスに予算を投じていることが、何よりの証拠だ。2022年オゾンに予算を費やした広告主の数は、前年比48%の伸びを見せ、すでに参加していた広告主も、1キャンペーンあたりの出費額を平均で103%増やした。

もっとも、目を引く数字ではあるが、オゾンは同アライアンスから購入した広告主の数を公開していないため、具体的にいくら増えたのかについては、何とも言えない。ただいずれにせよ、オゾンの仕事が依然、完遂から程遠いのは明らかだ。

データの不足が広告投資の触媒に

「プレミアムパブリッシングへの広告投資は、少なくともソーシャルメディアのそれに比べれば、依然としてアンダーウェイトだ」とリーヴ氏は話す。「我々の仕事は、マーケター勢にそうしたオーディエンスに大規模にアクセスできる低摩擦な方法と、そうせざるを得なくなる強力な理由を示すことで、その潮流を変えることだ」。

オーディエンスターゲティングまたは(最終的には)その欠如が、この先も変わらずその触媒となる。

サードパーティCookieが少ないのは、きめ細かなデータがそれだけ少ないということであり、それはつまり、広告主がオープンウェブでトラックおよびリーチできる人々の数が少ないことを意味する。こうした事態が多くなれば、より多くの広告主がファーストパーティデータおよびコンセントで強化された高クオリティな広告インベントリを得られる場所を探し求めることになる。

「多くのメディアバイヤーの場合、クライアントのKPIに達成するために、プレミアムインベントリはある程度までしか買わず、あとは帳尻を合わせようと、安価でロングテールなインベントリを探す、というのが現状だ」とリーヴ氏。「その問題に対処するには、プログラマティックの透明性から成功の定義の書き換えまで、かなりの変化が起きる必要がある」。

そうした変化のなかには、明らかに、すでに起きているものもある。ゆっくりとだが徐々に進んでいる、プログラマティックオープンマーケットプレイスの再評価は、その証のひとつだ。

なぜアライアンスの需要は減らないのか

資金はいま、高クオリティな環境で集約されたオーディエンスを提供できるマーケットプレイスへと移行しつつある。非排他的な集約されたサプライよりも、独自に集約されたデマンドにより多くの価値が発生することは、ほぼ間違いない。だからこそ、オゾンといったアライアンスはこの先も変わらず、広告主にとって魅力的な存在であり続けるだろう。

アライアンスは、最大規模のプログラマティックマーケットプレイスの一部と同じく、いくつものパブリッシャーを相手にするのが煩わしい広告主にとって、一所で欲しいものが手に入るインテグレーションの場となる。それは常に重要な点なのだが、デジタル広告マーケット全体でさまざまな変化が起きているいまは、とりわけそう言える。

「現在は、透明性とコントロールを望むマーケターと、パフォーマンスという、大手プラットフォームが築いたAI主導システムによる牽引が進むものを望むマーケターとの間で、分岐が生じている」と、欧州IABのチーフエコノミスト、ダニエル・ナップ氏は、2月の四半期予想で指摘した。「オープンプログラマティックマーケットでは、拮抗するその両勢力に挟まれて苦しむサイト群の長い列が見られることになるだろう」。

[原文:Why publisher ad alliance Ozone is playing the long-game on ‘underweight’ advertising on premium editorial

Seb Joseph(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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